130人の死者を出した昨年11月のパリ同時多発テロ事件において、犯人グループが暗号化通信を使っていたために、テロを未然に防げなかったのかもしれない――。米NSA(国家安全保障局)長官はそう語った。
米Yahoo! Newsが掲載したAFP通信のインタビューで、NSAのマイケル・ロジャーズ長官は、「暗号化技術がなければ、パリ同時多発テロ事件は起こらなかっただろう」と述べた。テロリストが暗号化技術を使って連絡を取ると、NSAは事前に情報をキャッチできず、フランス当局に通報することもできないために、事件を未然に防げなかった、という見解だ。
しかし他のメディア、例えばArs Technicaの記事によれば、フランス当局による捜査の結果、今回のテロリストたちが暗号化通信を使っていた証拠はないという。彼らは普通のスマートフォンアプリとSMSを使っていた(11月に英Telegraphも報じている)。これは、ロジャーズ長官の話とは矛盾する。
本当に、暗号化技術がテロ事件を引き起こしたと言えるのだろうか。FBI(米連邦捜査局)は現在、銃乱射事件の容疑者が使っていたiPhoneのバックドアを要求してAppleと争っており、NSA長官の話はこうした事情に関連するのではないか、という見方もできる。
関連記事
- Apple対FBIのiPhoneバックドア攻防は続く──AppleがQ&Aを公開
FBIは「サンバーナーディーノ事件に関する訴訟は犠牲者と正義のためのもの」という声明を発表し、Appleは「このケースは1台のiPhoneあるいは1回の捜査で終わるものではない」として理解を求めるQ&Aページを公開した。 - Twitter、ISISなどのテロ関連アカウントを12万5000件以上凍結
サービス上でのテロ助長行為と苦闘するTwitterが、ISIS(イスラム国)関連を含む累計12万5000件以上のテロ関連Twitterアカウントを凍結したと発表した。 - パリ同時テロ実行犯の連絡ツールは暗号化されていない素のSMS──英Telegraph報道
パリ同時テロの1つが発生したバタクラン劇場近くのゴミ箱から発見された実行犯のものとみられる携帯端末から、犯人同士が暗号化されていないSMSで連絡を取り合っていたことが明らかになった。 - ハッカー集団「Anonymous」、ISISに宣戦布告 パリのテロ攻撃を非難
13日のパリの同時多発テロを受け、Anonymousが声明を発表。「Operation Paris」と題し、ISISを攻撃すると宣言した。 - 米CIA長官、テロリスト阻止には情報収集のための技術的および法的権限が必要と主張
パリ同時テロ犯は何らかの暗号化された通信ツールを使っていたと報じられる中、米CIA長官のジョン・ブレナン氏が、エドワード・スノーデン氏による米政府の極秘情報収集活動暴露により近年テロリストの割り出しが難しくなっていると語った。 - Samsung「Galaxy S6 edge」、榴散弾を食い止める──パリのテロ攻撃で
パリで11月13日に多発したテロ攻撃で榴散弾を受けた男性が、Samsung Electronicsのスマートフォン「Galaxy S6 edge」を耳に当てていたおかげで頭を直撃されずに命拾いした。榴散弾を受けた端末のGorilla Glass 4にはヒビが入っている。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.