原子力発電所でもビッグデータ、2500種類のパラメータから故障を予見:エネルギー管理
中国電力はNECと共同で開発した故障予兆監視システムを、停止中の島根原子力発電所に導入する。原子炉や発電機に設置したセンサーから2500種類のデータをリアルタイムに収集・解析して異常を検知するシステムである。6月下旬から実際の発電設備で有効性の検証を開始して再稼働に備える。
島根原子力発電所は中国電力で唯一の原子力発電設備で、1974年に運転を開始した1号機と1989年に稼働した2号機で構成する(図1)。このうち2号機の再稼働に向けた適合性審査を原子力規制委員会に申請していて、新たに「故障予兆監視システム」を導入する発電設備も2号機である。
2号機には原子炉や発電機、ポンプや配管などを含めて多数のセンサーを設置して、温度や圧力、流量や振動などのデータを常に収集している。すべてを合わせると2500種類のデータを収集することができて、これを分析することで故障の予兆を監視する。コンピュータ分野で注目を集めているビッグデータの手法を応用したもので、中国電力が3年前からNECと共同で開発してきた。
このシステムでは2500種類のデータを「プラントパラメータ」としてリアルタイムに解析して、複数のパラメータのあいだで成り立つ関係性を評価する(図2)。過去の解析結果と現在の解析結果を比べて違いがある場合には、故障の可能性があると判断してモニターに表示する仕組みだ。故障の発生箇所を推定することもできる。
解析手法には「インバリアント分析」を利用する。プラントパラメータを分析すると、複数のセンサー間で成り立つ不変(インバリアント)な関係を見つけることができる。この関係式をシステムで自動的にモデル化して、予測値と実測値を常に比較しながら異常度を計算することが可能になる(図3)。
中国電力とNECは島根原子力発電所の技術訓練用施設にインバリアント分析による故障予兆感知システムを導入して、2012年10月から試験を続けてきた。施設内で疑似的な故障を発生させた試験で十分な検出精度を得られたことから、実際の発電設備に適用して有効性を検証することにした。
2号機には6月下旬にシステムを導入後、検証を続けて故障予知の精度を高めていく。ただし運転を停止している2号機でプラントパラメータをどのように発生させるかなど詳細な運用方法は明らかにしていない。
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