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量販店の「プライベートブランド家電」は買いなのか牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

家電量販店が近年注力している「プライベートブランド家電」は、業界で1つのトレンドとなりつつある。家電量販店にとってこうしたプライベートブランド家電はどのような位置付けなのかを意識しつつ、これらメリットとデメリットをチェックしていこう。

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 近年、家電量販店が注力しているのが「プライベートブランド家電」だ。ノジマの「ELSONIC」やヤマダ電機の「HERB Relax」、さらにビックカメラのamadana監修ブランド「TAG Label」など、さまざまな家電量販店がこうしたプライベートブランド家電を展開している。

 また、家電量販店ではないものの、無印良品も以前から自社で家電製品を展開している他、家電とはやや異なるがAmazonがアクセサリーや消耗品を中心に展開している「Amazonベーシック」も含めれば、業界全体で1つのトレンドになっていると言っても過言ではない。

 しかしこれらは価格的にお得な場合がある一方、デメリットも少なくない。買う場合にどのような点に気を付けるべきなのか、どのような製品は避けるべきなのかを見ていこう。あくまでも全般的な傾向について述べたもので、ブランドおよび製品によっては例外ももちろんあるので、あらかじめご了承いただきたい。

家電量販店のスケールメリットを生かしたラインアップ

 プライベートブランド家電に共通するのは、自社で製造を行っているわけではなく、外部委託であることだ。製品の企画そのものは自社で行っている場合もあるが、仕様のほとんどは委託先の事業者が用意したものをそのままか、あるいはカスタマイズして使用している。自社で開発、設計を行っているケースはほとんどない。

 それ故、委託先の事業者が持っている製品であれば、それをすぐに自社製品のラインアップに追加できるし、別の事業者がさらによい製品を持っていると分かれば、すぐさまそちらに切り替えられる。自社で開発から製造までを手掛けているケースと異なり、金型の償却などを気にするあまり、新しいモデルを投入できないといったことも起こりにくい。

 また、製造しているのは委託先とはいえ、大抵は独占供給の契約を結んでおり、他の家電量販店では購入できないことから、リピーターをつなぎ留めておくためのフックともなり得る。少なくとも、家電量販店の内部で企画を通す段階では、この理由は非常に大きい。

 さらに、家電量販店の全店で展開することで、一定数のボリュームを仕入れられることから、価格を引き下げるのにも有利だ。特に現在の家電量販店は、1つのチェーンが何百もの店舗を展開しているため、1店舗につき10個の製品を割り当てただけで、あっという間に1000個単位のボリュームとなるため、仕入れで有利になりやすい。

 この背景には、ここ十数年あまり、家電量販店の統合が進み、規模が大きくなったことが大きく関係している。販売チャネルの拡大が、プライベートブランド家電の普及を後押ししたというわけだ、またこのことは、売り上げの規模は大きくとも店舗数は少ないヨドバシカメラが、プライベートブランド家電に積極的でない理由でもある。

 一方、ユーザーにとってのメリットは、まず安価なことが挙げられる。多くのプライベートブランド家電は配色が統一されているため、同じブランドでそろえれば見た目がそろって見えるのも利点だろう。また購入元がはっきりしているため、修理や交換を依頼する場合に窓口が明確であることも、ユーザーにとってはプラスだ。

プライベートブランド家電が「修理ではなく新品交換」の理由

 上記のような特徴を持つプライベートブランド家電だが、一方で弱点もある。

 1つは製品の継続性だ。一般的にプライベートブランドは、仕入元が保有しているオリジナルのラインアップが終息になると同時に終息になる。よほどの数量を売っていれば別だが、部材が生産中止になるなどの影響で、突然終息になることは避けられない。自社で製造している場合と違って、これらの予兆がつかめないことは少なくない。

 それ故、リピート購入の可能性が高いアイテムは、その品の販売が突如打ち切られることは覚悟しておいた方がよい。これが電池のように使い切ったら捨てるタイプの品ならば、後継製品を買えば済む話だが、録画メディアのように足りなくなる度に買い足すタイプの品は、同じもので統一したかったのに途中でモデルチェンジしてしまった……ということが起こり得る。

 同じ理由で、サポート面にもプライベートブランド家電の弱点がある。プライベートブランド家電は、自社で製造しているわけではないことから、何らかの不具合が起こった場合に設計や製造工程まで見直しが入ることは珍しい。故障が発生した場合も、原因を特定して修理の上で返却するのではなく、新品との交換で済ませてしまうことが多い。

 不具合の度に新品と取り換えてもらえるのは、ユーザーにとってはよいことに見えるが、実際には対症療法にすぎず、全く同じ不具合が再び起こる可能性も少なくない。家電量販店にとってもブラックボックスであることを証明しているようなものだ。

 また、サポート自体を委託先が請け負っていることも多く(それも含めての契約となっていることが多い)、サポート期間が限定されていることも多いため、生産終了により早期にサポートが終了することもしばしばだ。また取引上のトラブルでその委託先との契約が打ち切られてしまい、サポートが不可となることもある。

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