女性社員へのその配慮、実は“余計なお世話”です:上司はツラいよ(2/2 ページ)
「女性に夜勤させていいのか」「女性にどこまでやらせていいのか」――。言った本人にしてみれば“善意の発言”なのだろうが、実はこれは“間違った”配慮。女性部下の成長の芽を摘むことになりかねないのだ。
能力を伸ばす機会を、無意識のうちに奪っている
以前、大企業で役員を務める男性にこう教えられたことがある。
「『女性は早く帰っていいよ』『女性は宿直しなくていいよ』などと“女性であること”を理由に何かを『しなくていい』と“配慮”するのはよくない。なぜなら、彼女たちは、そうされることで、暗黙のうちに『私は〇〇をしなくていいと思われているのだ』『〇〇をするに値しないと考えられてしまうのだ』と刷り込まれ、結果として能力を伸ばすチャンスを自ら諦めたりする可能性があるからだ。『女性だから』という言い方は、結局差別になるんだよ。発言した当人は“善意に基づいている”のだろうけれど、これは間違った“配慮”だ」
――こう言われて、目からウロコが落ちた。「チャンスを奪う」「自分はその程度なのだと思わせてしまう」という可能性について考えたことがなかったので驚いたが、とても大切な視点だと思った。それでも何らかの配慮をする必要があると思うなら、それは、「女性」だからではなく、「働く人」として大丈夫か? という点にすべきだろう。
元来、「会社」社会は男性を中心として発展してきた側面があるため、女性に対する配慮が生まれてしまう背景は理解できる。しかし、女性は、「男性と同等に扱ってもらいたい」と考えている(もちろん、母性保護などは別の話だ)。「女性の部下に何か気を付けることはありますか?」と聞く男性上司は、女性側の本音が分からないから不安なのではないか。
どうしてもひっかかるのなら、きちんと話し合えばよい。「同じ条件の採用なのだから、男性も女性も“区別”せず、同じように扱いますよ」ときちんと伝える。女性に過度の配慮をするのではなく、自分の考えを伝えることが上司のすべきことである。
とはいえ、当世、女性に厳しく接すると「セクハラだ、パワハラだ」と言われるのではないかと心配し、“配慮”しすぎても「差別になる」と言われる。今の上司はツラい……いや、難しいバランス感覚を要求される立場なのだろう。
著者プロフィール:田中淳子
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。
- 著書:最新の著書は「田中淳子の人間関係に効く“サプリ”」。ほかにも「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)、「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)、「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)、「コミュニケーションのびっくり箱」(日経BPストア)などの著書がある。
- @IT自分戦略研究所の連載「田中淳子の“言葉のチカラ”」はここから。
- シゴトに効く姉妹連載「そのひとことを言う前に」はここから。
- ブログ:「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」
- Twitter:@TanakaLaJunko
- Facebook:TanakaJunko
関連記事
- 「上司はツラいよ」最新記事一覧
- 今、求められるリーダーになるために
- “オマエの態度、面白くないんだよ”――年上部下にこう思われてしまったら
年上の先輩が、仕事の上では部下になる――。最近では、こんな関係も珍しくなくなってきたが、両者の関係はなかなかうまくいかないようで……。こんなとき、年下上司はどうすればいいのか。 - 「いいからやれ!」が通じない時代、上司に必要とされるスキルとは?
「指示したことは四の五の言わずにやってほしい」と思う中高年上司と、「仕事は目的を理解してから手掛けたい」と考える若手社員。両者のすれ違いはどうして起こるのか。そしてその解決法は? - 女性蔑視の舛添新都知事にオススメしたい、「男女が逆転した世界」の動画
20年ほど前、女性の政治参加について「女は生理のときはノーマルじゃない。異常です。国政の重要な決定を判断されたくない」と言い放った舛添要一氏。女性への意識は今も変わっていないのだろうか? - オトコの美容に女性専用車両……あなたは賛成しますか?
あなたは成人年齢18歳に賛成しますか? 博報堂生活総合研究所の調査によると「賛成」という人は30.7%、一方「反対」が35.2%。男女別で見てみると、賛成派は男性、反対派は女性がそれぞれ多かった。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.