新人記者は「ビジネス用ICレコーダー」をこう選ぶ:仕事耕具(3/3 ページ)
取材やインタビューに使うため、ICレコーダーを購入することにした新人記者。最新のICレコーダーって、どんな製品があるんだろう。どんな基準で選べばいいんだろう。各メーカーから製品を借りて、試しに1週間ほど使ってみた。
PCで使う場合は「ダイレクト接続と録音ファイル形式」
今回の6機種はPCで接続するときのインタフェースはUSBで、すべてUSBマスストレージクラスに対応している。本体にコネクタを備えており、PCのUSBポートにダイレクト接続できるタイプと、接続にケーブルが必要なタイプがある。録音ファイルを再生するのはオフィス内だけだろうから、ケーブルは常にオフィスに置いておけばいいが、せっかく2Gバイト以上の容量があるのだからUSBマスストレージとしても使いたい。ストレージとして使うのなら、ダイレクト接続できるオリンパスのV-61、三洋のICR-PS380RM、ソニーのICD-UX80などのタイプが手軽でいいなと思った。
PCでファイルを再生する場合、録音のファイル形式が関係してくる。オリンパスの2機種はWMAで、三洋のICR-PS380、ソニーのICD-UX80、松下のRR-US950がMP3、ソニーのICD-SX88は独自形式のMSV(LPEC)だ。MSVファイルを再生するためには、専用の再生ソフトをインストールする必要がある。自分1人で使いたい場合はいいが、人にファイルを送るときや、前述のテープ起こし専用ソフトを使いたい場合は、いちいちファイル形式を変換しなければならないので面倒だ。WMAとMP3は、Windowsマシンであればどちらもソフトのインストールなしで使えるが、iPodなどのWMAに対応していない携帯プレイヤーでも聞きたい人は、付属ソフトなどでWMAをMP3に変換する必要がある。
本体で再生したい人は「再生スピード切り替えとインデックス機能」
本体で再生したい人は、「聞き返しやすさ」にも気を配る必要がある。具体的には、再生スピードの切り替え、早送り/巻き戻し機能、インデックスが付けられるかどうか、の3点だ。
再生スピードの選択はほとんどの機種で行えるが、ソニーの2機種と三洋のICR-PS380RMはメニュー画面を開かなくても、本体のスイッチで切り替えができる。
また、筆者が特に「これはいいなあ」と思ったのは、録音中のファイルに、しおりを挟むような感覚でインデックスマークを付け、後で再生するときにワンタッチでそこから再生できる機能だ。話を聞いていて「ここは重要そうだぞ」と思ったら小まめにインデックスマークを付けておくことで、聞き返すときの手間が格段に省ける。ただし、DS-60とV-61でファイルに付けたインデックスマークは、Windows Media Playerなどでサーチすることはできない。PCでインデックス機能を利用したい場合は、オリンパスのWebサイトからダウンロードできる専用ソフトをインストールして再生する必要がある。
電池持続時間や充電方法は?
さあ取材するぞというときに、バッグの中に放り込んでおいたICレコーダーを取りだしたら電池切れ……では泣くに泣けない。電池持続時間や充電方法も重要な決め手の1つだ。
オリンパスのDS-60とソニーのICD-SX88は単四形電池2本、そのほかの4機種は単四形電池1本を電源としている。最高音質モード録音時の電池持続時間は、DS-60が約30時間でトップ。一方、ソニーの2機種はICD-UX80が約9.5時間、電池2本使用のICD-SX88でも約13.5時間と短い。そのほかの3機種はいずれも約15時間程度の連続使用が可能だ。
充電方法は、オリンパスの2機種以外はすべてUSB接続での充電が可能。ただし、三洋のICR-PS380RMはPCに接続してから充電ボタンを長押ししないと充電が始まらない。PCに接続しただけでうっかり充電ボタンを押し忘れ、充電した気になっていた――などという失敗をしでかさないか若干不安だ。接続するだけで充電してくれる仕様にしてくれればいいのに……。
新人記者は「ビジネス用ICレコーダー」をこう選ぶ
ここまで音質、操作性、PCとの連携などいろいろなポイントについて見てきたが、最終的に「筆者がほしいICレコーダー」の条件として設定したポイントを以下にまとめてみよう。
- ケーブルなしでPCにUSB接続ができ、ストレージとしても使える。また、USBを介して充電ができる
- PCで再生しやすいMP3かWMA形式で録音できる
- 本体前面に選択/決定ボタンを配置しており、フォルダ選択などの操作がしやすい
- 十分な大きさのボタンやディスプレイを備えており、メニューなどがマニュアルなしでも使いやすい
当初は重要な判断のポイントだと考えていた音質は、自分の使用環境ではそれほど重視しなくてもいいという結論に至った。また、実際に製品を使ってみるまでは本体のサイズや重さなども重要なファクターだと思っていたのだが、実際に取材で外に出るときはノートPCや1眼レフカメラを必ず持っていくため、数十グラムの差はほとんど関係がなかった。
さて、自分で決めたこれらのポイントに、さらに価格という条件を考慮に入れて、実際に製品を購入しようと思う。
オリンパスのV-61は価格も手ごろで操作性もよく、ダイレクト接続できるところが気に入っていたのだが、USBポートから充電ができないのが痛すぎる。ソニーのICD-UX80はMP3録音とダイレクト接続の条件をクリアしているけど、ディスプレイは小さいし電池持続時間が9.5時間というのは少々心もとない気もするし。PCでの再生がメインで、編集部内でファイルのやりとりをすることもあるはずだから、MSV形式で録音するソニーのICD-SX88も選びにくいな……。うーん、やはりどれも一長一短で迷ってしまう。
三洋の製品は、選択/決定ボタンが側面にあって操作が多少しづらいけど、MP3で録音できるし、ダイレクト接続できるし、USBポートからの充電もできる。ディスプレイの大きさも電池持続時間も問題ない。USBポートからの充電ができなかったりディスプレイが小さかったりするのは筆者にはどうしようもないが、操作はある程度の慣れで解決できるかもしれないし、ここは三洋の製品で決まりか。今回借りたICR-PS380RMは容量が4Gバイトのハイエンドモデルなので、容量が2Gバイトで実売価格が2万円〜2万5000円程度のICR-PS285RMあたりがちょうどよさそうだ。
ボーナスも(一応)出たことだし、次の休日には家電量販店のICレコーダー売り場に行ってみよう。各メーカーの製品についても少しは詳しくなったし、売り場の店員さんにも鋭い質問を飛ばして――などと楽しい想像をしていたら、こちらを見つめる先輩記者の視線に気づいた。
「……どれ買うか決まった? じゃあ今からA社の製品発表会行ってきて。明後日の連載も頼んだ。その次の日は取材が3つも重なってるけど、ICレコーダーがあれば余裕でしょ」
――ええと、仕事で使うものは慎重に選ぶべきだし、やっぱりもう少し悩んでみるのもアリかもしれません。
関連記事
- グッズ/ツール
- 録音データをPCで管理するなら、ICレコーダーはこう選ぶ
ICレコーダーを購入する時にポイントになるのはなんだろうか。録音データをPCに移して管理する場合に気をつけたいことをまとめた。 - オリンパス、音質追求の最上位ICレコーダー「Voice-Trek DS-60」
音質にこだわったオリンパスのICレコーダー「Voice-Trek DSシリーズ」から、新開発のマイクや指向性マイクモードを搭載した最上位機種が登場。 - オリンパス、ノイズ除去機能が充実した「V-61/51」
オリンパスはICレコーダ「Voice-Trek」の最新モデル「V-61/51」を3月23日に発売する。PCにダイレクト接続が可能で、上位機種が備えていた3種類のノイズ除去機能を備えた。 - ソニー、広帯域録音可能なICレコーダー
ソニーがICレコーダーの新製品「ICD-SX88」「ICD-SX78」を発売。80〜20000Hzまでという広帯域録音が可能で、楽器演奏の録音にも適する。 - ソニー、音楽再生にも使いやすい薄型ICレコーダー
ソニーがICレコーダー「ICD-UX」シリーズを発表。本体にUSB端子を備え、ケーブルを使わずパソコンに接続できる。スリムなデザインに加え、イコライザ機能など音楽プレーヤー的な要素も強化。 - 狙った声を録音――パナソニック、4倍ズームマイク搭載のICレコーダー2機種
パナソニックは、ステレオタイプICレコーダー「RR-US950」と「RR-US750」の2機種を3月15日に発売する。「4倍ズームマイク」を搭載し、狙った声を高感度で録音できる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.