仕事の成長スピードが速くなるプロセスとは?:研修に行ってこい!
普段無意識に発揮している能力ですが、意識することで、成長スピードが変わってきます。能力を日常でどのように発揮しているかを知ることで、自分や部下、後輩の能力アップの方向性を考えるヒントをご紹介します。
前回は、人を育てる計画を考える上で必要な組織上の役割と、それを果たすためにどのような能力が求められるかについて、全体的なイメージをお伝えいたしました。それに加え、変化する社会を乗り越えるために、強いマインドを持つことの重要性をお伝えしました。
今回は細分化した能力を、日常でどのように発揮しているかを知ることで、自分や部下、後輩の能力アップの方向性を考えるヒントをご紹介します。
能力は自然に発揮している
新入社員のころを思い出してください。初めて会社に入った時、今では当たり前に使っている業務用の電話、PC、コピー機の使い方ひとつ分からなかったのではないでしょうか?
それでは、コピー機の使い方を教えてもらった時に、「この能力を発揮してコピー機を使いこなそう」と、思っていたでしょうか。そんなことはないですよね。使い方を教えてもらって、繰り返し取り組んでいるうちに、自然に身に付いているはずです。このように、無意識に能力を発揮しています。また、知らず知らずのうちに向上しているものです。
その能力発揮のイメージを図にしたのが、下の図になります。人は、ある知識、技術、情報をインプットすると、それを理解、整理、判断し、行動します。また行動の結果、何かしらの反応を得ると、経験として蓄積し、次に同様なことが起こった際の判断に生かしています。
この一連の流れの中で、人を「組織上の役割」と「その役割を発揮する上で必要な能力」の観点から整理したのが、前回ご紹介した「カッツ曲線+α」です。今回ご紹介する図の中に、カッツ曲線で大きな分類となっている「Conceptual Skill」「Human Skill」「Technical Skill」も位置づけました。
このように考えてみると、職位が上がるとコンセプチュアルな能力が重要で、経験が少ないうちは業務遂行力が求められる。対人関係能力はどの階層でも重要であることがイメージしやすくなると思います。
能力を意識して発揮すると、成長スピードが速くなる
さて、普段無意識に発揮している能力ですが、これを意識して発揮することで、成長スピードが全然違ってきます。そのための秘訣をご紹介しましょう。
今回は話を分かりやすくするために、非常に簡単な業務「コピーをとる」で、考えていきたいと思います。あなたが「コピーをとってきて」と後輩に頼んだ場合、どのような対応をしてもらえると「助かった。ありがとう」と思えますか?
表の中のプラス1〜5の順番は、人によって価値観にバラつきがあるので、この順番はあくまで参考としてくださいね。その上で、次の表から選択してください。または、自分なりの順番を作ってみてください。
レベル | 質/量/納期/コスト/ほかへの影響 |
---|---|
基本レベル | 指示を確認した上で、期限までに印刷が完了できている |
プラス1 | 基本+目的に合わせて見やすいように工夫を加えている |
プラス2 | プラス1+コストの面に配慮している |
プラス3 | プラス2+コピー完了後の取り扱いも含めて対応できている |
プラス4 | プラス3+ほかの同様の作業の有無を確認した上で対応できている |
プラス5 | プラス4+与えた期限よりも早く完了できている |
順番を作って考えてみると、同じ時間の中でも、工夫次第で仕事の質と量を高められることが分かります。また、その組織にとって必要な仕事の基準がはっきりします。
これによって、仕事の質や量が人によって過剰となったり、不足することが減ります。そして基準が明確になることで、自分の能力のどの部分を高めた上で行動すればいいかが分かり、修正もしやすくなります。
このように基準を決めて仕事に取り組むと、人は成長しやすくなります。すべての仕事でこうした表を作るのは大変ですが、職場の中で大事な仕事を3つほどピックアップして基準を明確にするのがポイントです。まずは、あなたの職場の大事な仕事を探してみてくださいね。
著者紹介:原田由美子(はらだ・ゆみこ)
大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。
社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=お客様の期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。
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