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「ウォーターマークを入れたい絵描きなんていない」──AI推進企業のコロプラがクリエイター保護ツール「CCP」を作ったワケ

AI活用を推進するコロプラが、クリエイター作品を生成AIの“無断学習”から保護する無料アプリ「COLOPL Contents Protector(CCP)」をリリースした。AIを積極的に使いながら、同時にAIから作品を守るツールも作る。この背景にある考え方を、菅井健太CIO(上席執行役員)と、CCPの開発を担当した工藤剛氏に聞いた。

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 生成AIの普及とともに、クリエイターの作品が本人の意図しない形で学習・加工されるケースが顕在化してきた。これに対抗する保護ツールはこれまでもあったが、その多くはAI利用に慎重な立場のコミュニティや研究者などから生まれてきたものだ。AI活用を推進する側の企業が、自ら保護ツールを提供する動きはほとんど見られなかった。

 2026年3月、その構図に一石を投じたのがコロプラだ。同社はAI活用率9割超、ゲーム開発ではコード生成の3〜4割をAIが担うなど、AI活用を積極的に進めている。その企業が、クリエイターの作品を生成AIの“無断学習”から保護する無料アプリ「COLOPL Contents Protector(CCP)」をリリースした


「COLOPL Contents Protector(CCP)」で寿司の画像を保護する過程

保護された寿司の写真。画像をダウンロードして手元のCCPで復元すれば元画像を表示できる

 AIを積極的に使いながら、同時にAIから作品を守るツールも作る。この背景にある考え方を、菅井健太CIO(上席執行役員)と、CCPの開発を担当した工藤剛氏に聞いた。

「使う側」が「守る側」にも立つ理由

 CCPが生まれた背景には、コロプラのAI活用に対する根本的な考え方がある。菅井氏は、同社のAI活用には2つの軸があると語る。一つは業務効率化、もう一つは「AIを体験そのものにする」というプロダクト開発の軸だ。

 後者の代表例が、Generative AI Japanが主催する「生成AI大賞2025」でグランプリを受賞した『神魔狩りのツクヨミ』(2026年4月22日にサービス終了済)。同作ではイラストレーター・金子一馬氏本人の許諾を得て、同氏のクリエイティブを学習させた独自AI「AIカネコ」を搭載し、プレイヤーの行動に応じて唯一無二のカードを生成する。つまり「クリエイターの意思と許諾に基づいて、AIがクリエイティブを拡張する」というモデルだ。

 「クリエイター自身の魂が重要。ツクヨミも金子さんの許諾があってこそ成立している。ところが世の中では、クリエイターの意思とは無関係に作品が加工・学習される事態が起きている。AIの恩恵を受けている企業として、そこに対して責任を持つべきだと考えた」(菅井氏)


菅井健太CIO(上席執行役員)

 つまり同社のAI活用もCCPも、クリエイターの意思を尊重するという価値観は一貫しているということだ。開発が正式に決まったのは2025年末。年始からプロジェクトを立ち上げ、約3カ月でリリースに至った。直接的なビジネスリターンを狙ったものではなく、広告モデルで持続的に提供する設計だ。

「絵を見せたいだけ。ウォーターマークを入れたいわけじゃない」

 CCPの設計思想を理解する上で重要なのは、既存のクリエイター保護ツールとの違いだ。

 AIの無断学習(ここで言う「無断学習」は単純な画像入力を含む)を妨害するツールとしては、画像にAIを混乱させるノイズを意図的に加えるものがすでに知られている。工藤氏はこうしたツールについて「一つの手段として有効」と認めつつも、CCPとは根本的にアプローチが異なると説明する。

 工藤氏が強調するのは、クリエイターの本来の思いだ。「クリエイターは見せたいものを見せたい。ウォーターマークやノイズを入れた絵が、本当にクリエイターが見せたいものだったのか。AI利用禁止と書きたくて絵を描いている人なんていない。不正利用されたくないだけだ」


CCPを開発した同社AIイネーブルメントチームのエンジニア、工藤剛氏

 CCPではこの課題に対し、画像を暗号化して埋め込み、正規のアプリ利用者だけが復号して閲覧できる仕組みを採用した。元の画像は「ぼかし」がかかった状態でSNSに投稿され、ぼかしの強度もクリエイター自身が設定できる。元の状態に戻せる点が、他のツールと大きく異なる部分だ。

 この設計には法的な意図もある。AIを混乱させるノイズを用いるツールの中には、学習先のAIモデルのデータを損壊させる可能性があるものもあり、法的には電子計算機損壊等業務妨害罪に問われうるリスクがあると工藤氏は指摘する。CCPはデータの埋め込みと暗号化のみを行い、モデルの破壊は一切意図していないため、こうした法的リスクがほぼないと説明した。

著作権法30条の4をめぐる設計上の工夫

 CCPの法的設計で興味深いのは、著作権法30条の4、いわゆる「機械学習のための複製」に関する規定への対応だ。

 日本の著作権法では、情報解析を目的とした著作物の複製は原則として権利制限の対象となる。つまり、公開された画像を機械学習に使うこと自体は合法とされるケースが多い。この点について、SNS上では「CCPがあっても30条の4で学習を止められないのでは」という指摘が出ていた。

 工藤氏は、CCPの設計がこの問題に2段階で対処していると説明する。

 第1に、CCP処理後の画像はぼかしがかかった状態でSNS上に投稿される。この状態の画像データは元の作品とは大きく異なり、学習データとしての価値が著しく低い。

 第2に、もし暗号化を解除して元画像を取り出し、それを学習に使用した場合。工藤氏は「技術的保護手段を回避した時点で違法」だと指摘する。DVDやBlu-rayのリッピングと同様の構造であり、保護を解除する行為そのものが問題になるため、その後の用途が学習であるかどうかは関係ないという見解だ。

 初期リリースでは、スマホの画面を外部出力するなどすれば復号済み画像をスクリーンショットで取得できてしまう問題があったが、最新バージョンではその問題も対策済みという。

「片方だけではこの時代で戦えない」

 ツクヨミでは金子一馬氏の許諾を得てAIでクリエイティブの可能性を広げ、CCPではクリエイターが望まない利用から作品を守る。どちらも「クリエイターの意思を起点にする」という一つの原則に基づいている。

 つまり、コロプラにとってAI推進とクリエイター保護は同じ考え方から来ており、それがこのAI時代を戦う上で重要だと菅井氏は話す。

 「どちらか片方だとバランスが崩れる。絶対にAIを使いませんという姿勢では技術の進化についていけない。かといって何も気にせずやりますでは受け入れられない。両方考えながらいかないと、この時代では戦えない」

 なお、CCPの今後の展開について、工藤氏は「プラットフォーマーになりたいわけではない」と前置きした上で、外部のプラットフォーム事業者などから連携の話があれば前向きに検討したいと話している。技術は完成したが、それをどう広げるかは、まだ次の一手を模索している段階のようだ。

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