生成AIはマーケティングにどう使える? 博報堂DYグループが考える3つの事例:クリエイティブにAIを込めて(2/2 ページ)
博報堂DYホールディングスが、生成AIとクリエイティビティについて考える同連載。今回は「AIが変革するマーケティングの新しい顧客体験」と題し、同社が取り組むマーケティングにおける、AIとクリエイティブワークの新しい形を紹介する。
この取り組みもAIによる人間の創造性やスキルの拡張を目指したもので“AI with人間”をイメージしています。自分の趣味や思いをChatGPTに読み込ませると、普段自分の力では作ることのできないリリックを簡単に生成。自分が考えもしなかった思いを伝える方法や、自分の強みや個性自体に気付ける効果を確認できています。
この技術を応用した社会実装実験として「AIラップ名刺」の企画を行いました。名刺交換のシーンは堅苦しい場であり、自分の個性やパーソナリティーを紹介することは難しい場合が多いです。そこで、AIの力を借りてラップで自己紹介できるようになると新しい名刺交換の場になるのではないか? という発想から生み出された企画です。
この企画では、スマートフォンにプロフィールと趣味を入れるだけで、AIがリリックを約1分で作成します。さらに自分の写真を入れると、リップシンクの技術で自己紹介ラップを歌いだします。この社会実装実験を、4月の博報堂の入社式で行いました。博報堂の社長のAIラップを披露したところ、約90%の方から「親近感を感じた」「意外な一面を知ることができました」との回答を得られました。
AIラップ名刺のプロジェクトは、今までの自己紹介の在り方を再定義する可能性を考えるきっかけを提供できたと感じています。今までは写真と経歴をベースに自分のプロフィールをパワーポイントで説明することが定石でした。AIの力を借りることで、自分では思いもよらない表現方法や説明の仕方で自分の個性や人柄をプレゼンテーションできるようになり、自己紹介自体が新たな体験に変わっていく可能性があります。
博報堂DYグループが”バーチャルヒューマン”の開発に取り組むワケ
さらに、タレントと協働で制作した「バーチャルタレント」などの、AIエージェントとして機能するバーチャルヒューマン開発にも取り組んでいます。企業のオウンドメディアやSNSにバーチャルヒューマンが登場して、自然な振る舞いを見せたり、ユーザーのデータと連携したりすることで、ユーザーの趣味嗜好を理解し潜在的な欲求をバーチャルヒューマンに理解させることが可能になっていく──そんな未来がくると考えています。
YouTubeやTikTokなどでは、ストリーミングライブが行われていますが、バーチャルヒューマンを用いたライブをメタバース空間に広げていくことも構想しており、実証実験先を探している段階です。AIを活用しながら、商品やサービスのブランドや世界観をストーリーテリングする没入感のある体験を提供し、より好きになってもらうきっかけにつながるのではと考えています。
博報堂DYグループでは、AIをはじめとするテクノロジーは、広告クリエイティブの未来を大きく変えると考えています。実際、AIを活用した一部の制作物では、クリックやコンバージョン最適化など、即時的な効果の向上に既に貢献しています。
しかし、商品やサービスへの愛着、ブランドの世界観浸透に、バーチャルヒューマンを用いたエンゲージメント向上にAIを用いることはまだまだ事例が少ないのが実情です。CREATIVITY ENGAGEMENT BLOOMでは、バーチャルヒューマンによる人間らしい対話を実現して、顧客のインサイトを引き出したり、ブランドストーリーを感情的に伝えるなど、先進的な取り組みを今後も進めていきます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
“AIけものフレンズ”とLINEでグループトークできるサービス 博報堂が提供 月額550円から
博報堂は、AIを使ったLINEのグループチャットサービス「ジャパリトーク」を8月21日から提供すると発表した。擬人化した動物キャラクターを描いた作品「けものフレンズ」内の登場人物の性格や特徴を学習したAIと、グループトークができるサービス。
AIとの禁断の恋──その先にあったのは“死” 「息子が自殺したのはチャットAIが原因」 米国で訴訟 “感情を理解するAI”の在り方を考える
AIと恋に落ちる──かつて映画で描かれた出来事が“思いもよらないトラブル”として今現実にも起きている。米国である訴訟が起きた。訴えを起こした人物は「息子が自殺したのはAIチャットbotに依存したことが原因だ」と主張しているのだ。
AIを使ったアニメ、アニメイトGが2025年春に公開 “95%以上”のカットでAI活用も「あくまで補助ツール」
アニメイト傘下でアニメや書籍の製作を手掛けるフロンティアワークスなどは、AIを活用して製作したアニメ「ツインズひなひま」を2025年春ごろに公開すると発表した。
東京都がAI活用に向け有識者会議 松尾豊教授や安野たかひろ氏、Sakana AI伊藤COOなど出席
東京都が、AIによる行政サービス変革の実現に向けた「東京都AI戦略会議」の第1回を実施した。座長は東京大学の松尾豊教授で、東京都のAIアドバイザーに就任した安野貴博氏や、AIスタートアップSakana AIの伊藤錬COOなどが委員として参加。2025年夏ごろをめどにAI戦略を策定して公表する予定。
Google検索の“AI概要”がおバカすぎる? トンデモ回答が続出、強まるフェイクへの懸念
Googleで情報を検索したとき、生成AIが概要を表示する「AI Overview」。その回答内容がおかしいとする投稿が、11月末からSNSで相次いでいる。中には単なる“珍回答”にとどまるものもあるが、フェイクや健康問題につながるとの指摘も出始めている。

