在宅勤務は女性のためだけではない――マネージャー層の3人に1人が介護離職する時代:テレワークの今(2/2 ページ)
政府は、2020年までにテレワーク導入企業を3倍にする方針を打ち出し、そのための助成金も交付している。テレワークを重視するその背景には何があるのか?
なぜ「テレワークは難しい」といわれるのか?
本来、テレワークは企業にも労働者にもメリットがある制度だ。東日本大震災後に多くの企業がテレワークに関心を持ったのは、事業継続性にメリットを感じたからだ。また、少子化や生産年齢人口の減少が進む日本社会において、「働ける人を増やす」ことは大きなテーマの1つであることは間違いない。
しかし、メリットを理解していながらも「やっぱりテレワークは難しいよね」というのが現状だろう。多くの企業が似たような悩みを持っている。例えば、「生産性が低下する」「情報漏えいが怖い」……。特に問題なのが「在宅でできる仕事がない」ことだと田澤さんは指摘する。
例えば5人のチームで仕事をする場合を考えてみる。そのチームでこなすべき作業のうち、「在宅でできる」仕事はどの程度あるだろうか。資料作成やデータ入力などは在宅でもできる業務だが、作業量は多いとはいえない。政府目標の10%を達成するには、5人のうち1人が隔週に1回のペースで終日在宅勤務をすることになるが、このままでは企業や従業員にとってメリットがほとんどない。
マネージャー層の3人に1人が「介護離職」を選択する可能性
だが、企業にとってテレワークを導入せざるを得ない状況がすぐ目前まで近づいているのも事実だ。ある経済誌の誌面に「介護離職」という見出しが躍ったことを覚えている読者はいるだろうか。家族を介護するために、まだバリバリと働ける現役社員が退職せざるを得ない状況に陥っているのだ。
田澤さんによれば、とある大手メーカーでは「2023年には介護が必要な親を抱える従業員が5人に1人となる」と予測しているという。高齢になった親の介護をするために、離職を選択する社員の年齢は40〜50代が多くなる。その年代の社員にはマネージャー層も多く、先の大手メーカーでは、「マネージャー層に限ると、3人に1人が介護離職予備軍になるかもしれない」ともいう。
「今後、介護業に従事する人は減少します。国の介護施策も在宅での介護にシフトしています。そのような環境にも関わらず、朝から晩まで会社に来るのは当たり前という考えのままでは、その会社の存続は難しくなるかもしれません。これまで在宅勤務といえば、“育児休暇を取る女性のもの”というイメージが先行していましたが、テレワークは仕事を続けたくても介護のために離職せざるを得ない男性のための制度にもなり得るのです」(田澤さん)
テレワークのための助成金を有効活用せよ
では、どうしたら雇用型在宅型テレワークを推進できるのか。田澤さんは「今のワークスタイルをそのままテレワークに当てはめてもうまくいかない。テレワークが成功するためには、在宅でできる仕事を『作る』ことから始めるべき」という。
具体的には、今の仕事がテレワーク環境でもできるようにアレンジしていくことだ。そのためには情報のデジタル化やクラウド化を行い、「いつもの仕事がどこでもできる会社」(田澤さん)に変化することが求められる。
実は、テレワークのためのデジタル化、クラウド化には、国や地方自治体から助成金の交付を受けられる。例えば、ある情報通信企業がテレワーク関連でサービスを導入した場合、助成金を利用したことで初期投資の300万円が約200万円に、年間のランニングコスト252万円(月額21万円)が約150万円になった事例がある。
助成金の多くは、機器そのものの購入だけでなく、企業内での新しい働き方の制度策定作業にも交付される。これを機に仕事のやり方そのものの見直しを考えてみるのはどうだろうか。
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