【現代AI童話「驚き青年」】──「生成AIはヤバすぎる最強神ツール!?」 “プロ驚き屋”にご用心:新連載:マスクド・アナライズの「AIしてま〜す!」(3/3 ページ)
さまざまなメディアが生成AIを取り上げることも増えてきた現代。SNSで活動する一部のユーザーのことを「プロ驚き屋」「驚き屋」と呼ぶ声が上がっている。彼らの存在によって巻き込まれる可能性のあるトラブルを“AI童話”と題して紹介する。
現代AI童話は現実になるのか?
ここまで書き記した「驚きの青年」はあくまで創作です。昔から存在する童話の役割は、人としてあるべき姿を伝えるものです。実際の「狼少年」も、子供に対して「正直であるべき」と諭す訓話でした。
では現代社会と大人において「驚き青年」の寓話(ぐうわ)は通用するでしょうか。ここまで「驚き青年」と表現してきた存在は、現実では「プロ驚き屋」とも呼ばれます。実際にSNSや動画投稿サイトにおいてプロ驚き屋が多くおり、一定の知名度とフォロワー数を誇っています。
メディアがChatGPTや生成AIのような複雑なものを紹介するに当たって、プロ驚き屋は便利な存在です。小難しい数式を並べてボソボソ話す専門家よりも、巧みなトークと短時間で映えるAIを紹介できるプロ驚き屋の方が、手っ取り早く話題を作りたいメディアにとってありがたい存在だからです。
メディアにChatGPTや生成AIに詳しい人はいないので、「フォロワー数が多い=信頼できる」という根拠で「AIの専門家」として認知されていきます。つまり現代のChatGPTや生成AIにおいては、情報の正確さよりも“注目を集める情報に価値がある”と判断する人が多くいます。
話題にならない正しい情報よりも、注目を集める間違った情報の方にフォーカスを向ける人たちがいるのです。狼少年のようにウソで注目を集め続けても、ChatGPTや生成AIという多くの人にとって真偽の判断が難しい対象であれば、簡単にはバレません。背後に上場企業や有名大学や業界団体があっても、それだけでは信用たり得ないでしょう。
以前、SNSや動画投稿サイトにおける有名人の詐欺広告が話題になりました。一方で「ChatGPTの副業で〇〇万円稼げる!」「生成AIスクールに通ってAIエンジニアに転職すれば年収◯◯万円アップ!」など、根拠や再現性に乏しい広告は放置されています。10月に景品表示法が改正されるものの、個々人における自衛策は必要でしょう。
童話や寓話は人間として正しい姿を示しており、「狼少年」も創作を通して「うそをついてはいけない」という教訓があります。しかし現実には変化の激しいChatGPTや生成AIにおいて、悪質な業者が社会問題化する前に稼いで逃げ切る可能性も考えられます。
こうした経緯は過去に起こった、アフィリエイトや仮想通貨における悪質業者による詐欺や不祥事に発展する可能性もあります。あるいは生成AIスタートアップが株式上場するものの、上場ゴール(上場直後に業績下方修正を行うが創業者と出資者は利益を確保して売り逃げること)で終わる場合も考えられるでしょう。
米国のIT企業が開発して明るい未来をもたらすはずだったChatGPTや生成AIが、日本でプロ驚き屋による小銭稼ぎの手段に成り下がってはいけません。われわれにできることは、驚き青年のムダな驚きにだまされないことです。
ChatGPTで失業することも、生成AIのおかげで年収が100万円アップすることもありません。一方、正しく活用することで、成果を出せることは分かっています。いまやChatGPTや生成AIについてSNSや動画投稿サイトで大げさに驚く人に対しては“発信している情報が本当に正しいのか?”と疑うことも重要です。
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