燃料費が減るのに電気料金を値上げ、原子力を増やす前提の北海道電力:電力供給サービス
北海道電力が9月から電気料金を平均10%値上げする申請を国に提出した。12月から原子力発電所を段階的に再稼働させる前提で、燃料費が2008年の料金改定時から減少するにもかかわらず値上げに踏み切る。原子力発電所の安全対策に3年間で約800億円もかかることが大きな要因だ。
果たして北海道民は値上げを納得できるのだろうか。北海道電力が4月24日に申請した電気料金の値上げ率は平均10%で、他の電力会社と比べて小幅に抑えられている(図1、図2)。認可の時点では、さらに値上げ幅は縮小するはずである。
ただし原子力の泊発電所を再稼働させることが前提で、新料金の算定根拠に含まれる2013年度〜2015年度の燃料費は前回2008年の料金改定時よりも下がることになっている。これまで電力会社が電気料金を値上げするにあたっては、火力発電による燃料費の増加を最大の要因に挙げてきた。その根拠が北海道電力の場合には成り立たない。
北海道電力が値上げに踏み切らざるを得ない要因は主に2つある。1つは収入の低下で、2012年度の売上は前年度から8%、514億円も減少した。今後も販売電力量の増加は期待できず、料金を値上げする以外に売上を回復させる方法がない。2012年度の売上は5830億円で、10%の値上げによって減少分をカバーする計算だ。
もう1つの要因は原子力発電所を再稼働させるために必要な安全対策などの原価の増加である。2013年度〜2015年度の3年間で、年平均813億円も原価が増加する。ところが燃料費は原子力発電を増やすことによって1割強の減少を見込んでいる。
原価の中で大きく増えるのは「修繕費」と「減価償却費」の2項目である。修繕費は火力発電所と原子力発電所の費用増加が大きい。一方の減価償却費の増加分はほぼ100%が原子力発電所の増設と安全対策によるものだ。原子力発電所の安全対策には3年間で797億円の費用がかかり、このほかに増設済みの原子力発電設備と合わせて減価償却費を織り込んでいる。
結局のところ、原子力発電所を再稼働させて燃料費を削減する一方で、それを上回る費用が再稼働のために必要になる。その結果の値上げである。原子力発電所を再稼働させなければ火力発電の燃料費が増える。いずれにしても値上げは避けられないわけだ。
であれば、北海道民はどちらを選ぶのだろう。現在のまま火力発電に依存するのか、それとも原子力発電を復活させるのか。利用者にとって共通する対策は、節電に努めて電力使用量を減らすことである。使用量を1割削減できれば、電気料金は増えない。
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