会議もチームも飲み会も――うまくいくのは6人まで:時代が求める「少人数チーム」の作りかた
メンバーの数は、チームをうまく機能させるための重要な要素であり、それを見誤るとチームが機能不全に陥ってしまうこともあります。チームは“5人が最適”といわれますが、そこにはどんな理由があるのでしょうか。
「社員が増えて6人を超えたころからコミュニケーションに問題を感じるようになり、自分1人で全員の話を聞くことが難しくなりました」――。これはある企業経営者のコメントですが、これを聞いて“そういえば、たしかに”と思った人は少なくないと思います。
メンバーが急増したチームを率いた経験がある人なら実感として分かるでしょうし、そうでない人でも、「多数のメンバーが集まる会議では、どうも言いたいことが皆にしっかり伝わらない」「人数が多い飲み会では、きちんとした話ができない」といった経験から、何となくイメージできるかもしれません。
このようにメンバーの数は、チームをうまく機能させるための重要な要素であり、それを見誤るとチームが機能不全に陥ってしまうこともあります。
それでは、チームのメンバーは何人が最適なのでしょうか。この問題は、古くから経営学の研究課題になっています。具体的な数値については時代や業種、職種によって差がありますが、この少人数チームに関する取材を通じて聞いた限りでは、5人前後が主流です。
現場の声1:(教育評論家 芦屋広太氏)チームの運営ができる人数は5、6人まで。7人以上になると1人1人との関係が薄くなり、悩んでいてもそれをリーダーが把握できないケースが出てきます。人数が増えると話す機会が減り、心が通じなくなって好意が揺らいでくるのでしょう。
現場の声2:(コンサルティング会社経営者)携帯電話ショップのコンサルで多くの店舗を見ていますが、4、5人までは問題が起きないのに6人になったとたんに運営が難しくなるケースが多いですね。裏番長的な人が出てきて陰で悪口を言いはじめるなど、面従腹背する動きが出てくる傾向があります。
このように、だいたい「リーダーを除いて5人程度が限度」という声が多く挙がりました。
この「1人の上司が、組織のすべてを把握できるのは何人までか?」という問題は、「スパン・オブ・コントロール」あるいは「統制範囲の原則」という名で古くから経営学で研究されてきました。この5人という数字は、最初期の研究者であるギュリックやアーウィックが60年以上前に唱えた説と一致するだけでなく、現代の経営学会でも一般的な指標となっています(参考:Span of Controlとは | グロービスMBA用語集「Span of Control」)。
とはいえ、人数が増えたときにすぐチームを分割して、5人程度で再編成できるかといえば、そう簡単にはいきません。
現場の声3:(大手SI会社技術部門マネジャー)チームリーダーになれる資質がある人は当社で10人に1人ぐらいだと思います。ただ、リーダーの育成を組織的にやろうと思っても、なかなか難しいですね。
リーダーの適任者が10人に1人程度しかいないようでは、5人で1チームの編成はできません。会社で少人数チームを組成するには、チームリーダーたりうる人材をどう確保するかが課題になるのです。
次回はリーダー不足を解消するための方法と、少人数チームの効果的な運営方法について考えます。
連載:時代が求める「少人数チーム」の作りかた
- 第1回:「少人数チーム」でビジネスの壁を突破する
- 第2回:会議もチームも飲み会も――うまくいくのは6人まで
- 第3回:多くの企業が陥る、リーダー不足という“勘違い”
- 第4回:「成果が出ない」「人間関係がうまくいかない」――この問題は少人数チームで解決できる
- 第5回:少人数チームでは、“リーダー”という言葉に惑わされてはいけない
著者紹介:開米瑞浩(かいまい・みずひろ)
IT技術者経験を元に、技術系の複雑な説明書、報告書などを分かりやすく書くスキルを技術者向けに教える研修事業を手がける。「エンジニア向け 図解思考再入門講座」「図解 大人の『説明力』」「ITの専門知識を素人に教える技」など著書多数。
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