会計にまつわる雑務を不要に――弥生の“取り込み、仕訳”自動化計画スタート
銀行やクレジットカードの取引データを外部連携サービスから自動的に取り込み、適切な仕訳へと自動変換する「YAYOI SMART CONNECT」を発表した。まずは「やよいの白色申告オンライン」と連携する。
「弥生が追い求める究極の“業務効率化”とは、会計にまつわる業務そのものを不要にすること」――世の中の取引データを自動的に会計(仕訳)データに変換する「YAYOI SMART CONNECT」を発表した弥生の岡本浩一郎社長の言葉だ。
かつて鉛筆とそろばんによる手計算だった会計業務は、電卓による計算の自動化、会計ソフトによる記帳の機械化が進み、処理時間が劇的に短縮された。弥生が狙う次なるステップは、銀行取引や売上データなどの取引データを自動的に取り込み、自動的に適切な仕訳データとして記帳する仕組みというわけだ。
狙うのはデータを軸にしたマルチプラットフォーム戦略
YAYOI SMART CONNECTの中核となるのは、非定形のテキストデータを解析する言語処理エンジンと、集合知(共創データベース)を活用する推論エンジンからなる「YAYOI SMART ENGINE」だ。銀行取引(売上/仕入/経費)、クレジットカード(経費)、電子マネー(経費)のデータを自動的に取り込み、仕訳データへと変換する。岡本社長が「面白半分で実装したが、使ってみると便利だった」というTwitterのツイートから経費を取り込む機能も備えている。
YAYOI SMART CONNECTはオープンプラットフォームを目指しており、積極的に他社製アプリとの連携を推進する。7月31日の提供開始時点で家計簿アプリ「Zaim」「MoneyLook」に対応。一見、競合する2つのアプリだが、それぞれのアプリでサービス提供方法やデータの取り込み対象が異なっており、「限定するのではなく、利用者に幅広い選択肢を提供することを選んだ」(岡本社長)という。当面は弥生側から声をかけていくとのことだが、連携APIは公開する方針。今後、POSやECサイト、決済サービスなどの売上データ、電子請求書、レシートOCRなどさまざまな外部アプリ/クラウドサービスとの連携を狙う。
| サービス名 | 銀行取引 | クレジットカード | 電子マネー | 現金 |
|---|---|---|---|---|
| Zaim | 1113行 | 76社 | 4社 | − |
| MoneyLook | 1009行 | 42社 | 10社 | − |
| − | − | − | ○ |
仕訳データへの自動変換は単純なパターンマッチングだけでなく、「『その人』の過去の変換だけでなく、『みんな』の変換履歴を反映する」という集合知データベースも活用。推論エンジンの精度は継続的にモニタリングし、変換結果に歪みが生じないように適宜アップデートを実施する。
自動変換した仕訳データは、同社のクラウド会計サービス「やよいの白色申告オンライン」(2014年7月31日〜)にリアルタイムで取り込める。2014年秋にリリース予定の「やよいの青色申告オンライン」(APIによるリアルタイム連動)、2014年末にはパッケージソフト「弥生会計 15」「やよいの青色申告 15」(ファイル経由での連動)にも対応する。
「弥生にとって『クラウド』は手段の1つに過ぎない。クラウド会計サービスが増えているが、クラウド化することだけが唯一無二の目的ではない。パッケージ版を使っているユーザーに対しては、その使い勝手を変えることなくデータだけオンラインに預けられる『弥生ドライブ』を強化していく。将来的には、データを軸にして、オフィスではパッケージソフトを、外出先ではクラウドサービスをといった形で使い分けるようになるのが理想だ」(岡本社長)
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