「日本を人工知能研究の先進国に」――東大に研究者育成講座 ドワンゴ、トヨタなどが9億円寄付
東京大学が人工知能領域の研究者を育成する寄付講座を設置。ドワンゴ、トヨタなどから9億円の寄付を受け、産学連携で取り組む。
東京大学は6月1日、人工知能関連領域の研究者を育成する「先端人工知能学教育寄付講座」をドワンゴ、トヨタ自動車など8社による寄付講座として設置した。ドワンゴの川上量生会長は「日本が人工知能の分野で先進国になることを期待したい」と取り組みの意図を話す。
ドワンゴ、トヨタ自動車、オムロン、パナソニック、野村総合研究所、ディー・エヌ・エー(DeNA)、みずほフィナンシャルグループ、三菱重工業の8社が計9億円を支援し、2021年5月までの5年計画で講座を設置する。寄付金は優秀な研究員や教員の雇用、人工知能研究に必要な機材の調達など、研究・教育の環境整備に使う予定だ。
講座の目的として、ディープラーニングを含む先端人工知能技術に関する体系的な教育プログラムの構築と人材育成を掲げる。機械学習などを活用した手法の確立・応用のほか、体外的な連携、基礎研究も実施する。
主に修士・博士過程の学生が対象。すでに4月から約50人の大学院生に関連講座を開講しており、今後順次カリキュラムを拡大していく。最新の技術動向や必要な人材育成に関する議論も、大学と産業界を連携して行っていくという。
教員には発足時点で、中島秀之特任教授、原田達也特任教授、中山英樹特任講師を迎える。若手研究者を中心にさらに拡充する計画という。
人工知能研究“先進国”になるために
ドワンゴの川上会長によると、今から2〜3年ほど前、現在の人工知能ブームが起こる前に、同大の松尾豊特任准教授から「日本はディープラーニングに関する研究が遅れている」と相談を受けたのがきっかけだという。
「まず、研究者の絶対数が諸外国に比べて足りないことが大きな危機意識。最先端の研究に触れられるチャンスも少ない上に、海外の環境の方が恵まれているとなると、せっかくの優秀な人材も流出してしまう」(川上会長)
川上会長からトヨタ自動車の内山田竹志会長につながり、オールジャパンでバックアップする体制を作るべきだと各社に声をかけていき、8社が集ったという。
「人工知能はこれからの社会、ビジネスを考える上で欠かせない基礎技術だが、日本にはそれを支える人材が非常に限られており、優秀な人材の育成が社会全体のために重要な急務。今回の寄付講座から多くの人材を輩出し、日本が人工知能の分野で先進国になることを期待したい。講座自体は5年を予定しているが、長期にわたる研究課題であり、さまざまな形で取り組んでいければ」(川上会長)
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