生成AIのセキュリティ演習は“それっぽく見えるだけ”? 「AIレッドチーミング」を考える:小林啓倫のエマージング・テクノロジー論考(4/4 ページ)
生成AIの普及が進めば進むほど、サイバーセキュリティに対する懸念も高まっている。特に企業にとっては、導入した生成AIが犯す間違いやその不具合が、経営に大きな影響を与える可能性がある。それを防ぐため手段の一つ「レッドチーミング」について考える。
「セキュリティシアター」化を防ぐ際に重要なもの
もちろんレッドチーミングがあらゆるリスクを洗い出せなかったからといって、その活動に価値がないというわけではない。部分的な活動でも、問題点を確認し、対策を行えれば十分に実施した意味がある。また当然ながらレッドチーミングは定期的に行われるのが望ましいが、一度でも実施できれば、関係者に対して潜在的なリスクの存在をアピールできるだろう。
一方で「セキュリティシアター」が問題なのは、そこから「何かをやりきった」感が組織内に生まれてしまうという点だ。実際には洗い出されていない不具合や脆弱性があるにもかかわらず、レッドチーミングをしたというだけで安心されてしまっては、逆にリスクから目を背ける結果となってしまう。
予算確保の観点からはレッドチーミングの有効性をアピールする必要があるものの、それが達成できない部分もあることを、組織内で同時に周知徹底する必要がある。
実際に多くの識者が、AIや生成AIのレッドチーミングにおける透明性確保の重要性を指摘している。レッドチーミング活動が何を明らかにし、何を明らかにできなかったのか――それを多くの関係者に対して公開し、可能であれば、チームメンバー以外の専門家による検証も可能な状態にしておくこと。そうした対応を行うことで、間違った安心感を醸成してしまうのを回避できるだろう。
前述の通り、いま多くの専門家や専門機関、大手IT企業により、AIレッドチーミングの手法の確立が進められている。いち早くレッドチーミングに取り掛かることはもちろん望ましいが、そのベストプラクティスについて、継続的に知識をアップデートしていかなければならない。
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