叱り方が分からない上司、それってアリ?:上司はツラいよ(2/2 ページ)
「バカヤロー!」なんて怒鳴る時代ではない。かといって何も言わないのもダメ。ではどう叱ればいいのか……。今回は部下から反感を買うことなく、言うべきことをきっぱり伝えられる“叱り方”を紹介しよう。
“恐怖”ではなく“要望”で相手を動かす
叱り方が分からない、相手に指摘する勇気がない――そんな人におすすめしたいのが「Iメッセージ」(Iステートメント)と呼ばれる表現方法だ。「私は……」と“私”を主語にして伝える話法である。
「そういうことをするな」「なぜそういうことをするのか?」という表現には、「(あなたは)そういうことをするな」「なぜ(あなたは)そういうことをするのか?」と必要以上に責めているようなニュアンスがにじみ出てしまう。これでは反感を買いやすい。
これを「(私は)そういうことをしてほしくない」と「私」を主語にして言い換えてみよう。“私は”こう思う、“私は”こうしてほしい――このように「私」を主語にすることで、きっぱりと自分の言うべきことを伝えられるし、抵抗を覚える可能性も少なくなる。人の思いや願いというものは、そう簡単に否定できるものではないからだ。
相手を叱る目的は「(ある言動が)悪いという自覚を促し、改善させること」だ。叱る相手に自分の要望を伝えることも忘れてはならない。「しないでほしい」という言い方には相手へのリクエスト(こうあってほしい)もさりげなく含められる。
叱る前にまず「私は」を主語にするとどう表現できるか、頭の中で組み立ててみるとよい。冒頭の例であれば、次のような表現で相手に指摘するのがよいだろう。
上司C: 「毎日ヒマで、いかに眠らないようにするかが最大の課題です(笑)」と日報に書いてあったけど、日報は上司や先輩が業務報告として読むもの。報告にふさわしいことだけを“ビジネス文書”として書いてほしい。“眠くなる”など正式な文書に書いてほしくないし、そういうことは自分の中で解決するようにしてください」
こう真顔でびしっと伝えればよい。ことさら怖い顔をしなくても、言葉が明快なら若手には伝わる。若手は、いつの時代も内心は自信がないもの。折れやすいと思われがちな若手でも「いいならいい、悪いなら悪いと言ってほしい」と思いがある。“バカヤロー”でも“スルー”でもなく、言うべきことは相手が受け取りやすい表現できっぱりと伝える――。これは上司や先輩の責任である。
著者プロフィール:田中淳子
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。
- 著書:最新の著書は「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)。「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)、「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)、「コミュニケーションのびっくり箱」(日経BPストア)など。
- @IT自分戦略研究所の連載「田中淳子の“言葉のチカラ”」はここから。
- シゴトに効く姉妹連載「そのひとことを言う前に」はここから。
- ブログ:「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」
- Facebook/Twitterともに、TanakaLaJunko
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