少人数チームでは、“リーダー”という言葉に惑わされてはいけない:時代が求める「少人数チーム」の作りかた(2/2 ページ)
「リーダーにはなりたくない」という若手ビジネスパーソンが増えていると言われていますが、少人数チームでは“誰もが得意分野でリーダーシップを発揮する”ことが求められます。
今日ではこのようなケースがひっきりなしに起こり得ます。問題を解決しようとするときには、その問題に最も詳しいメンバーが方針を立ててどう動くべきかを提案し、実行するところまでをコントロールするのが合理的なやりかたです。
変化の激しい現代において、1人のリーダーがすべての問題を把握し、解決法を考えるのは現実的ではありません。チームのメンバーそれぞれが得意分野で力を発揮したほうが、時間も労力も少なくて済むのです。
このような「自分が一番詳しい問題については自身が方針を考えて提案し、解決までのフローを示して実行のための指揮を執る」という姿勢が「当事者意識」と言えるでしょう。それを「リーダー意識」と呼ぶのであれば、間違いなく「メンバー全員に必要な意識」と言えます。
メンバーそれぞれがリーダー意識と当事者意識を持って職務にあたる場合にも、少人数チームであることが効果の最大化につながります。「自分がチームに受け入れられている安心感があり、少人数ゆえに自分の力がチームの役に立っていることが見えやすく、それを通じてリーダーを含む仲間に感謝されるという喜びが得られる」からです。
なかでも「自分の力がチームの役に立っている」という感覚は、心理学では自己効力感と呼ばれる非常に重要なもので、これが得られないとモチベーションの喪失やうつ状態などを起こしやすいことが知られています。
チームリーダーの役割は
「自分が司令塔となってワークフローを進める当事者意識とリーダー意識は、メンバーそれぞれが持っているべき」というのが今回のポイントですが、誰もがいきなりすべてをやれるわけではありません。私自身も20代前半のときには「方針立案」も「行動提案」も、ろくにできていませんでした。
方針を立てられなかったのは知識と経験不足が原因ですが、行動提案ができなかったのは他に理由がありました。「提案」という目立ったアクションを起こすことで周囲に反発されるのを恐れていたのです。
今回、多くのチームリーダー経験者に取材をして分かったのは、まさにその「恐れ」や「警戒心」を取り除くことが「チーム」を成り立たせる大きな鍵であり、そのためには「少人数」であることが重要ということです。
人には、成長できる機会が必要です。「全員がリーダー意識を持ってほしい」という考え方は十分理にかなった正当なものだと思いますが、おそらく25年前の私では対応できなかったでしょう。「恐れることなく、できるところから少しずつやっていける。そして自律的に仕事を進めていくことの楽しさを知り、リーダー意識を身につけられる」――。人を育てるためにはそんな職場が必要なのではないでしょうか。それをもっとも実現しやすいのが「少人数チーム」なのです。
先が読めない時代と言われる昨今、限られたリソースで企業間の競争に勝ち残っていくためにはメンバーの力を最大化する必要があります。本連載では、その方法について「チームのメンバー構成」「リーダーの役割」「メンバーの意識」という3つの観点で紹介してきました。
どれも難しいことではなく、すぐ実践できることばかり。「思うような成果が上がっていない」「もっとチームの風通しをよくしたい」と考えているなら、まずはチームを5〜6人に分けるところから始めてみてはいかがでしょう。変化が実感できるはずです。
連載:時代が求める「少人数チーム」の作りかた
- 第1回:「少人数チーム」でビジネスの壁を突破する
- 第2回:会議もチームも飲み会も――うまくいくのは6人まで
- 第3回:多くの企業が陥る、リーダー不足という“勘違い”
- 第4回:「成果が出ない」「人間関係がうまくいかない」――この問題は少人数チームで解決できる
- 第5回:少人数チームでは、“リーダー”という言葉に惑わされてはいけない
著者紹介:開米瑞浩(かいまい・みずひろ)
IT技術者経験を元に、技術系の複雑な説明書、報告書などを分かりやすく書くスキルを技術者向けに教える研修事業を手がける。「エンジニア向け 図解思考再入門講座」「図解 大人の『説明力』」「ITの専門知識を素人に教える技」など著書多数。
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仕事の質や働き方が大きく変わりつつある今、仕事を効率よくこなすための“チームのありかた”に変化が現れています。スタッフが生き生きと働く元気な会社にするための“ベストなチームの形”とはどのようなものなのか――。その秘けつを紹介しましょう。
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