ARPU減少止まらぬ時代は「コンテンツで稼ぐ」 KDDI中間、過去最高益
auの好調でKDDIの中間決算は過去最高益を更新したが、料金値下げでARPUが減り続ける、という悩みをかかえる。成長を続けるためには「コンテンツなど通信料金以外で稼ぐ必要がある」と小野寺社長は言う。
KDDIは10月19日、中間期としては売り上げ、利益とも過去最高となる2007年4〜9月期連結決算を発表した。au携帯ユーザーが順調に増えて増収増益に貢献。だがARPU(加入者1人当たりの売上高)は減少が続き、ユーザー増が頭打ちになった際の成長戦略が課題だ。小野寺正社長は「コンテンツ提供や課金代行など、通信料以外の部分で収益を増やす必要があるだろう」と述べた。
売上高は前年同期比8.1%増の1兆7342億円、営業利益は同8.8%増の2496億円、経常利益は同11.1%増の2524億円、純利益は同7.1%増の1457億円。
好調な携帯電話事業がけん引し、固定通信事業の損失をカバーした。携帯事業の売上高は7.6%増の1兆3811億円、営業利益は12.6%増の2733億円。固定通信は減収減益で、売上高は2.2%減の3545億円。営業赤字幅は127億円広がり、294億円の損失となった。
ユーザー増もARPU減
4〜9月の携帯加入者の純増数は103万(auが143万増、ツーカーが40万減)。ただ通話料の値下げなどで、ARPU低減が続いている。2006年7〜9月期は6700円だったが、07年同期には300円減って6400円に。07年3月期通期で見ると、さらに150円減って6150円程度になる見込みだ。
「CDMA 1X」よりもARPUが高い「CDMA 1X WIN」の契約者数は1706万人に増えたものの、WINユーザーのARPUも大幅に減ってきている。06年7〜9月期は8850円だったのが、07年同期は8000円。1年で1割以上減っている。
WINのARPU減少について小野寺社長は「WINの普及が進むにつれ、ライトユーザーも入ってきて希薄化が起きている」と説明する。当初はパケット通信を頻繁に使うヘビーユーザーがメインだったためARPUも高かったが、WINの一般化や料金値下げの影響でARPUが減少した、というわけだ。
音声通話時間も減っていく傾向で、パケット通信料も定額制の利用が進んでそれほど伸びを期待できないため、ARPUの減少は今後も続く見込みという。
ARPUが伸びないなら次は、何で稼いでいくべきか――小野寺社長は「コンテンツ提供や、有料コンテンツの回収代行など、通信料金以外で収入を増やす必要があるだろう」と見る。
auは「着うた」など有料コンテンツをヒットさせてきたほか、PCと連動したポータルサイト「au one」などを通じてコンテンツ利用を活性化してきている。このほど発表した秋冬モデル3機種には、待ち受け画面から公式コンテンツにアクセスできる仕組みを装備するなど、コンテンツ利用の活性化に一層力を入れている。
コンテンツからの収入を増やしたい一方で、データ量の大きなコンテンツはトラフィックを圧迫するというジレンマもある。「1人の客が無線を占有すると、他ユーザーに迷惑をかけることになる。全体のバランスを考えなくてはならない」と小野寺社長は話し、動画のような大容量コンテンツは「MediaFLOなど放送形式の方が適しているだろう」という見解。「インフラの進化とともにサービスを出していきたい」
ソフトバンクに純増ナンバーワンを抜かれたが……
4月までナンバーワンを保ってきた純増数は、ソフトバンクモバイルに抜かれた。「MNP(番号ポータビリティ)ではソフトバンクからauへの流入の方が多く、魅力は上。ソフトバンクはわれわれがこれまで見過ごしてきた新しいマーケットを狙っているのかも知れない」としつつも、「ナンバーワンは取りたい」というのが本音。「純増が意味のある数なのかをよく分析したほうがいいのでは。数は増えるがARPUが下がるというなら成り立たない」
「これ以上分かりやすいプランはない」――シンプルコース
同社が10日に発表した新料金体系については、端末利用料を低く抑える代わりに2年間は原則として解約できない「フルサポートコース」にユーザーを囲い込むのが目的で、端末価格を高めに設定する代わりに月額利用料を低く抑える「シンプルコース」のメリットが見えない――という批判も起きている。
指摘を受けて小野寺社長は「多様化したニーズに応えるために作った。シンプルコースはいろいろな言い方をされているが、携帯電話会社が最初のころに使っていたプランと同じ。これ以上分かりやすいシンプルなプランはないじゃないか」と語気を強める。「過渡的なプランなのか、決定版なのか」という質問に対しては「決定版だ」と断言した。
ただ今後、端末と通信料金の分離が進む中で「従来のようにハイエンド機もシンプル機も同一価格ということはなくなり、機能によって端末の価格差がこれまでよりも大きく付いてくるだろう」と見ている。「魅力のある端末やサービスを出せないと、買い換え率が下がり、販売台数は将来減らざるを得ないかもしれない。それを活性化するのがわれわれや端末メーカーの仕事だろう」
WiMAXへの投資額は「ノーコメント」
WiMAX事業免許の取得に向け、同社は米Intelや京セラと協業。NTTドコモ−アッカ・ネットワークス連合、ソフトバンク−イー・アクセス連合との三つ巴の戦いになっている。(関連記事参照)。
他2陣営に対しては「いろいろなお考えがあるのだろうが、当社としては、(事業運営主体となる新会社の)持ち株比率1%以下の株主を数多く集めても仕方がないと思っている」とコメント。
他2陣営は巨額の設備投資を公表しているが、KDDI連合のみ設備投資額は非公表だ。「総務省の求める基準は十分に満たしている。投資額を出すと『他陣営と差がどこにあるのか』という話になるが、われわれは十分なバックグラウンドを持った上での投資額。数字だけ申し上げるわけにはいかない」
接続料金値下げ要求は「努力が足りないのでは」
一部のMVNO事業者が「接続料金が高すぎる」と主張していることについては「携帯の接続料金は3社でし烈な競争をしており、NTTが独占している固定回線とは異なる。競争を生き抜く中で料金を決めて何が問題なのか。接続料金のせいでエンドユーザー向け料金が下げられないというのなら、ご自分の努力が足りないのでは」と痛烈に批判した。
FTTHは「正直、想定よりも低い」
FTTHサービス「ひかりone」の契約者数は66万8000となったが、伸び率は「正直、想定よりも低い」という。「光oneに入らないと受けられない独自サービスの魅力が不十分なのだろう」。auブランドもいかしながら、拡販努力を続けていく考えだ。
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