挨拶しながら“誰だっけ……”、こんな時の対処法:田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(2/2 ページ)
ニコニコしながら歩み寄ってきた相手から「久しぶりですね!」と話しかけられたものの、どこで会った誰なのか思い出せない……。こんな時の対処法をご紹介しよう。
知り合いの50代男性は、こんな話を聴かせてくれた。
クライアント先を訪ねた時、訪問相手の社長が外出先から戻るのが遅れていて、その部下の男性としばし歓談することになったそうだ。その人とは、以前に名刺を交換しており、何度かプロジェクトで共に仕事をしているのだが、何せだいぶ前のことで名前が思い出せない。
名刺交換を申し出てみたが、「僕は変わっていませんので」と言われて受け取ることができなかった。IDカードを覗き込んでも、名前の部分がこちら側に向いていなくて見えない。それでもにこやかに会話を続け、どうやって名前を確かめようかと頭の中で考えを巡らせていた。
一緒に取り組んだプロジェクトの話は鮮明に覚えていて、いくらでも会話は続けられる。「そうだ、話しているうちに仕事の中身に絡めながら相手の名前も思い出すかもしれない」と粘ったものの、20分経過しても相手の名前だけまったく思い出せない。
さあ、万事休す――と思ったその時、彼の携帯が鳴った。
「あ、社長! はい、松山です。ええ、今どちらに? 分かりました。お待ちしています」
……『ああ、松山さんだ』とようやく判明し、ほっと胸をなでおろしたそうだ。
プロジェクトの話はいくらでも思い出せるのに、名前という固有名詞だけはどうしても思い出せないというのは、よく分かる。
背景や属性は何でも覚えている。「ほら、○○の仕事を一緒にした人で××が大好きで、口ひげを生やしていて、背の高い人」なんてことは言えるのに、名前だけがどうしても出てこない。
同世代の友人は、「あいうえお」作戦をとると言う。「なんとか口(ぐち)さん」だったはず、とだけ思い出したような場合、
「あー、いー、うー、えー・・かー……はー、ひー、ひー、あ、樋口さんだ」
といった具合に順番に言ってみるのだそうだ。ヒットする名前が出てくるまで時間はかかるものの、問題は解決する。ただし、時々、「あ」から「ん」まで言ってみても「これだ!」という名前にぶつからないこともあるので困るそうだ。
人の名前を“正しく覚える”ことも重要
ところで、人の名前を漢字や読み方を間違えるというのもこれまた気をつけなければならない点だ。
例えば、「山崎さん」は「やまざき」なのか「やまさき」なのか。「細谷さん」は「ほそや」か「ほそたに」か。など、読み方も間違えないようにしなければならないし、読み方は知っていたとしても、旧字体で書くべきところを新字体で書いたら相手に失礼になる(場合もある)。
ありふれた苗字の私は、プライベートだけでなく仕事においても「じゅんこさん」と名前で呼ばれることが多いが、メールで「純子さん」「順子さん」と書いてある場合があり、その途端に、自分のことではないような気がしてしまう。
名前は、きちんと覚えておくのも難しいが、間違えて覚えないことも重要だ。正しい読み方、正しい漢字やスペルで表現することにも心を砕かねばならない。
ところで、名前を憶えているのが難しいことを自覚して以来、私は、自分から名乗るようにしている。相手も私の名前を思い出せず、内心ヒヤヒヤしているケースがあるだろうと思うからだ。
「ああ、お久しぶりです。田中です!」といって挨拶する。
誰もが念のため自分から名乗るようにしたら、冒頭のような苦労は激減すると思うのだがいかがだろうか。
著者プロフィール:田中淳子
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。
- 著書:最新の著書は「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)。「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)、「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)、「コミュニケーションのびっくり箱」(日経BPストア)など。
- ブログ:「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」
- Facebook/Twitterともに、TanakaLaJunko
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