同じ色のハズが設定1つで大違い――液晶ディスプレイの「色温度」を究めるITmedia流液晶ディスプレイ講座II 第5回(2/2 ページ)

» 2009年03月30日 10時00分 公開
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色温度のより高精度な調整には専用ツールが必須

 前のページでは、用途に応じて正しい色温度を設定するための基礎知識を解説してきた。しかし、デジタル写真のフォトレタッチや印刷、動画編集の色調整といったシーンなど、「発色」が作品の完成度を大きく左右するプロやハイアマチュアの世界では、液晶ディスプレイの色温度をより正確にマネジメントすることが大切になる。そうしないと、フォトレタッチの結果と印刷の発色が違ったり、最終出力した映像を別のPCで再生したら色がおかしくなったりと、作品の仕上がりが劣化し、作業の効率も大幅に落ちてしまう。

 上記のような用途に本格的に取り組むなら、ハードウェアキャリブレーションが行えるカラーマネジメント対応の液晶ディスプレイを導入すべきだ。ハードウェアキャリブレーションとは、画面の発色を計測する測色センサーを使い、液晶ディスプレイ内部のLUT(ルックアップテーブル)を直接コントロールする仕組みをいう。これにより、液晶ディスプレイの個体差や経年変化による色温度のズレを補正し、正確に発色できるようになるため、色を扱う用途には重要な機能といえる。

 ここでは、高精度なカラーマネジメントが行えることに定評があるナナオの液晶ディスプレイを例に挙げて、色温度をより高度に使いこなす知識や専用ツールを簡単に説明しよう。ハードウェアキャリブレーションや色域、ルックアップテーブルについての詳細は、以下の記事も併せて参照してほしい。


ColorEdgeシリーズでは、ColorNavigatorによる高度な色管理が行える

 ナナオは、カラーマネジメント対応の液晶ディスプレイとして「ColorEdge」シリーズを展開している。ColorEdgeは全モデルがハードウェアキャリブレーションに対応し、画面の色温度や色域といった総合的な発色を詳細に管理できるのが特徴だ。

 ColorEdgeには高度なカラーマネジメントを行うソフトウェア「ColorNavigator」が付属している。ColorNavigatorの機能は多彩だが、まず画面の発色と印刷の色を合わせるカラーマッチング目的では、印刷用紙の白色と液晶ディスプレイの色温度を合わせられる機能を持つ。印刷用紙の白色点を測色センサー(別売)で計測し、液晶ディスプレイをハードウェアキャリブレーションするときの白色点として設定できるのだ。これにより、画面の「白」と用紙の「白」が高い精度で一致し、画面の発色と印刷した用紙の発色をぐんと近づけられる。

 ColorNavigatorには、任意の色域をエミュレート(模倣)する高度な機能もある。広色域パネルを生かし、Adobe RGB、sRGB、NTSCといった色域を、画面上で高精度に再現可能なのだ。ColorNavigatorにプリセットされた色域だけでなく、既存のICCプロファイルを読み込んでエミュレートする色域に設定できる。例えば、業務用途の場合、取引先の液晶ディスプレイのICCプロファイルでエミュレートしておくと、手元のColorEdgeで取引先の液晶ディスプレイの発色を再現でき、色校正のワークフローがスムーズになる。

 さらに、液晶ディスプレイの定期的なハードウェアキャリブレーションを促したり、手動による微調整で発色の正確性を維持したりする機能も備えている。画面の輝度や発色は経年変化するため、長期間使っていくうちに当然ながら色温度も変わってしまう。そのため、色の再現性を重視する用途では、プリセットの色温度設定を選択するだけでは不十分なのだ。だいたい1カ月に1回くらいのペースでハードウェアキャリブレーションするのがよいとされている。

EIZO EasyPIXは、一般ユーザー向けにより手軽なカラーマッチング環境を提供する

 ColorNavigatorはColorEdge専用のソフトウェアだが、一般向けの液晶ディスプレイである「FlexScan SX」シリーズと「FlexScan S」シリーズの一部モデルには、より手軽にカラーマッチングが行える専用ツール「EIZO EasyPIX」が用意されている。

 EasyPIXは専用センサー「EX1」と専用ソフトで構成され、簡単な操作で画面と印刷のカラーマッチングが可能だ。こちらは画面に表示される「白」と印刷用紙の「白」を目視で見比べながら、両者の色味が同じになるように、専用ソフトの画面上で色合いと明るさを手動調整する。後は専用センサーで画面の発色を測定するだけで、画面の「白」と用紙の「白」を近づけてくれる。そのほか、EasyPIXは自然光やストロボでの撮影環境に近い色味(色温度5500K)に調整したり、WebコンテンツやPCの一般用途で標準的な色味(色温度6500K)に調整したりする機能も持つ。

 ColorNavigatorとEasyPIXの違いはこちらの記事(EIZOディスプレイ08-09年ガイド:目的別に最適なワイド液晶ディスプレイを選び出そう! 2ページ目)を参照してほしい。

照明や遮光フードで色環境を整える

 ColorNavigator/EasyPIXといった専用ツールによる液晶ディスプレイの調整に加えて、作業場所の照明(環境光)や液晶ディスプレイの遮光フードにもこだわりたい。

 ほとんどの場合、作業場所の照明は蛍光灯だと思うが、色の作業に適した蛍光灯と適さない蛍光灯がある。「適さない蛍光灯」とは、一般的に売られている蛍光灯の大半と思ってよい。通常の蛍光灯は光のスペクトルが大きく偏っているので、液晶ディスプレイの画面と印刷用紙を見比べたとき、発色がズレてしまうのだ。例えば、蛍光灯下では印刷の色が緑っぽく見えることがある。

 色の作業に適した蛍光灯とは「高演色形蛍光灯」や「色評価用蛍光灯」と呼ばれるタイプだ。これらは光のスペクトルが太陽光に近いため、液晶ディスプレイの画面、印刷用紙、人間の認識において、発色のズレが小さい。演色性とは照明下の物がどのような色に見えるのかを定めたもので、その性能は「平均演色評価数(Ra)」で示される。Raの値が100であれば、自然光と同じであり、100に近いほど演色性能は高い。国際照明委員会(CIE)は、美術の鑑賞や色の評価を行う場所ではRaの値が90以上の蛍光灯を推奨している。

 ただし、ほとんどの高演色形蛍光灯は直管タイプなので、自宅の蛍光灯をそのまま交換するのは難しい。この場合、一般的に買い求めやすい蛍光灯の中でも演色性能が比較的高い「3波長発光形」という蛍光灯がおすすめだ。3波長発光形かどうかは、蛍光灯の仕様を見れば分かる。蛍光灯自体の色温度だが、印刷物を評価する場合は昼白色(4600〜5400K)がよいだろう。

ColorEdgeには専用の遮光フードが用意され、内側には反射を抑える黒のフェルトが張られている

 液晶ディスプレイの遮光フードは、液晶ディスプレイの上部と左右側面に装着する庇(ひさし)のことだ。画面に当たって反射する環境光の影響を低減し、画面本来の発色を見て作業できる。

 遮光フードは液晶ディスプレイに対応した専用オプションがベストだが、オプションとして用意されていない場合は自作してもよい。ダンボールやプラ板、スチロールボードなどをディスプレイサイズに合う大きさに切り、液晶ディスプレイの画面側に向ける部分の全面を光が反射しないようにツヤ消し黒の塗料などで塗りつぶす。要するに、液晶ディスプレイの画面に環境光が当たるのを防ぎ、画面からの光が遮光フードの内側で反射して画面に再び当たるのを防げればよいのだ。この際、液晶ディスプレイ放熱用の通風口をふさいでしまうと、内部に熱がこもってしまい故障の原因となるので注意してほしい。


 以上、色温度の基本的な知識と、液晶ディスプレイにおける色温度の調整や活用を述べた。液晶ディスプレイの色味は色温度の設定で大きく変わるため、見た目にも分かりやすい。これまでデフォルトの設定で使っていたなら、OSDメニューを確認して一通りの色温度を設定して発色を見比べてみよう。一般的なPC用途で常用するには「6500K」か「sRGB」モード、あるいは「標準」モードをおすすめするが、映像鑑賞やゲームなどでは、自分の好みに合う色温度を見つけてみるとよいだろう。

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提供:株式会社ナナオ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2009年4月29日