日本のコンテンツ保護は厳しすぎる――なぜ戦わないのか?:Intel著作権政策責任者との対話(3/3 ページ)
先週に引き続き、Intelの著作権政策責任者であるホワイトサイド氏らと、日米のコンテンツ保護格差を考えてみる。彼らから問われたのは、日本の著作権保護が米国に比べて厳しすぎるのに、なぜ日本のコンシューマーは戦わないのか、という耳の痛い話である。
コンテンツホルダーに対して直接団体行動を起こしても、あまり報われる感じがしない。というか日本の消費者は、コンテンツホルダーになめられてる。どんなにヒドいことをしても、結局それしか手段がなければ金を出すだろう、まさかテレビを見るのをやめるってことはないだろう、と思われている。
それよりもわれわれの国には、他国にない大きな特徴がある。それは世界的に名立たる強力な家電メーカーが、んもうゴロゴロ存在するという事実だ。そして彼らは間違いなく、消費者を味方に付けたいと思っている。これを利用しない手はないだろう。彼らを生かしているのが、購買意欲旺盛で新しもの好きなわれわれ、すなわち日本の消費者だからだ。
彼らの強力なスポンサー力を発揮して、コンテンツホルダーを動かしていこうという作戦である。名付けて「強力なスポンサー力でコンテンツホルダーを動かしていこう作戦」だ。いやそれってそのママじゃねーか。
これについては、いろいろな方法が考えられるだろう。
例えばメーカーの製品に対して、ただ黙って買わないというのではなく、積極的にリアクションしていくことが第一歩だ。今後デジタルメディアを扱う製品にはすべて、なんらかのコンテンツ保護技術が盛り込まれることになるだろう。その使い勝手でどこが気に入らないのか、どうなれば買いたいのか、それを積極的に表明するのだ。
製品を買えば、大抵はユーザー登録ハガキやアンケート用紙が入っている。こういうものは、各メーカーとも必ずチェックしているものだ。こういうものにもリアクションしていく。
もっとお手軽に、ブログや掲示板でもいいだろう。最近はブログ専用のサーチエンジンなども登場している。というかサーチエンジンを有するポータルサイト自身がブログ機能を提供するという背景には、要望をなかなかアピールしてこないユーザーの本音を浮き彫りにすれば、それはビジネスになるという考え方があることは間違いないだろう。
これらはなんだかまとまりがないバラバラな動きのような気がするが、それでもそういう小さい動きが同じベクトルを指していれば、それは結果的にメーカーを動かしていく力になるだろう。
最後に、ホワイトサイド氏の意見を引用して、2週に渡ってお送りしたテーマの締めとしたい。
「厳しすぎるコンテンツ保護の方法が、コンシューマーが楽しめないような状況を作り出しているとするならば、彼らには『何も買わない』という選択が有り得るという点を指摘しておきます。われわれメーカーもコンシューマーの期待に添うよう努力するという共通の目標を持つことで、業界が一丸となれるのです。これは同時に、政府や法に依存しなくてもいいということを意味しています」
メーカー、コンテンツホルダー、ユーザーの三者が丸く収まる大岡裁き的「三方一両得」の着地点は、日本にもきっとある。
小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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