クールビズ、事前に「カジュアルでお越しください」と伝える気遣い:田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(2/2 ページ)
企業におけるクールビズはすっかり定着した感がある。ビルの入り口などにクールビズの断り書きを見掛けることが多い。ただ、もう少し工夫があってもいいのになあ、とよく思う。
一方、来客側に配慮した断り書きも時々見かける。
「当社はクールビズを採用しております。従業員がノージャケット、ノーネクタイで勤務しております。お客様におかれましても、ご遠慮なく軽装でお越しくださいますよう、ご案内申し上げます」
こういうのはとても親切だ。
クールビズというのは、節電や環境保護や働く人の健康管理などが目的のはず。だから自社だけでなく、来社するすべての人に同じように推奨しないと意味がないものだろう。
顧客先を訪問することが多い知り合いの男性とばったり出会った時のこと。彼は、腕に上着をかけて歩いていた。
「この暑さで、上着持参で、日中の移動も大変ね」と言うと、
「お客様先の玄関辺りで上着を着て、会議室に通され、しばらくすると“暑いでしょうから、どうぞ脱いでください”と言われるまでに着るだけなんですよね、これ。ほんの数分着るために持ち歩いているようなもので……」と苦笑しながら答えた。
「上着なしではダメなのかしら。クールビズという言葉も定着し、ノージャケット、ノーネクタイもかなり当たり前になってきた感があるけれど」と言うと、「先方がどういう企業か、はたまた、担当者がどういうタイプの方か分からないので、念のため上着は持参することにしている」のだという。
「持ち歩いているとしわになるし、着ていると汗で汚れるし、上着なしにしたいのだけど……」と言っていた。相手に気を使ってしまう日本人としては、こうした時「いや、私は上着なしでいきます。中身で勝負しますから」とはなかなか言えないものである。
着席したらすぐ「どうぞ脱いでくださいね」と言うのであれば、事前に「上着を着て来なくていいですよ」と言ってあげるほうがもっと親切ではないだろうか。
私は来客が予定されている時、アポイントの確認メールなどで「当社も軽装での勤務ですので、どうぞ遠慮なく、カジュアルでお越しください。上着、ネクタイなど当社にいらっしゃるためにしてこなくて大丈夫ですから」といったことを書き添えるようにしている。こうすることで、余計な気遣いをさせずに済むと思うからだ。時々言い忘れてしまうことがあり、後悔することもある。ある人は、伝え忘れないようにするため、メールの署名部分に常に「カジュアルでお越しください」と入るようにしていると言っていた。これもよい方法だ。
以前、あるお客様から事前に「絶対に上着なんて着てこないでくださいね。暑いですから、遠慮とかお気遣いなどなく、本当にビジネスカジュアルで着てください。上着着て来られたら、こちらが恐縮してしまいますから」と強く言われたことがある。連日35℃を超えるような猛暑の夏だったので、この言葉には心から感謝した。
訪問する側も迎える側も互いに気遣いをすると、より良好な関係が築けることだろう。
著者プロフィール:田中淳子
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。
- 著書:最新の著書は「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)。「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)、「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)、「コミュニケーションのびっくり箱」(日経BPストア)など。
- ブログ:「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」
- Facebook/Twitterともに、TanakaLaJunko
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