一体感をかもし出す言葉に人は弱い:思うように人の心を動かす話し方(2/2 ページ)
われわれ人間は、一体感をかもし出す言葉に弱い。例えば、コーチと選手のようにハッキリと立場が分かれている場合、コーチが、ただ「がんばってください」と言うよりも「力を合わせてがんばりましょう」のほうが、選手はよりその気になりやすいのだ。
「私」ではなく「私たち」、「○○してください」ではなく「○○しましょう」
話は脱線したが、「あなた」と「私」でなく「私たち」、「○○してください」でなく「○○しましょう」という言葉が一体感をかもし出す。仕事のパートナーとして引っ張り込みたいという場合も、
「きっとうまくいきますから参加してください」
よりも、
「きっとうまくいきます。力を合わせて成功させましょうよ」
という言葉のほうがインパクトが強い。こんなふうに誘われると、
「そうか、がんばってみるか」
という気になりやすいのだ。
励まされる場合はこれほどうれしい言葉はないのだが、仕事や取り引きに際しては「やりましょう」式の一体感をかもし出す言葉に十分注意を払う必要がある。
雰囲気につられて気分が舞い上がり、いつの間にかあまり気乗りしない仕事に引き込まれたり、分の悪い契約を結んだりということにならないためにも、要注意である。
(次回は「エビでタイを釣る」について)
著者プロフィール:
榎本博明(えのもと・ひろあき)
心理学博士。1955年、東京生まれ。東京大学教育心理学科卒業。
東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした企業研修・教育講演等を数多く行うとともに、自己心理学を提唱し、自己と他者を軸としたコミュニケーションについての研究を行うなど、現代社会のもっとも近いところで活躍する心理学者である。
著書に、『「上から目線」の構造』『「すみません」の国』(日経プレミアシリーズ)、『「上から目線」の扱い方』(アスコム)、『「俺は聞いてない!」と怒りだす人たち』(朝日新書)、『心理学者に学ぶ気持ちを伝えあう技術』(創元社)など多数。
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