意外とあるある? 話を“聞けない”上司に贈る3つのコツ:上司はツラいよ(2/2 ページ)
相手の話を聞いているようで、実は聞けていない――。そんな上司は意外と多い。自分の経験や知識が邪魔をし、ろくに話を聞きもしないで相手にアドバイスしてしまうのだ。ついそんな態度をとってしまう人に有効な3つのコツがある。
相手の考えを理解する「3つのコツ」
部下: 最近、悩んでいるんです。
上司: 悩んでいる……。何が問題なのかな?
部下: クライアントの要望が厳しくて、ちゃんと対応できるか心配で。
上司: 対応できるかが心配なわけだね。
部下: はい。納期も厳しいのですが、新しい技術が入るようで。
上司: なるほどね。納期と新技術、悩みは2つ?
部下: どちらかというと新技術の方が……。
上司: 心配なのか。
部下: そうです。経験がない技術なので。
上司: 経験がないから心配……勉強が追い付くか不安ってことかな?
部下: 不安……。そ、そうです、不安なんです!
私が上司役に与えたアドバイスは以下の3つだ。
- 相手の言いたいことを最後まで我慢して聞いてみる
- 相手の言葉を繰り返して問いかける
- 具体的な話が出てくるまで質問を続ける
これだけでもコミュニケーションは大きく変わる。仕事とはそういうものだ、などと言う前に、まずは「相手にとって何が課題なのか」を探り、相手の言葉を繰り返したり、言い換えたりして理解しようとするのが大事だ。
この部下は「顧客の要望が厳しい」ことが心配なのではなく、「新技術を自分が学べるか」を不安視しているということが分かってきた。そして、「不安ってこと?」と言葉を変えたところ「あ、それです!」と部下の気持ちをより明確に表現する言葉が見つかったようだ。
このように相手の話をきちんと聞くことで本当の悩み、課題が見えてくることがある。このケースであれば、新技術の知識不足からくる不安と自信のなさが課題だと分かれば、有効な対処法を考えることができる。
敵は自分自身の“知識と経験”
上司や先輩はついついしゃべり過ぎてしまう。自分の方が経験が多く、分かっていることも多いとなれば口を出したくもなる。「そんなことはない。きちんと聞けている」と思っている人もいるだろうが、部下からもそう思われているかというとどうだろう。自信を持ってそう言えるだろうか。
「徹底的に聞く」――。言葉にすると簡単だが実践するのは意外と難しい。敵は“己の知識や経験”なのだ。途中で言葉を挟まず、最後まで部下の話を聞くには、訓練が必要である。
まずは「最後まで聞け!」「途中で割り込むな!」と自分に言い聞かせる。そして、部下や後輩の話をきちんとていねいに聞くことを心がける。
もちろん、部下も簡潔に話すよう努めるべきだ。しかし立場が上の人間は、さまざまな能力が高いと見込まれているからこそ、その立場にいるわけで、部下の話し方が下手だったとしたら、自らの聞き方でそれを補うのが務めだ。決して、自分自身の“意見やものの見方”に溺れないように。
著者プロフィール:田中淳子
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。
- 著書:最新の著書は「田中淳子の人間関係に効く“サプリ”」。ほかにも「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)、「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)、「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)、「コミュニケーションのびっくり箱」(日経BPストア)などの著書がある。
- @IT自分戦略研究所の連載「田中淳子の“言葉のチカラ”」はここから。
- シゴトに効く姉妹連載「そのひとことを言う前に」はここから。
- ブログ:「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」
- Twitter:@TanakaLaJunko
- Facebook:TanakaJunko
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