「このままではダメだ」という危機感を抱く:明日を変える働き方(2/2 ページ)
組織の中で、誰も危機感を感知することがなければ何も起こりません。変革の第一歩は、リーダーが危機感を他の誰よりもディープに感じることから始まるのです。
5. 変革の「抵抗勢力」に対処する
第五段階は、変革の「抵抗勢力」に対処することです。「その方向への変革だと、自分の部署にはプラスにならない」と反対ののろしを上げる人たちがいるかもしれません。また「そんな話は聞いていなかった」とむくれる人たちも出てくるでしょう。その人たちと話し合い、説得し、同意してもらう必要が出てくるのです。
6. 進捗を讃える
少しずつビジョンに向かって動きはじめたら、その進捗を讃えることも大切です。変革への抵抗にも負けずに、一歩一歩着実に進むのは大変なことです。それだけに節目節目でねぎらいがないと、チームのメンバーは疲弊して変革の歩みが遅くなるか、そこで止まってしまいかねません。
7. 早まって「勝利宣言」をしない
第七段階で大切なのは、ビジョンの実現、完成にはまだ至っていないのに、早まって「勝利宣言」をしないことです。「千里の道も一歩から」といいますが、まだ500里しかきていないのに、「これでもう大丈夫」とリーダーが宣言してしまうと、改革は見事にそこで止まります。
8. 変革の大切さを組織に埋め込む
いよいよ最終段階では、変革の大切さを、組織の理念や文化、人事の制度に実際に埋め込んでいくことです。万物流転の時代には、変化に取り組むこと自体が組織の規範となります。またそれを推進する人事制度を練り上げないと、「この会社の歴史では、あのときの1回だけは変化できたな。今はもうムリだが……」ということになってしまいます。そうならないために、変革型のリーダーは、変革そのものが大事であることを、企業の組織文化に植えつけなければならないのです。
変化しない組織は時代の流れとともに腐敗する
今では、「先に危機感がないと変革ははじまらない」という見方に対して批判もあり、もっとプラス思考でスタートする組織開発の方法も提唱されるようになっています。
また、繰り返し変革をいとわないという意識のDNAを組織に埋め込まなければ、「わが社はあのとき1回だけはうまく変われたなぁ」と昔話に終わってしまいます。変化しない組織は必ず時代の流れとともに腐敗していきます。
経営者には、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)の創業者の松下幸之助氏や本田技研工業株式会社の副社長を務めた藤沢武夫氏のように、「日に新た」「万物流転」という言葉を繰り返す人が多い理由がこれにあるといえます。
この8つのプロセスは、組織改革の研究者の間ではよく知られているモデルで、私も研究論文の中で紹介したことがあります。変革が、危機感というマイナスの契機がないとはじまらないように想定している点に、このモデルに対する批判があります。
しかしそのことを踏まえた上で、ここで大切なのは、改革を現実の組織で行うときには、「どうすれば改革ができるのか」ということよりも、「何をしたら改革がストップしてしまうのか」という要因を知っておくことです。この8つのプロセスは、それをチェックするための指標として、とても優れているように思います。
20〜30代のみなさんも、自分たちの世代では組織変革は無理……などと、最初からあきらめず、組織と積極的にかかわり、さらには変革を起こす方法も考えてみてください。
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