売れない新人の同行で得た、思いがけない好成績とは:「ユニット式営業組織」のススメ(2/2 ページ)
著者はある時、2人で営業に行く方が、はるかに契約を取りやすいことに気付きました。現代の「営業」現場の持つ本質的な理由が、そこにはあったのです。
なんだか分からないけど楽しいぞ
不思議なことはもう1つありました。実はこの日、明美ちゃんと同行していると私はとても楽しく営業を進めることができたのです。
みなさんもご存じの通り、営業の仕事は楽じゃありません。もちろん、売り上げが上がっていればストレスの多くは解消されますよ。それでもモチベーションを下げる要因はそこら中にあります。だから営業マンの研修やマネジメントにおいては何かと「モチベーション」がテーマになるのです。
私の場合も、それまではいくら売れていても「なんかやる気でねえなあ」と感じることはよくありました。ところが、そのとき私はそんなやる気の低下を感じることがほとんどなく、本当に楽しくストレスフリーで仕事をすることができました。なぜ? どーして?
それも……若くてキレイな女の子を連れてるからでしょ? 吉見さん!
なんて早とちりしないでくださいね。違うんですから。本当に。
いや、真剣な話ですよ。その後も私は、いくつかの営業現場で実際に試しながらこのことについて考えました。営業としての私自身のサバイバルにかかわる問題なので、本当によく考えました。その結果分かったことがあります。それは、「役割分担」をすることの重要さです。
カギは、役割分担をして営業をすることだった
2人で役割分担をして営業をすること。これがすごく大事なんです。明美ちゃんとの偶然の同行営業が、私にこの発見を与えてくれました。そして私は「ユニット型営業組織」というコンセプトを持つようになりました。
冒頭で書いた「個人別営業成績グラフの貼られた壁」が象徴するように、営業というと、1人1人が売り上げノルマを持って競い合う、一匹狼の群れというイメージがどうしてもあります。しかし、もはやそれで売れる時代ではありません。モノも情報も豊富にあふれかえっている現代には、現代に向いた営業組織があります。
- 営業マンを個人で競わせ、管理することをやめる
- 営業組織がチームで成果を挙げられるように、仕組みを考える
私がこの連載で訴えたいのは、簡単にいってしまえばこの2行です。それはこれまでの常識とは違いますが、私が実際に自分自身の営業経験を元に結果を出してきた方法です。これを、営業に苦しむ多くの会社に知ってもらい、突破口を開いてほしいのです。
明美ちゃんとの同行営業で「ユニット営業」の価値を発見した後、あるきっかけで私は営業マンそのものから、営業コンサルタントへ転身しました。それは、
これ以上、営業マンをすりつぶすような使い方をしてはいけない
という思いからです。その思いは今も変わりません。この連載が、売れずに苦しんでいる会社と営業マンのために役に立つことを願っています。
それでは、次回から、「ユニット営業」の具体的な事例と方法論をこれでもか! とお伝えする意気込みですので、どうぞどうぞご期待ください。
著者紹介 吉見範一(よしみ のりかず)
初対面の人を前にすると全身に汗をかくほどのあがり症で営業には不向きな性格だが、ツールを多用する独自の方法を発見し注目される。現在「シロウトをプロにする」営業コンサルタントとして全国の講演で活躍中。著書に『「売れる営業」のカバンの中身が見たい!』がある。
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