ブロックチェーンは仮想通貨以外に広がるか 「有効性」問われる2018年
IDC Japanが2018年の国内IT市場の主要10項目を発表。そのうち仮想通貨の基幹技術として注目を集めるブロックチェーンは、データ保護への有効性が試されるという。
「2018年はブロックチェーンが仮想通貨以外の領域に広がるかが問われる」――IDC Japanは12月14日、国内IT市場のトレンドなど10項目を発表した。その中で、同社の中村智明リサーチプレジデントは、ブロックチェーンの可能性に言及。EUが個人情報の取り扱いを厳格化し、日本にも影響が及ぶ可能性がある中、ブロックチェーンのデータ保護への有効性が試されるという。
ブロックチェーンは、仮想通貨の取引記録などをP2P(Peer to Peer)方式の分散データベースで管理し、データの不正改ざんなどを防ぐ技術だ。ブロックチェーンを活用した独自の仮想通貨が相次いで登場しているが、そうした分野以外でも実用化が進んでいる。例えば、富士通は三大メガバンクと共同でブロックチェーンを活用した個人間送金サービスを開発。NTTデータはブロックチェーンによる貿易事務効率化を目指すなどの動きもある。
中村さんは、こうした仮想通貨以外へのブロックチェーンの活用が18年はより活発化すると予想する。その背景にあるのが、2018年5月に施行が予定される欧州連合(EU)の「一般データ保護規則」(GDPR)だ。
GDPRは、個人情報の取り扱いやプライバシー保護を厳格化するものだ。個人情報漏えい時に72時間以内の報告義務を課す、法令違反時には200万ユーロ、もしくは前会計年度の年間取引高の4%のうち高額な方を罰金として科す――などを定める。EU圏外でもEU住民の個人情報を含むデータを利用している場合は適用対象になる。GDPRに似た取り組みは、シンガポールなども検討している。
しかしこれらに対応している企業は少なく、IDCは「対策を怠って賠償金を支払うことになる企業が日本でも出てくる」と考えているという。
中村さんは、対策案の1つとしてブロックチェーンの活用があるという。「GDPRでは、個人情報をどう管理するかが問題になるが、ブロックチェーンはそれらを全て記録し、トラッキングできる。具体的なサービスには至っていないが、実現する見込みはあると考えている」
ブロックチェーンの特性である「匿名性」がハードルになる恐れもあるが、「身元の確認と開示、情報公開などに適法性のある新しいブロックチェーンが出てくる可能性があると見ている」という。
「2018年は、データ保護に対するブロックチェーンの有効性が試されるようになる。仮想通貨以外の領域に広がるかどうか、試金石になるだろう」(中村さん)
IDC Japanが同日、発表した2018年の国内IT市場の主要10項目は以下の通り。
(1)企業のデジタルネイティブへの転換とそれによる新ビジネスの創出
(2)デジタルトランスフォーメーション(DX)の支援能力がITサプライヤーの選択基準に
(3)働き方改革に向けたICT(情報通信技術)市場の成長
(4)クラウドが第2世代(クラウド2.0)に進化し、IT変革が加速
(5)IoT(Internet of Things)の活用とデータ流通エコシステムを活用した事業拡大
(6)コグニティブコンピューティングやAIシステムが普及と市場拡大、IoTデバイスなどへのAI活用(パーベイシブAI)
(7)データ主権を巡るナショナリズムとグローバリズム
(8)エンタープライズ基盤の多様化
(9)AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、音声インタフェースの業務活用(HDインタフェース)
(10)組織変革コンサルティングのニーズ拡大
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