「お隣のAさんもBさんも」――“まわりの人”を利用する:思うように人の心を動かす話し方(1/2 ページ)
例えば、生命保険の契約をしようと思うとき、はたしてどのくらいの額の保険に入るのが妥当なのか分からない。明確な基準というものがないからだ。そこで「お隣のAさんもBさんも」というように、判断に迷っている相手には“まわりの人”を利用して提案するのが効果的。人は不安なときほど、他人の行動が気になるものなのだ。
集中連載「思うように人の心を動かす話し方」について
本連載は、榎本博明氏著、書籍『心理学者が教える 思うように人の心を動かす話し方』(アスコム刊)から一部抜粋、編集しています。
「お1人さま3個までに限らせていただきます」と言われて、つい列を作って並んだり、本当に必要でもないのに商品を3個も抱えてレジに走ったりしていませんか? 実はこれ「今買わないと損!」と思わせて、お客を殺到させたり商品に飛びつかせたりするための、人の心を操る心理テクニックです。
あるいは「話だけでも聞いてください」と言われて、最初はまったく買う気がなかったのに、気付いたらとんでもない買い物をしてしまった……なんていう経験はありませんか? これは“フット・イン・ザ・ドア”と言われる、思うように人の心を動かす心理テクニックの1つです。
はじめからお願いしたら到底受け入れられない法外な要求でも、いつの間にか受け入れさせてしまう魔法のフレーズなのです。
他にも「どうぞ、お座りください」「そうですか、では……」「お隣のAさんもBさんも」など、人の心をぐぐっと動かすキラーフレーズや心理テクニックは世の中にたくさんあふれています。
誰でもすぐに使えて効果絶大な心理テクニックを本書ではたっぷり紹介しています。ぜひあなたも試してみてください!
生命保険は、どれくらいの金額が妥当か
「お隣のAさんのお宅でも、お向かいのBさんのお宅でも、○○万円のコースをご検討いただいております」
といった言葉につられて、いつのまにか掛け金の高い保険の契約を結んでいたという話をよく耳にする。
日頃あまり意識することはないだろうが、だれもが病気や死に対する漠然とした不安を心のどこかに抱えている。
いくら元気な人でも、いつ病魔に襲われるか分からない。たまたま、事故に巻き込まれるようなことがないとは限らない。万が一の事態に備えて、何らかの対処をしておくに越したことはない。
そこで、生命保険やら傷害保険に入っておこうということになるわけだが、はたしてどのくらいの額の保険に入ったらよいのかが分からない。
世帯収入や家族構成、自分の年齢などからして、どのくらいの金額の保険に入るのが妥当なのか分からない。これには明確な基準というものはない。
何歳のときに手術を要する病気にかかるのか、交通事故に巻き込まれて大ケガをするのかなど知りようがない。何歳で死ぬのか、そのとき残された者の経済状態はどうであるかなど、一切分からない。
つまり、妥当な保険金額を何らかの根拠をもってはじき出すというのは、どうみても不可能なのだ。
とはいうものの、ちょっとした買い物と違って額が大きいため、何らかの指針がないと不安になる。そんなとき、経済状態や家族構成の似ている隣近所の人たちが「○○万円のコースを検討している」と言われると、自分もそのあたりを検討してみようかということになる。
こうしてCさんは、隣のAさんも向かいのBさんも、○○万円のコースなのだからということで、○○万円のコースの契約を結ぶことになる。じつは、このセールスレディは、どこの家にも同じようなことを言っているのかもしれない。例えば、Aさんにも
「お隣のCさんのお宅でも、はす向かいのBさんのお宅でも、○○万円のコースを検討していただいております」
と言っているのである。けっして嘘ではない。結局のところ、あの人たちが○○万円のコースならばとお互いに考えることによって、どの人も○○万円のコースの契約を結んでしまう。だれもが、ちょっと高すぎるんじゃないかなあと思いつつも。
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