「働き方が変わればデバイスも変わる」――HPが考えるこれからのビジネスPC:ビジネスPC部門のトップが語る
市場が縮小傾向にある個人向けPCとは対照的に、ビジネス向けPCの市場は拡大を続けている。HPのビジネスPC責任者がビジネス用デバイスに起こっているトレンドの変化や、今後の戦略について説明した。
スマートデバイスの普及が、ビジネス用マシンに革新をもたらす
「HPのビジネスPCにとって、日本は重要な市場だ」
こう話すのは米Hewlett-Packard(以下HP)プリンティング&パーソナルシステムズ ビジネスPCソリューションズ シニア・バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのエンリケ・ロレス氏だ。同氏は9月12日、HPの法人向けPCにおける戦略について説明した。
日本の法人PC市場に注目する理由についてロレス氏は「モビリティ(モバイルノート)へのニーズなど、ビジネスPCのイノベーションは日本から起こることが多く、日本はリーダー的な存在と言える。日本のユーザーニーズが世界的に重要なトレンドとなることがある」からだという。
HPのビジネス向けマシンは、デスクトップPCの「ProDesk」「EliteDesk」、ノートPC「ProBook」「EliteBook」、Windowsタブレットの「ElitePad」など多様なラインアップをそろえている。ビジネス向けマシンの開発は、変化しつつある仕事の手法に対応したデバイスを模索することが重要という。
ロレス氏は「昨今、仕事に大きな変革が起きている」と話す。その要因は主にスマートデバイスの普及によるものだが、これはさまざまな要素に影響を及ぼす。
まずは労働力だ。これからは“デジタルネイティブ”と呼ばれる、生まれたときからネット環境やPCがあった世代が社会人となり、さらに世代が進めばスマートデバイスしか触ったことのない世代も社会に出てくる可能性が高い。
人が働く場所も大きく変わった。無線LANやモバイルデータ通信環境が整いつつあることで、会社や自宅以外の場所で働く人が増えてきている。SNSなどの普及により、人々のコミュニケーションやコラボレーションの方法にも変化が起きた。
「働き方が複雑になることで、企業のIT部門が担う仕事も変化する。今まで以上に従業員の満足度という指標が大事になる」とロレス氏は話す。こうした働き方の変化に対応し、HPが投入する製品も変えていく必要がある。これがHPの考えだ。
「このような変化は国や地域によらず、どの場所でも起こっている。社員は消費者でもありプロでもある、という意識を持たなくてはならない。デバイスの用途が作業のほかにSNS、コンテンツの消費へと広がっているが、それと同時に標準的な機器を提供し、管理するIT部門のニーズも満たす必要がある」(ロレス氏)
こうした状況の中、HPのビジネス向けマシンはさらなる成長のために、いくつかの方針転換を行ってきた。「まずは誰のためのデバイスか、というところから発想を変えなければならない」とロレス氏は言う。従来、企業に提供するマシンはIT部門の人々が扱いやすいように開発していたが、今後はエンドユーザーである従業員のニーズを優先する必要があるのだという。
これにより、ビジネス用マシンにもデザインや軽さ、厚さといった個人向け製品に求められてきたスペックが求められるようになった。ロレス氏は「ビジネス用マシンにも軽量なモバイルノートや、タブレットとノートPC両方のスタイルで使えるハイブリッド型のデバイスが求められるようになってきている」と強調した。
「デバイスへのニーズが多様化することで、デバイスの定義も変わる。スマートフォンやタブレット、そしてノートPC、デスクトップPCそれぞれの境界があいまいになっている。今後は画面サイズといった指標で、これらのデバイスを連続的なものとして捉えることになる」(ロレス氏)。
OSのニーズも変化、サービスも含めた“トータルソリューション”が重要
働き方の変化はOSのニーズも変えた。例えばタブレットの場合、まだ製品のラインアップが少ないWindowsよりもAndroidが従業員のニーズに応えられることもある。個人向けでは7型タブレットの「HP Slate7」やデスクトップ型マシンの「HP Slate21」などの製品を投入したが、法人向けマシンについても「AndroidやChromeといったOSを搭載するデバイスを検討しており、2014年度には革新的な製品を次々と投入するつもりだ。デバイスの形もさまざまなものが登場するだろう」とロレス氏はアピールした。
また、新しいデバイスと同時に新たなセキュリティシステムやサービスも提供する必要がある。特にセキュリティにはデバイスの保護(紛失時のトラッキングなど)、データの保護(情報漏えいへの対策)、IDの保護(承認されたユーザーのみが使えるシステム)という3つの要素を満たすことが重要だ。「現在は建物から出るとシステムが停止するといったようなサービスも考えている。ビジネス用マシンにとっては重要な差別化要因になる。2014年度はこうした新しいセキュリティ関連サービスもローンチする予定」(ロレス氏)という。
こうしたサービスやデバイスなども含めてトータルでサポートでき、多様化するニーズに対応して他社と差別化を図る――これがHPの企業向けデバイスにおける基本戦略となる。
「HPは世界トップクラスの企業規模を持ち、各々の部門が持つテクノロジーを組み合わせることが可能だ。今後もビジネス向けマシンにおいて確固たるポジションを築いていく。我々はこうした世界の変化をビジネスチャンスだと思っているし、ビジネスユーザーにとっても大きな成長の機会となるはずだ」(ロレス氏)
世界初のUltrabook型ワークステーションも日本投入予定
説明会では先日米国で発表した、世界初のUltrabook型ワークステーション「HP ZBook 14」についても説明があった。高パフォーマンスを追究するワークステーションと、Ultrabookの薄型軽量ボディは一見相反するものに感じられるが、ワークステーションを使うクリエイターの人々は、デスクだけではなく現場で使いたいというニーズがあるのだという。
持ち運び可能なワークステーションはもともとラインアップに用意しており、「さまざまな価格帯の製品で、パフォーマンスを重視しながらも薄型軽量ボディを求めるユーザーが多かった」という。ロレス氏はこの製品を今後数週間以内に日本でも発表すると述べた。
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