会議中にあえて「ムダ話」をする:マッキンゼー流“できる上司”の習慣
会議の冒頭に「ムダ話」をすることは、決して無駄ではありません。参加者の心を整え、話しやすい雰囲気をつくることができるのです。
集中連載「マッキンゼー流“できる上司”の習慣」について
本連載は、大嶋祥誉著、書籍『マッキンゼーのエリートが大切にしている39の仕事の習慣』(アスコム)から一部抜粋、編集しています。
「成功したければ、今すぐ、習慣を変えよ!」
どんなに高名なシェフでも、客を3時間待たせるわけにはいかない。数分、数十分の間に、最高の料理を出す必要がある。
世界最高のサッカー選手も、与えられる90分の試合で結果を出さなくてはならない。点が取れないからといって「あと10分延長してほしい」とは言わない。
プロフェッショナルとは、限られた時間の中で、最高のパフォーマンスを出す人たちのことだ。クオリティだけを求めるのではなく、また、スピードだけを求めるのでもない。その両方を追求しながら最高のバリューを出す。これが一流の一流たるゆえんだ。
本書では、世界最高峰のコンサルティングファームで大切にされている39の仕事の習慣を紹介。マッキンゼー流で、仕事のクオリティとスピード、両方を身につけよう。
「チェックイン」で参加者の心を整える
会議は、質が高くて時間が短いほうがよいことは確かです。しかし、私はそれだけを追求するのは違うと感じています。
例えば会議冒頭の10分を使って、上司である主宰者が「みんな、最近の調子はどうですか?」と聞き、それぞれが近況を報告するような時間があったほうが、時間のムダのようでいて全体のクオリティや士気が上がるのではないかと思うのです。参加者にとって快適な場をつくったほうがいい会議ができるはずです。
現在、私は経営者のコーチングをビジネスの1つにしています。それぞれのセッションにおいて、本題に入る前には必ず「最近はいかがですか?」と質問します。コーチ同士が集まる場合はお互いに質問し合います。
このダンドリを、専門用語で「チェックイン」と呼びます。チェックインによって、次の2つの効果が期待できます。
- 議論の冒頭に「個人の事柄」を出し合うことで議論への集中度合いを高めることができ、その結果、有効な結論が早期に出る。
- 互いに心の内を出し合う「安全な場」をつくり、話しやすい雰囲気をつくることができる。
話の中身は簡単です。「現在気になっていること」「最近の自分のできごと」などを発表し合います。話のネタは仕事関係でもプライベートでも何でもOKです。
いまこの瞬間、気になっていることをたずねる、あるいは話すだけでいいのです。
「少し涼しくなってきたんで、ジョギングをはじめたんです」
「ちょっと風邪を引いてしまって……」
「子どもを叱りすぎてしまいました。自分で自分が見えなくなるものですね」
聞いた側は、その内容に対して解決策を模索したり、アドバイスをしたりする必要はありません。「そうですか」という受け取りの言葉があればいいだけ。これだけで、みんなの気持ちが不思議と整うものです。会議の冒頭では、みんなの「心を整える」ことが大切なのです。
この「チェックイン」のあと、会議の「目的とゴールイメージ」を確認して「では、はじめましょう!」と本題に入ればいいのです。
「チェックイン」などという言葉を知らなくても、自然に似たようなことができている人は少なくありません。
ただし、本題に入る前に近況を聞いたら「昨日妻が交通事故に遭って入院してしまって……」なんて話題になれば、その後のミーティングで建設的な話ができるわけがありません。仕切り直したほうがいいかもしれません。
チェックインの反対として、「チェックアウト」もあります。
話を終える前に、今回の会議やミーティングの評価や課題、反省点などを短い言葉で出し合うのです。次回に向けてモチベーションが高まりますし、関係性も深まります。
主宰者は、参加者をとにかく認める
社内の会議やミーティングで、上司の立場の人にぜひ心がけてほしいのは参加者を意識的に「認める」こと。認めることの大切さは以前にも紹介しました。もう一歩進めれば、参加者同士が互いを認め合うことです。
私は、ときどき認め合うことだけを目的にしたミーティングがあってもいいと思っています。参加者1人ひとりに対して、ほかの参加者全員が3分ほどでよかったところや感謝していることを伝えるのです。
会議という視点だけで考えれば、まったくの時間のムダに思えるかもしれません。ただ、大変強固なチームビルディングになることは確かです。結果としてほかの会議やミーティングだけでなく、チームの仕事全体のパフォーマンスや生産性が上がります。
マッキンゼー流“できる上司”の習慣 その8
豊かなムダ話が会議のクオリティを高める。会議にはお互いを「認め合う」意識で関わろう。
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