ClaudeやGPT-4とは別にアプローチが必要かも
ただ注意点もある。「o1-preview」に比べると短くなったとはいえ、o1シリーズは長考によって課題に取り組むことに長けたモデル。細かく修正を出して、ChatGPT上だけで完成稿に近づけるには向かない(可能だが、それなら自分の手で書いた方が早い。多分入力するテキスト数が書きたい記事のそれを超える)
ClaudeやGPT-4に記事を書かせようとしていたときは、トライアンドエラーによって「自分で手を入れる必要がない文章が出てくる最強のプロンプト」を開発し、手直しを最小限にしたいと考えていたが、そのアプローチは再考すべきかもしれない。小〜中程度の手直しは覚悟し、とにかく「土台」を出しまくってもらうことで作業効率を上げる、あるいは音声入力を使うことで効率化するなど、いろいろ考えられそうではある。
またo1 pro modeに限った話ではないが、やはり複数のマルチモーダル(文字に限らない視覚や聴覚、嗅覚など)な情報を束ねて、記者独自の切り口で一つの記事にまとめるような作業を任せるのはまだ難しいというか、手間に見合わなかった。ただ、先述した通り書き筋はちゃんと進化しているので、情報入力に関する周辺環境がさらに整えば話は変わりそうだ。
多分、十八番は記事執筆じゃない
記者は3月、Claude 3 Opusで同様の検証を行った際「コラムや複数人への取材を基にした記事は、まだ人間がやった方が生産性が高い」「一方で企業からの発表をもとに記事を書くなら、AIと協業できる可能性が十分にある」と書いた。o1 Ppo modeも、この範囲内で進化しているな──というのが現状の感想だ。
と同時に「恐らくこいつの得意分野は執筆ではないのに、その能力を無理やり文字書きに使わせているな」という感覚がある。あくまで記者の手法に基づく考え方だが、記事を書くのは事前にある程度当たりをつけてから骨組みを作り、その後細部を磨くタスクなので、長時間考えて答えを出すo1 pro modeとはあまり相性が良くない気もしている。
恐らくo1 pro modeにやらせるべきなのは記事の企画やそれを含むコンテンツ群の見せ方の検討をはじめ、複雑なデータの読解など、思考やそれに伴う情報整理の外注のはず。それができるからそこそこの記事が書けるだけで、執筆がすごく得意なわけではないのだろう。それだけでも十分にすごいことだとは思うが。
とはいえ「手を動かすところは外注して、仕事の楽しいところだけやりたい」は譲れない。OpenAIは12日間にわたってさまざまな発表をする旨を予告しているので、そのどこかで記者が望むAIが出てくることを期待したい。
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