意外と知らないサラリーマンの住民税、所得税とは何が違う?:大増税時代(4/5 ページ)
大手企業の本社があるA市は裕福なので住民税が安いらしい――こんな都市伝説を聞いたことはないだろうか? 住民税は、基本的に全国一律だ。今回は意外と知らない住民税の仕組みを解説する。
あらためて住民税の計算式を確認してみよう。
(1)給与の収入金額(年収)−給与所得控除=給与所得
(2)給与所得−各種控除=課税所得
(3)課税所得×税率+均等割−調整控除=住民税
既に3事例の課税所得までは計算したので、(3)式の計算を行って最終的な税額を算出してみたい。税率は基本となる10%、均等割は4000円とした。
年収440万円、独身、生命保険なしの場合
(1)給与の収入金額(年収)−給与所得控除=給与所得
440万円−142万円=298万円
(2)給与所得−各種控除(社会保険料控除+基礎控除)=課税所得
298万円−(58万5000円+33万円)=206万5000円
(3)課税所得×税率+均等割−調整控除=住民税
206万5000円×10%+4000円−2500円=20万8000円
前回計算した所得税が10万4000円だったので、所得税と住民税の合計は31万2000円となる。
年収520万円、専業主婦の妻と小学生の子供1人、生命保険料3万5000円の場合
(1)給与の収入金額(年収)−給与所得控除=給与所得
520万円−158万円=362万円
(2)給与所得−各種控除(社会保険料控除+基礎控除+配偶者控除+生命保険料控除)=課税所得
362万円−(69万円+33万円+33万円+2万5000円)=224万5000円
(3)課税所得×税率+均等割−調整控除=住民税
224万5000円×10%+4000円−2500円=22万6000円
前回計算した所得税が11万6500円なので、所得税と住民税の合計は34万2500円となる。
年収850万円、妻の年収120万円、高校生と大学生の子供、生命保険料10万円以上の場合
(1)給与の収入金額(年収)−給与所得控除=給与所得
850万円−205万円=645万円
(2)給与所得−各種控除(社会保険料控除+基礎控除+配偶者特別控除+扶養控除+特定扶養控除+生命保険料控除)=課税所得
645万円−(113万円+33万円+21万円+33万円+45万円+3万5000円)=396万5000円
(3)課税所得×税率+均等割−調整控除=住民税
396万5000円×10%+4000円−2500円=39万8000円
前回計算した所得税が30万6500円なので、所得税と住民税の合計は70万4500円となる。
前回解説した所得税の計算方法、今回の住民税の計算方法を理解すれば自分自身の税金が計算できるようになる。計算できるようになっても税金が増えたり減ったりする訳ではないが、今までブラックボックスに近いイメージだった税金が見えるようにはなるだろう。
例えば子ども手当により扶養控除が廃止され実質の子ども手当はいくらなのか。高校の授業料無償化により特定扶養親族の廃止によりどれだけ増税されたのか。2013年から復興増税で所得税が増税されるが自分自身はどれだけ増税になるのかといった場合に正確な金額を算出できるようになる。
先ほどの例で計算してみると、年収520万円、専業主婦の妻と小学生の子供1人、生命保険料3万5000円の場合、小学生の子供が子ども手当の対象となり扶養控除(所得税38万円、住民税33万円)が廃止となった。
扶養控除が廃止されなければ、所得税の課税所得が38万円減るので214万円から176万円に。住民税の課税所得も224万5000円から191万5000円となる。これにより
所得税:176万円×5%=8万8000円
住民税:191万5000円×10%+4000円−7500円=18万8000円
合計した納税額は27万6000円となり、34万2500円との差は6万6500円。毎月1万3000円の子ども手当も増税分を差し引くと、約7500円になる。
年収850万円の場合も高校生が特定扶養親族の対象のままであれば所得税の控除が38万円から63万円、住民税の控除が33万円から45万円に増える。所得税の367万円の課税所得は342万円、住民税の396万5000円の課税所得は384万5000円となり、所得税は342万円×20%−42万7500円=25万6500円、住民税は384万5000円×10%+4000円−2500円=38万6000円に。
よって納税額は64万2500円で、70万4500円との差は62000円。11万8800円の授業料が無償となっても62000円増税されると実質は5万6800円の補助なので、うれしさも半分以下といった感じだろうか。この金額を算出できても何も変わらないとも言えるが、政策に賛成するかしないかの判断基準の1つにはなるだろう。
復興増税も所得税の納税額を知っていれば、納税額に2.1%上乗せする定率増税なので簡単に計算できるはずだ。とは言え現在の増税額は計算できるが、25年間続く増税なので将来の税額は想像するのは難しい。
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