一体感をかもし出す言葉に人は弱い:思うように人の心を動かす話し方(1/2 ページ)
われわれ人間は、一体感をかもし出す言葉に弱い。例えば、コーチと選手のようにハッキリと立場が分かれている場合、コーチが、ただ「がんばってください」と言うよりも「力を合わせてがんばりましょう」のほうが、選手はよりその気になりやすいのだ。
集中連載「思うように人の心を動かす話し方」について
本連載は、榎本博明氏著、書籍『心理学者が教える 思うように人の心を動かす話し方』(アスコム刊)から一部抜粋、編集しています。
「お1人さま3個までに限らせていただきます」と言われて、つい列を作って並んだり、本当に必要でもないのに商品を3個も抱えてレジに走ったりしていませんか? 実はこれ「今買わないと損!」と思わせて、お客を殺到させたり商品に飛びつかせたりするための、人の心を操る心理テクニックです。
あるいは「話だけでも聞いてください」と言われて、最初はまったく買う気がなかったのに、気付いたらとんでもない買い物をしてしまった……なんていう経験はありませんか? これは“フット・イン・ザ・ドア”と言われる、思うように人の心を動かす心理テクニックの1つです。
はじめからお願いしたら到底受け入れられない法外な要求でも、いつの間にか受け入れさせてしまう魔法のフレーズなのです。
他にも「どうぞ、お座りください」「そうですか、では……」「お隣のAさんもBさんも」など、人の心をぐぐっと動かすキラーフレーズや心理テクニックは世の中にたくさんあふれています。
誰でもすぐに使えて効果絶大な心理テクニックを本書ではたっぷり紹介しています。ぜひあなたも試してみてください!
励ます人とがんばる人が同じステージに立つ言葉
私が免許を取ったころのこと。当時、自動車学校の指導員に技能教習でいじめられると、みんなが話していた。
そこで私も、どんなに感じが悪くても免許をもらうまでのつきあいなのだから、とにかく我慢するようにと言われ、覚悟を決めて入校した。だが、予想に反して親切な指導員が多くて拍子抜けしてしまった。
「がんばってください」と言ってくれる指導員も多く、大いに励まされたものだが、とりわけ印象に残っているのが、
「さあ、今日もがんばりましょう」
と言ってくれた指導員である。
「がんばってください」というのも温かい励ましの言葉だが、発話者、すなわち励ます人物とがんばる人物とがはっきりと区別されている。だれもあまり意識することはないだろうが「がんばってください」という場合、心理的距離の開きや立場の違いが明らかに存在する。
これに対して「がんばりましょう」という場合には、発話者は相手と同じステージに立っている。励ます人物は、ともにがんばる人物でもある。そこには心理的一体感が生まれやすい。
われわれは一体感をかもし出す言葉に弱い。人間は1人ひとり切り離されて個体として生きる孤独な存在であるため、一体感の夢を見させてくれる相手を求める。それが友情を生み、恋愛を育てる。
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