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» 2017年09月21日 13時30分 公開

「落合陽一と賢者のVR」イベントレポート:「VRで、コミュニケーションは言葉から“現象”に変わる」――落合陽一さん

[PR/ITmedia]
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 8月下旬、都内で「落合陽一と賢者のVR〜『誰にも作れないもの』を作るテクノロジー」と題したイベントが開かれた。基調講演には、メディアアーティストや大学助教授など複数の顔を持つ“現代の魔法使い”こと落合陽一さんが登場。テクノロジートレンドの変遷や、注力している研究領域、VR(仮想現実)をはじめとする最新技術が社会をどう変えるかなどを展望した。

“魔法”の裏にあるテクノロジー

photo 落合陽一さん(筑波大学 学長補佐/図書館情報メディア系助教/デジタルネイチャー研究室主宰、ピクシーダストテクノロジーズCEO、学際情報学博士、メディアアーティストほか)

 落合さんは筑波大学学長補佐や研究者のほか、自ら起業したピクシーダストテクノロジーズのCEO、メディアアーティストなどの顔も持つ。ピクシーダストテクノロジーズでは大手企業とも協業するなど、テクノロジーをベースに幅広い業界で活躍している。

 その研究領域はさまざまだが、主軸になっているのは落合さんが提唱する「デジタルネイチャー」という概念だ。CGなど、これまでデジタル世界にしか存在しなかった物事を現実空間と融合させることで、人間にとって「自然」と感じられる新たな体験価値の創出を目指している。

 「主に研究しているのは、(光や音などの)波動をどう使うか、どのようにデジタルファブリケーション(デジタルデータをもとにものを創出)するか、そして波動と物質の関係を機械学習でどう解くかということ。その3つを基礎として、VR(仮想現実)などの応用分野に活用しています」

 研究成果の一例として挙げたのは「物体を自在に浮かせること」。超伝導体である金属球が、宙を浮きながら一定のコースをたどっていく作品の映像を披露した。

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 これは一見すると簡単な仕組みのようにも思えるが、裏側を支えているのは緻密なデータ処理だ。超伝導の物体をただ浮かせても、重心アルゴリズムを無視するとコントロール不能になってしまう。落合さんの研究室では、機械学習をはじめとするアプローチによって物体の軌道、最適な出力値などを計算し、この“魔法”のようなメディアアートを実現しているという。

 他にも、プラズマを用いて空中に3次元像を結ぶ技術や、空中に“触感”を発生させる技術など、さまざまな研究成果を披露。空間のある一点だけで聞こえる音を出す超指向性スピーカーのデモンストレーションを行うと、来場者からは驚きの視線が注がれた。

photo 超指向性スピーカーを会場に向ける落合さん

 「思った通りに振る舞える物性を持つものを、どうやって作ればいいか考えています。例えば、何もない空中に触感を表現するとき、どんな感触や解像度がいいのか、超音波でやればいいのかなど。やっていることは雑多ですが、根幹はシンプルです。音や光などの波動や物質、何かを定式化して、シミュレーションを置く。それをインタフェース(人との接点)に落とし込む。すると、それが人々にとっての体験価値になるんです」(落合さん)

VRで人はイルカのようになる?

 そんな落合さんがいま注目している技術領域の1つがVRだ。

 2016年はVR元年と言われ、Oculus RiftやHTC Vive PlayStation VRなどさまざまなVR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)が登場した。だが、これらのデバイスはプラットフォームがそれぞれ異なるという、開発者やユーザーにとってはハードルになりかねない点もあった。

 そんな中で今年、Microsoftが「Windows Mixed Reality」(Windows MR)と呼ぶ複合現実感プラットフォームを本格展開。同社のHoloLensをはじめ、さまざまなメーカーから安価なWindows MR対応HMDが登場しつつある。「共通のOSで安価なHMDが使えるようになった。これらはゲームチェンジャーになり得る」と落合さんは言う。

 では実際に、VRは人々や世の中をどのように変えるのか――その説明のために映し出されたのは、2頭のイルカの画像だ。

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 「彼らは頭の中にスマートフォンを持って生まれたような生き物なんです」と落合さん。イルカは、超音波によって周囲の状況を3次元的に把握し、それを超音波によって仲間に伝えることができる。これは、人々がスマートフォンで情報を送り合うことに似ているという。

 人々はこれまで、自分の周囲の状況を伝えるために言語や絵画、写真を用いてコミュニケーションしてきた。だが将来は、周囲の状況を3Dスキャンして、他人にデータとして送ったものをHMDで再生することで、複数の人々が同じ体験を共有できるかもしれない。VRが発展、普及した未来には、そんなこともあり得るのではないかと落合さんは展望する。

 「3次元空間について話すとき『空間の幅は何メートルで、天井の材質はこうで』と言語で説明していました。しかし今後、スマートグラスやHMDが発達し、誰もが3次元スキャンを行えるようになれば、その情報を互いに送り合って伝えられるようになります。つまり現象で語り合うことが可能になるのです」(落合さん)

エンジニアは「言語」でなく「現象」で物事を捉えるべき

 テクノロジーの進化により、人々のコミュニケーションの在り方は大きく変わってきた。これからは「現象論の世界をどう捉えるかが重要なテーマになっていく」と落合さんは話す。

 「最近のコミュニケーションって、ほとんどLINEやFacebookのスタンプで済んでしまうことも多いじゃないですか。そのやり取りは言語と現象の中間くらい。記号ではあるけど文字は持っていないものを送り合っている。この次は、記号ですらない生の情報を送り合うのが普通になっていくと思います」

 VRなどのテクノロジーが普及への転換点を迎えているいま、エンジニアに求められる考え方はどのようなものか。落合さんはここでも、「言語から現象へ」というテクノロジートレンドに注目し、実際に手を動かしてみることを推奨する。

 「先日、中学生にUX(ユーザーエクスペリエンス)を教えるワークショップで、腕時計を着用している人の行動を認識するアプリを作りました。加速度センサーを使って行動認識をするということは、5年前には修士論文レベルだったものですが、いまは中学生が3日で実現できるんです」

 「ハードウェアと比べて、ソフトウェアの領域は追い続けないとすぐに知識が劣化します。しかし、もし置いていかれてもすぐ追いつけるのがソフトウェアのいいところ。これからは言葉ではなく現象で考えてみる。触ってみる。動かしてみる。中学生でも3日で簡単にプログラミングできるような環境はすでにあります。皆さんもネット上の知見を活用し、自分でプログラムを書いてみてはいかがでしょうか」(落合さん)

魔法の世界を現実に――業界大手メーカーの挑戦

photo 日本HPの九嶋俊一執行役員 パーソナルシステムズ事業本部長 兼 サービス・ソリューション事業本部長

 「落合さんが実践しているようなさまざまな研究を、実際の製品やビジネスに落とし込み、商業化するのがわれわれの役目です」――続いて登場した日本HPの九嶋俊一執行役員はこう話す。

 「テクノロジーで人々の生活を豊かにするために、HPでは年に一回、社会や経済、テクノロジーを分析し、トレンドを見定めて年間3000億円の研究投資を行っている」と九嶋さん。現在は「急速な都市化」「人口動態の変化」「グローバル化の加速」「イノベーション」をメガトレンドとして研究開発を進めているという。

 例えば、今後はアジア諸国の人口が都市部に集中することが見込まれている。人が集まる場からはAirbnb、Uberのような新ビジネス、価値が生まれる。一方で、日本のような超高齢化社会や、先進国に登場している「ミレニアル世代」など、人そのものの変化、流動にどう対応し、人々を社会に融合していけるか。こうしたメガトレンドに対し、HPではテクノロジーへの投資を通じて解決を目指しているという。

photo (出典:日本HP)
photo (出典:日本HP)
photo HP Z VR Backpackを身に着ける九嶋さん

 特に、日本HPが注力しているのが“没入型コンピューティング”と呼ぶ領域だ。HMDなどを用い、従来の2Dディスプレイでは実現できなかったような、デジタルと現実が融合された新しいユーザーインタフェースの開発に力を入れているという。

 具体的には、Windows MRに対応するHMDを投入するのはもちろんのこと、VR/MRを実現するためのコンピューティング環境にも注力している。例えば、MR HMDを装着したまま移動できるバックパックタイプのウェアラブルワークステーション「HP Z VR Backpack」もその1つだ。

 HP Z VR Backpackは、ビジネスユースに対応するために高性能GPUのNVIDIA Quadro P5200を搭載するほか、ドッキングステーションの利用でデスクトップPCとしても使えるようにするなど、ビジネス向けに使用できる工夫を凝らしている。海外ではすでに発表済みで、国内市場にも今後投入予定だという。

photo HP Z VR Backpackの利用イメージ

 このほか会場では、投影型DLPプロジェクターによってデュアルタッチスクリーンを実現し、2D/3Dスキャナーを組み合わせた“イマーシブコンピュータ”こと「Sprout Pro by HP G2」も披露された。

photo Sprout Pro by HP G2
photo HPが予想する新しいコンピューティングの世界(出典:日本HP)

 「HPはワークステーションで世界トップシェアを誇っています。さらに最新技術を生かし、イマーシブコンピュータをはじめとする新しいユーザーインタフェースを持った製品を展開していきます」と九嶋さんは話す。

VRでショッピングはこう変わる

 イベント後半のパネルディスカッションでは、落合さん、九嶋さんの2人が来場者から寄せられた質問に答えた。「アイデアの膨らませ方は?」「常識を疑うにはどうすればいいのか?」などの質問に対し、2人は「現在起きていることを的確に捉えること」「この言葉、ルールの意味を誰が考えたんだろうと考えてみること」などと答えていた。

 多くのQ&Aの中で、特に印象的だったのが「小売業でのVR、AR、MRの応用事例を教えてほしい」という質問に対する答えだ。

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 九嶋さんは「最近は店舗が提供するのは商品ではなく、体験に変わってきています。店舗内、商品の情報がHMDに表示されれば、お客さまに気持ちのいいショッピング体験を提供できます。また住宅など、これまでは模型でイメージするしかなかったものを、HMDで疑似的に体験してもらうこともできます」と話す。

 一方、落合さんは「HMDを受け入れられない女性はいます。なぜなら髪型が崩れるから」と前置きした上で、こう続ける。

 「でも、真後ろから自分を見たことがある人って少ないんです。例えば、服を試着して真横から自分が歩いている姿を見れば、自分に似合っているかどうかが把握しやすいですよね」。VR技術を応用した“スマートミラー”などが登場すれば、これまでのショッピングでは得られなかった新しい価値を提供できるのではないかと、落合さんは展望する。


 最後に、2人からエンジニアに向けてメッセージが送られた。

 「これからは投資感覚が重要になっていきます。ブロックチェーンの登場により、あらゆる物事に市場原理が入っていきます。いまは貨幣ですが、今後はソフトウェアも『投資対象』として考えるエンドユーザーが増えてくるでしょう。売り切り型、サブスクリプション型ではないソフトウェアのモデルが生まれていく中で、何に投資をしていくのかを常に考えていってほしいです」(落合さん)

 「HPはハードウェアの会社です。落合さんが語ったようにハードウェアは進化が進んでいますが、『応用したら何ができるのか』を常に考えていかないといけません。HPは、落合さんやエンジニアの皆さんが考える“一歩先”を実現できる技術、製品、プラットフォームを持っていると自負しています。みなさんのアイデアや知恵をお借りして、よりよい暮らし、社会を実現していきたいと考えています」(久嶋さん)


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