ニコ動(ββ)は「ネットの進化の逆を行く」 黒字化には「あと月間1億円」
ニコ動新版「ββ」は、リアルタイムコミュニケーション機能を強化。個人を軸に発展してきたネットの進化の逆を行き、ユーザー同士が一体感を持てるサイトに進化させる。
12月12日にスタートするニコニコ動画の新版「ββ」(ダブルベータ)は、ユーザー同士が一体感を持ってコミュニケーションできる機能を強化する。「個人での利用に特化する形で発展してきたネットの進化の逆を行き、多くの人が共通体験を持つ“社会”に進化させていく」のが狙いという(→新機能に関する詳細記事)。
企業からのコンテンツ提供も強化。テレビ局などが制作した“プロの動画”が集まる仕組みも整え、これまでの「ネットに強い若年層」ユーザーだけでなく、さらに上の世代など幅広いユーザー層の獲得につなげる。
何もないときは「広場」に集まれ
ββの新機能の目玉は「ニコニコ広場」と「ユーザー生放送」だ。広場とは、数十万人が集まることができるというチャット空間で、いつでもアクセスしてユーザー同士でコミュニケーションできる。時報が流れると自動的に広場に移動。時報について語り合える。
ニワンゴ取締役の西村博之(ひろゆき)氏は、12月4日にユーザーを招いて開いた新機能の発表会「ニコニコ大会議2008冬」で、広場を「何もない時の居場所」と紹介。「ニコ動は、ランキングなどを見ないと面白い動画を探せなかったが、広場に来れば『この動画面白いよ』と話し合える」など情報交換にも使えると話す。
ドワンゴ顧問の夏野剛氏は「広場は、ネット上に“群衆”を再現する『クラウドメッセージング(Crowd Messaging)』だ」と解説する。「今までのネットサービスは、個人にパーソナライズする方向に進化しており、共通体験が減っていた。ニコ動は逆を行く。ネットで共通体験し、1つの社会にしていきたい」
会場のユーザーからは「(そういう場は)2ちゃんねるにあるよー」という声も飛んだが、ひろゆき氏は「そうとも言うけど、2ちゃんは平均年齢が高いし」ととりなした。
「ユーザー生放送」で動画紹介番組も
ユーザー生放送はその名の通り、ニコニコ生放送のユーザー版。WebカメラをつないだPCがあれば、ユーザーが簡単に動画をライブ配信できる。広場と同様、ネット上でリアルタイムに交流し、同じ場を共有できる仕組みだ。
ニコ動内の特定の動画を指定して生放送するいったことも可能で、面白い動画を紹介する生放送などを制作できる。
広告にもユーザーが参加。投稿した動画や気に入った動画に対し、「ニコニコポイント」(1口100ポイント)を利用して宣伝・応援できる機能「ニコニ広告」を来年1月に追加する。
ニコニコミュニティの機能も強化し、「みんなが集まる場」としてのニコ動を進化させていく。
ニコニコチャンネルと新トップで「一般化」へ
「公式動画」は12月5日に「ニコニコチャンネル」にリニューアル。テレビ局やアニメ制作会社、ゲーム会社など121社のコンテンツホルダーがそれぞれのチャンネルから動画を配信し、企業が作った質の高い動画を楽しめる環境を整える。
ニコ動トップページではニコニコチャンネルのコンテンツを多数紹介。ニコ動を初めて訪れたユーザーでも見たい動画を見つけやすくし、ユーザーの“一般化”につなげる(ニコ動にテレビ局など121社が「チャンネル」 「iモードのようなトップページに」と夏野氏)。
「黒字化に月間1億円足りない」
ニコ動の会員数は12月3日時点で1029万人。うちプレミアム会員数は22万7000人と11月13日時点より1万2000人増えた。ニコニコ生放送への優先参加などのプレミアム会員への優遇策の成果が現れているようだ。
黒字化担当を自認する夏野氏は、「ニコ動はこれから多難の時代に入る」と“予言”する。ニコ動はスタートから2年近く経ったが赤字運営。ドワンゴの2008年9月期のポータル事業(ほぼニコ動)は15億1500万円の営業赤字を計上している(ニコニコ動画、09年6月以降に単月黒字化へ 「収益化と一般化」課題に)。
広告枠の拡充などで収益は改善しているものの「黒字化にはまだあと月間1億円足りない」とドワンゴの小林宏社長は打ち明ける。「9月時点では月間収入が2億円ぐらい、支出が3億1500万円ぐらい。10、11月でだいぶ伸びたが……」と話す小林社長に、会場のユーザーから「がんばれ」と声援が飛んだ。
予算がかかっていそうな「ニコニコ大会議(冬)」。「前回の大会議は5000万円使った。そしてまた今晩、使ってしまった……」(小林社長)。夏野氏によると大会議の費用が「経営会議で大問題になっている」という。次回の大会議の予定はまだ決まっていないが「予算が付かないからではない。何をするか決まっていないだけ」(夏野氏)
今回、収益向上に直接つながる目立った施策の発表はなったが、プレミアムユーザー向けに「マイリスト」数を増やしたり、投稿時のファイルサイズ・ビットレートを拡充するといったの新たな優遇策を発表。「プレミアムユーザーはもっと増やしたい」と小林社長は言う。
夏野氏は「これまでやるべきことをやってこなかった。広告枠を拡大しただけで広告収入が増えた」と振り返り、やるべきことを行えば黒字化に近づくと話す。「来年中に単月黒字化を実行し、拡大路線に入る」(小林社長)
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