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企業向けWindows 10のサポート期間がまた延長 大型アップデート配信から2年に鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/2 ページ)

年に2回の大型アップデートを繰り返して機能やセキュリティを強化していくWindows 10。長期運用ではこのサイクルに対応することが求められるが、Microsoftは展開に時間を要する企業向けにサポートポリシーを変更した。

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 MicrosoftはWindows 10の公開後、WindowsとOfficeに関するサポートポリシーを何度か変更してきた。継続的に大型アップデートを提供し続けるWindows 10のサービスモデル「Windows as a Service(WaaS)」に、サポートポリシーも最適化するためだ。

WaaS
継続的なアップデートでOSそのものを定期的に強化していくWindows 10。Microsoftはこれを「Windows as a Service」と表現している

 新しいサポートポリシーにより、特に企業のPC保守・管理体制がWindows 7以前と大きく変わることは、Windows 10への移行で1つのハードルになっているが、2018年2月にMicrosoftはさらなるサポートポリシー変更を行った点に注目したい。

 変更の多くはボリュームライセンス契約の企業が対象だが、対象製品によってはより広範囲のユーザーが影響を受けることになる。

2017年4月にサポートポリシーが大きく変わったWindows 10

 まずは過去のポリシー変更を少し振り返ろう。Windows 10が一般公開されたのは2015年7月だが、Microsoftは2017年4月にアップデートとサポートポリシーを大きく変更した。

 Windows 10(およびOffice 365)の大型アップデート周期を年2回(3月と9月を目標)に固定し、企業ユーザーのアップデート期限を大型アップデートの配信開始から18カ月(従来は12カ月)に設定するという変更だ。

 この変更で、Windows 10(およびOffice 365)の大型アップデート周期を年2回(3月ごろと9月ごろ)に固定するとともに、当初は「Current Branch(CB)」「Current Branch for Business(CBB)」の名称で提供していたWindows 10のWaaSモデルを「Semi-Annual Channel(SAC)」の新名称で統一し、大型アップデートの配信開始からサポート終了までの期間を18カ月(従来は12カ月)に延長している。

 趣旨としては、大型アップデートを春と秋の年2回、6カ月おきに決まったタイミングで提供することで、企業のアップデート計画を立てやすくした。また、サポート期限を18カ月に延ばしたことで、大型アップデートの適用を1回スキップしてもサポートを継続できるため、評価や展開に時間の掛かる大企業などの負担を軽減する効果も狙っている。

SAC
2017年4月から、一般ユーザー向けの「Current Branch(CB)」とビジネスユーザー向けの「Current Branch for Business(CBB)」の名称で呼ばれていた標準的なWindows展開モデルは、「年2回更新」を意味する「Semi-Annual Channel(SAC)」という名称になった
SAC
2種類あるSACのそれぞれの役割
SAC
WaaSの流れ。開発プレビュー版の「Windows 10 Insider Preview」における機能評価や互換性評価が「先行評価」段階としてあり、大型アップデート正式版の配信開始から約4カ月間はSACのTargetedに相当する「一部展開」の段階となる。その後、「全面展開」の段階に至る

さらにEnterprise・Educationのサポート期間を6カ月延長

 そして今回のサポートポリシー変更は、米Microsoftが2018年2月1日(現地時間)に発表した。

 その内容は、MARS、Independence Blue Cross、Accentureといった顧客が既に前述のサイクルでWaaSを実践している一方で、一部の顧客からは「さらに(アップデート適用の)猶予期間を延長してほしい」という要望があり、18カ月に加えてさらに6カ月間、トータルでは24カ月のサポート期間まで延長するというものだ。

 ただし対象となるのはWindows 10でも企業向けの「Enterprise」と文教向けの「Education」の両エディションに限られ、中小企業などのビジネスで広く使われている「Pro」は対象外となる。

 この措置により、本来であれば既にサポート期間の終了している2015年11月10日配信の大型アップデート「November Update(1511)」が2018年4月10日まで再びサポート対象となった。また、2016年8月2日に配信され、2018年4月10日にサポート期限が迫った「Anniversary Update(1607)」も2018年10月9日までサポート期限が延びた。今回の変更は、こうした旧アップデートのユーザーに対する救済策といえる。

 また、2017年4月5日配信の「Creators Update(1703)」は2019年4月9日まで、2017年10月17日配信の「Fall Creators Update(1709)」は2019年10月8日まで、それぞれサポート期限が6カ月延びている。

Servicing extensions for Windows 10
Windows 10の新しいサポートポリシー。「Enterprise」と「Education」のエディションのみ、サポート期間をさらに延長(End of additional servicing for Enterprise, Educationを参照)している

 さらに、新しいサポート終了日の告示とともに「バージョン1607以降のWindows 10 Enterprise・Educationユーザーに対して、追加の有料オプションを提供します。詳細はMicrosoftのアカウントチームまで」という文言が追加された点に注目したい。これは「Anniversary Update以降を利用するユーザーに対し、有料で個別にサポート期間延長に応じる」ということを意味している。

 恐らくMicrosoftのスタンスとして、可能な限りユーザーのOSを最新状態で維持したいものの、実際は24カ月(2年)の猶予期間をもってしても比較的小まめなアップデートの適用は負担が大きいと感じるユーザーが少なからず存在しているということだ。

 今回はEnterpriseとEducationのWindows 10ユーザー全体に向けて半年のサポート期間延長で手を打ったものの、「もしこれ以上を望むのであれば個別相談で」と暗に示している。

サポート期限の延長で恩恵を受けるユーザーの比率は?

 それでは実際、この措置で恩恵を受けるユーザーがどの程度存在するのだろうか。モバイル広告プラットフォームのAdDuplexが2018年2月22日に発表した最新データによれば、Anniversary Update(1607)以前のWindows 10を利用するユーザーはグローバルで7%ほど存在している。

 この集計が企業ユーザーの実態を必ずしも正確に反映しているとは考えていないが、一部の大口顧客でこうした陳情をMicrosoftに行っているというのは容易に想像できる。

AdDuplex
2018年2月時点のWindows 10のバージョン別シェア(出典:AdDuplex)
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