AI業界に激震、突如公開の中華AI「DeepSeek」“驚きポイント”まとめ(2/2 ページ)
AI開発者やユーザーたちが驚く大規模言語モデル「DeepSeek-R1」。どんなポイントが業界に大きな衝撃を与えているのかか。
米Amazon.comがAnthropicに80億ドル(1兆2000億円)を投資するなど、ビッグテック各社がモデル開発に多額の資金を投じているのに対し、DeepSeek R1は約550万ドル(約8億5000万円)で開発されたと、国内外のビジネス媒体などで報じられている。そのためかSNSでは、DeepSeekの登場を、スタートアップによるジャイアントキリングのように受け止める声も散見される。
米国は中国に対しAIチップの輸出規制を行っているが、もし限られたリソースでも大手に匹敵するAIの開発手法が確立したのであれば、今後米中のパワーバランス変動にもつながり得るとする声もある。
ただし米CNBCは、米AIスタートアップScaleAIへのインタビューの中で、同社の社長によるコメントとして、DeepSeekがNVIDIA H100を5万台確保している可能性を報じている。H100の価格は1台当たり500万円前後。仮に5万台全てを活用したとすれば、GPU代だけで2500億円に上る。全てのH100を開発に使っていない可能性もあるが「開発費550万ドル」が正しくない、もしくはGPUの価格などを考慮していない数字の可能性もある。
手放しで「最高だ!」……とはならない理由
一方、中国産サービスということもあってか、R1は一部の政治的な質問には回答できない問題も抱えている。例えばWebサービス上では「天安門事件」「習近平国家主席」「尖閣諸島問題」といったワード・話題が絡む問いは、答えを拒否される傾向にあった。
なお、具体的にどんな問いに回答してもらえないか、モデルごとに差はあるのかといった検証の結果は別途記事化しているため、そちらも参照のこと。
参考:話題の中華LLM「DeepSeek R1」は、天安門事件を説明できるか あれこれ質問した
大型ルーキーか、はたまたゲームチェンジャーか
一部情報が錯綜しているものの、DeepSeekがAI業界に衝撃を与えているのは間違いない。日本でも、サイバーエージェントがDeepSeek R1の蒸留モデルをベースにしたモデルを公開するなど、動き出す企業が出てきている。果たしてDeepSeekの登場は、競争激化ののろしか、ゲームチェンジの兆しか、あるいは別の何かか──今後の動向も慎重に見極める必要があるだろう。
生成AIの最新テクノロジーや活用トレンドを解説
生成AIでどのように業務を変革していくべきなのか──企業の生成AI活用について、ITmediaのIT&ビジネス系メディアが総力でお届けする「ITmedia AI Boost」を開催します。企業のリアルな事例や専門家の詳しい解説などを配信します。
- イベント「ITmedia AI Boost」
- 開催期間:2025年2月18日(火)〜2月19日(水)
- 無料でご視聴いただけます
- こちらから無料登録してご視聴ください
- 主催:ITmedia AI+、 ITmedia ビジネスオンライン、 ITmedia エンタープライズ、 @IT
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「DeepSeek」ショック? 高性能な中国産AIの登場で、アジア株・米国株先物とともに下落
中国のスタートアップDeepSeekが米OpenAIのChatGPTに対抗する無料のAIモデルを発表した影響を受け、1月27日に米国株先物と中国以外のアジア株が急落した。
話題の中華LLM「DeepSeek R1」は、天安門事件を説明できるか あれこれ質問した
AIユーザー・開発者たちの話題をさらった大規模言語モデル(LLM)「DeepSeek-R1」。開発元が中国企業ということもあり、答える内容の偏りなどを懸念する声も多い。筆者も実際に試したが、環境によっては確かに回答が得られない質問が存在した。
OpenAIの「o1」と同レベルうたうLLM「R1」登場、中国DeepSeekから 商用利用可
中国のAI企業DeepSeekが、米OpenAIの「o1」と同レベルの性能をうたう大規模言語モデル(LLM)「DeepSeek-R1」を公開した。いずれもMITライセンスで、商業利用なども認めている。
