説得は、はじめは小さく、徐々に大きく:思うように人の心を動かす話し方(1/2 ページ)
セールスパーソンが「これ、買ってください」といきなり言っても、買う人はまずいない。しかし「話だけでも聞いてください」としつこく言ううちに、「じゃあ話だけでも聞きましょうか」となることもある。実はこのとき、すでにさらなる要求を受け入れる心理状態になっているのだ。
集中連載「思うように人の心を動かす話し方」について
本連載は、榎本博明氏著、書籍『心理学者が教える 思うように人の心を動かす話し方』(アスコム刊)から一部抜粋、編集しています。
「お1人さま3個までに限らせていただきます」と言われて、つい列を作って並んだり、本当に必要でもないのに商品を3個も抱えてレジに走ったりしていませんか? 実はこれ「今買わないと損!」と思わせて、お客を殺到させたり商品に飛びつかせたりするための、人の心を操る心理テクニックです。
あるいは「話だけでも聞いてください」と言われて、最初はまったく買う気がなかったのに、気付いたらとんでもない買い物をしてしまった……なんていう経験はありませんか? これは“フット・イン・ザ・ドア”と言われる、思うように人の心を動かす心理テクニックの1つです。
はじめからお願いしたら到底受け入れられない法外な要求でも、いつの間にか受け入れさせてしまう魔法のフレーズなのです。
他にも「どうぞ、お座りください」「そうですか、では……」「お隣のAさんもBさんも」など、人の心をぐぐっと動かすキラーフレーズや心理テクニックは世の中にたくさんあふれています。
誰でもすぐに使えて効果絶大な心理テクニックを本書ではたっぷり紹介しています。ぜひあなたも試してみてください!
聞くだけでは終わらせない、セールスパーソンの常套文句
突然、電話がかかってきて「すぐに英語力がつく英会話の教材があるのですがお買い求めになりませんか」と、いきなり言われて飛びつく人はいない。
玄関のベルが鳴り、インターホンを通して「強運になるブレスレットの販売にお伺いしたのですが……」と言われて、玄関の扉を開ける人はいないだろう。
ところが、買う買わないは別にして「とにかく話だけでもお聞きいただけないでしょうか?」としつこくお願いされると、きっぱりと断れない人が出てくる。
「しようがないなあ、じゃあ話だけでも聞きましょう。でも、買うつもりはありませんよ」ということになり、話を聞く。話だけをして歩いているセールスパーソンがこの世に存在するわけがない。物を売るからセールスパーソンなのである。それは分かっていても、
「話だけでも……」
とやられると、気のいい人はつい話を聞いてしまう。そのときすでにさらなる要求を受け入れる心理的準備状態ができあがっていることに、多くの人は気付いていない。
その結果とんでもない買い物をしてしまい、後になって「なんてバカなことをしたのだろう」と悔やむことになるのである。
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