電力の大口顧客に限定した新サービス、海外のエネルギーコストを10%削減:電力供給サービス
小売全面自由化の影響は家庭だけにとどまらない。市場が活性化して企業も安い電力を購入しやすくなる。中部電力は大口の顧客を維持する戦略の一環で、海外の工場や店舗を対象に省エネの提案サービスを開始する。現地に社員を派遣して設備調査を実施することで顧客をつなぎとめる狙いだ。
新たに提供する「海外省エネサポートサービス」は、中部電力と購入契約を締結している顧客企業だけが対象になる。2016年4月に始まる小売全面自由化に向けた販売施策の1つとして、大口分野の顧客に個別対応で実施するサービスメニューの中に加える(図1)。電力会社では初めての取り組みだ。
このサービスは工場や店舗など現場の設備調査から始める。中部電力の社員が海外の現場に出向いて、電力計や流量計の設置から計測機器の確認までを実施する(図2)。さらにエネルギーの利用実績を計測して、機器の設定値の変更や運転開始時間の見直しなどを提案するサービスだ。こうした設備の運用方法の改善を通じて現地のエネルギーコストを約10%削減することが目的になる。
中部電力によると、これまで国内の製造業や小売業を対象に工場や店舗の現場調査と改善提案を実施したところ、同様のサービスを海外でも提供してほしいという要望が増えてきた。顧客の手間がかかる海外の省エネ対策をサポートすることで国内の電力供給契約を継続させる効果が期待できる。
サービスは有償だが、大手の企業にとっては海外のエネルギーコストを10%削減できれば費用対効果は大きい。一方で中部電力は中部圏の既存顧客にとどまらず、首都圏や関西圏のグローバル企業を獲得する手段として使える。現在でも中部電力の電気料金は東京電力や関西電力よりも安い。国内では地域を越えて安い電力を提供しながら、海外のサポートを加えて大口の新規顧客を狙う戦略だ。
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