会計ソフトの雄、弥生が考える「新しいカスタマーサポート」のかたち:札幌カスタマーセンターで聞いた(2/3 ページ)
中小企業や個人事業主向けの会計ソフトとして圧倒的シェアを持つ弥生は、有償のカスタマーサポートにも注力している。高いスキルと知識が求められるスタッフ育成に向け同社がとった施策とは?
ソフトメーカーから「事業コンシェルジュ」に
岡本社長は常々、「ユーザーは業務ソフトを購入したいわけではない」「(自動化されて)会計という業務がなくなればいい」と自虐的に話す。ユーザーが弥生に求めるものは、会計業務を効率的に処理するための「手段」に過ぎないというわけだ。
それゆえカスタマーセンターに寄せられる問い合わせも単純なソフトの操作方法だけではなく、会計業務をどう処理したらいいのかという複合的なものが多い。しかし、具体的な節税対策の指南はできない(税理士法違反になるため、一般論の紹介レベルとなる)など、弥生のカスタマーサポートは問題の切り分けが非常に難しい業務なのだ。
例えば、確定申告の問い合わせでは「年度の途中で個人事業主から法人化した際に国保から社保に切り替えたが、社会保険料控除はどのように入力すべきか」といったもの、消費税改正に関する業務相談では「先方の都合で売上を4月計上にしたいが、取引は3月中なのでどのように処理したらいいのか」といった難易度の高いものが寄せられる。
「まずは、お客さんの相談内容を傾聴することが重要です」というのは、西部淳子センター長だ。ソフトの操作の質問のように切り出されてもよくよく話を聞いてみると仕訳の相談だったり、お客さんが説明を重ねていくにつれて自身の考えがまとまっていったりするからだ。そして、回答するまえに必ず質問内容を整理して繰り返す。こうすることで顧客満足度は着実に向上していく。
「まれに業務相談ではなく、お客さんの身の上相談のようになることもあります。サポートした人から感謝の手紙が届くことも多く、やりがいを感じます」(カスタマーセンタースタッフ)
スタッフのスキルアップのために積極的に正社員化
質問内容の難易度が高いため、スタッフのスキルにはソフトの操作だけでなく、法律や会計知識、業務知識を適切に回答できることが求められる。しかも間違えたらいけない。「札幌はコールセンターが多く、優秀な人材を集めやすい。新たに採用したスタッフには3日間の基礎研修を施したあと、各セクションで最低1カ月半の研修を受けてもらう。簿記や会計の知識がない人でも研修とフォローアップによって長期的な視点でスキルを蓄積できる環境を整えた」(岡本社長)。
また、雇用の安定化とさらなるスキルアップを実現するため、優秀なスタッフを積極的に正社員として採用する「正社員業務職」制度を2013年から始めた。初年度には38人が業務職となり札幌センターの正社員比率は20.3%となった。毎年約40人を登用する予定で2014年10月には同34.4%とする。この制度は離職率の低下にも効果があり、2013年度にはセンター全体で18.5%だった離職率が2014年度には15.4%に下がる見込みだ。
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