部下に話しかけるのも上司の“仕事”――あなたはできていますか?:上司はツラいよ(2/2 ページ)
「なんかうちの上司、いつも“話し掛けるなオーラ”が出ていて相談できなくて……」。部下がこんな愚痴を言い始めたら要注意。そんなときに上司がとるべき行動は。
マメなコミュニケーションが部下を成長させる
部下をうまくその気にさせ、組織を挙げて成果を出すために、コミュニケーションが果たす役割は大きい。「育て上手な上司(マネージャ)が、部下に積極的に声をかけている」ということは、経験学習(経験から学ぶという考え方)の研究で知られる北海道大学の松尾睦教授の調査でも顕著な傾向として表れているという。
部下は、自分から特に話したいことがなかったとしても、上司から話しかけられれば悪い気はしないし、話が盛り上がればもっといろいろなことを話しだすものだ。
上司: 今、何やってるの?
部下: 今は、このプロジェクトに関わっていて、来週、お客様に一次提案に行くことになっています
上司: そうか、あのクライアントの担当者は、企画を見る目がシビアなことで有名と聞いているけど
部下: 実は、話の持って行き方で迷っていることがあって……。相談してもいいですか?
――と、こんな具合に、悩みや課題の解決を手伝うことができる。こうしたコミュニケーションによって部下は、“上司に聞きに行くほどでもないが悩んでいる”小さな問題を早々に解決できるようになり、仕事をスピードアップできるだろう。
さらには「最近、クライアントからこんな話を聞きまして……」と、上司にとって有益な情報を教えてくれるかもしれない。上司が常に、現場の動きに興味を持って耳を傾けると分かれば、部下はより現場の声に敏感になり、積極的に情報収集をするようになるだろう。こうした活動を「頑張っているね」と上司に認められれば部下のやる気は向上し、もっと努力したり、前向きに取り組んだりするようになる。こうしたコミュニケーションの積み重ねは、部下の成長につながるはずだ。
たいていのマネージャがプレイヤーを兼ねる今の時代、プレイヤーとしての仕事をこなすだけでもツラいのはとてもよく分かる。しかし、部下を抱えるという役割を引き受けた以上、部下が近寄ってくるのを待つだけでは部下は育たない。たまには席を立ち、自分から動いて、どんどん部下に話しかけていくべきなのだ。
著者プロフィール:田中淳子
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。
- 著書:最新の著書は「田中淳子の人間関係に効く“サプリ”」。ほかにも「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)、「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)、「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)、「コミュニケーションのびっくり箱」(日経BPストア)などの著書がある。
- @IT自分戦略研究所の連載「田中淳子の“言葉のチカラ”」はここから。
- シゴトに効く姉妹連載「そのひとことを言う前に」はここから。
- ブログ:「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」
- Twitter:@TanakaLaJunko
- Facebook:TanakaJunko
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