聞き手を不安にさせる話し方:表現のプロが教えるスピーチの兵法(2/2 ページ)
「この人の話、なんか信頼できない」「聞いていると不安になる」――。せっかくいい話をしていても、話し方ひとつで台無しになる場合があります。そんな悪い話し方のクセを直す方法を紹介します。
短い文を積み重ねて間を十分に取る
それにもかかわらず、なぜ語尾を上げる話し方になるのかというと、内容を考え言葉を選びながら話すからです。
これを改善するには、文節ごとに区切って話すのではなく、「〜です」「そして、〜しました」と短い文を積み重ねる形にして話すとよいでしょう。
その際、文と文の間で十分な間(ま)を取るのです。その間で、次に話す内容を考えたほうがよほどスマートです。間を取ることを怖がる必要はありません。
また、語尾が上がらないまでも同じ高さになっているケースもあります。段階的に音が下がっていくべきなのに、音が下がり切れていないのです。そのため、話の切れ目や区切りがはっきりせず、発言の内容も曖昧なものに聞こえてしまいます。
さらに、語尾に近づくにつれて小さな声になり、何を言っているのか聞きとりにくい場合もあります。例えば、言葉を省略したように語尾が消えてしまうのもこの一例です。本来「〜というのはいかがですか?」と言うべきところ、「〜というのは……?」となってしまうのです。これでも意味は通じますが、非常に頼りない印象を与え、ビジネスの場では好ましくありません。語尾が聞こえにくいことで、自信がないようにみえてしまうのです。
声そのものが魅力的な低音である必要はありません。「私は、会社を経営しています」の「しています」の「す」が自分が出せる一番低い音になっていればよいのです。語尾が、きちんと下がっているかどうかがポイントです。
信頼性を高めるためのトレーニング法
では最後に、低音がよく響くようになるためのトレーニングをご紹介しましょう。このトレーニングは、自分が楽器になったつもりで実践してみてください。
まずは、自分が出せる一番高い声で「あー」と言ってみます。金切り声や悲鳴のようになってもかまいません。頭のてっぺんから声を出す感覚です。声を出したあと頭がクラクラするくらいの気持ちで高い声を張り上げましょう。
次に、自分が出せる最も低い声で「あー」と言います。つぶれた声でかまいません。喉の奥から絞り出す感覚です。そして最後に、一番高い声から一番低い声までなめらかに下げていくのです。ピアノの鍵盤を、高音部から低音部までゆっくり滑らせる感じです。
このトレーニングは、ストレス解消にもつながります。
自分の声域をフルに使うことで、同じ音階ばかり使ってきたあなたの喉が、自由に開放されます。自分でも知らなかったすてきな声に出会えるかもしれませんね。
今月のポイント
考えながら話すのではなく、文章を短くして文と文の間(ま)で考える。1文のうち冒頭の音を一番高く、文末を一番低くする。
著者プロフィール:矢野香
キャスター歴17年。主にニュース報道番組を担当。大学院では心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究。現在は、政治家・経営者・管理職を中心に「信頼を勝ち取るスキル」を指導。著書に『その話し方では軽すぎます! 〜エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』がある。著者オフィシャルサイト
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