Big Pipe:ブロードバンドのアクセス回線,その市場規模は?(1/2)

【国内記事】 2001年8月17日更新

 ADSL事業者のニュースが毎日のように誌面を騒がせている。Yahoo!BBの衝撃の進出ガーネットの撤退アッカ・ネットワークスの8Mbpsのフルレートサービスの今秋開始発表……。それ以外にも,FTTHや無線LANなど,ブロードバンドのアクセス回線事業が本当に熱くなっている。今回は,そのブロードバンドアクセス回線の加入者予測を提示してみたい。まず,ADSL事業以外にどのようなアクセス回線があるのか? 図1にその全体像を示した。

【図1 アクセス回線の全体構造】
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フルレートに移行するxDSL

 メタル回線を利用したものとして,xDSL事業がある。xDSL事業にはADSLSDSLHDSLVDSLの4つがある(図2)。SDSLは上り,下りとも同じスピードであり,企業向けに使われやすい。めたりっくグループが手がけている。VDSLは,下りの伝送速度が速いものの,伝送距離が短い。ホテルなどで利用されるケースが目立つ。今後,FTTC(Fiber to the curb)が普及し,光回線が開放されれば,将来的に一般家庭向けにも提供される可能性は高いだろう。一方,伝送速度やモデム調達の都合からコストパフォーマンスに優れているのがADSLである。簡易型(G.lite)とフルレート型(G.dmt)があり,Yahoo!BBがフルレート型で提供することを受け,ほかのADSL事業者もフルレート型へシフトしようとしている。

【図2 DSL一覧】
ADSL フルレート:下り6〜8M、上り640Kbps
簡易型(ハーフレート):下り1.5M、上り512Kbps

・ ISDNとは併用不可。アナログ電話回線を利用。
・ NTTの電話局からユーザー宅間の一部に光ファイバーが敷設されている場合は利用不可。
・ 伝送距離5.4キロ
・ 一般ユーザー向けには下り512K、上り224Kbpsでの提供から、下り1.5M、上り512kでの提供が主流に。
・ DSL技術は既存電話線を利用して500Kbps以上の高速環境を安く提供できる点で新たに引き込まなければならない他の有線よりエリア拡大が容易。
・ 線の途中が光化されていてもADSLを提供できるように開発を政府が後押し。
・ どの事業者も2002〜3年以降は光ファイバー網も手掛ける方針。一方でADSLのフルレート化、VDSLへの移行による高速化を進める。
SDSL 1対で最大1.6Mbps
・ 伝送距離3キロ
HDSL 2対で最大2Mbps
・ 伝送距離3.6キロ
VDSL 下り最大62Mbps
・伝送距離は300〜1500mと短いため加入者線の途中に機器を設置して光ファイバーで通信事業者の局に中継する。
・ プリンスホテルがVDSLをホテルの客室に導入。

大本命といわれるFTTH

 次に光ファイバーである(図3)。既存のFTTH(Fiber to the Home)サービスには,NTTの「Bフレッツ」と新興通信ベンチャーのユーズコミュニケーションズ(有線ブロードネットワークスの子会社)があり,ブロードバンドネットワークの大本命といわれている。また光ファイバーをユーザー宅近くまで引き,そこからは別の線を利用するネットワーク構成のFTTCがある。電力会社が電灯線を利用し,3Mbpsの高速通信を実現するために研究中だ。今のところ,家庭内機器のインバーターなどとの干渉の問題があるため,実際は100Kbpsが精一杯である。

【図3 光ファイバー一覧】





FTTH 数M〜10Mbps→100Mbps
・ FTTH(Fiber to the Home)。加入者宅まで光ファイバーを敷設して高速伝送を実現するネットワーク構成を指す。
・ 各戸への引き込みは敷設コストが高い。光ファイバーの周辺機器が高額である。
・ 提供事業者によってネットワーク構成や、利用技術、サービス内容、エリアなど相当異なる。・ ユーズコミュニケーションズはLAN技術の拡張でネットワーク構築。NTTに比べ端末など安く済む。
・ 光ファイバーのアンバンドルやユニバーサルサービス義務などの検討によっては光ファイバーが広く提供される道筋になる。
FTTC 電灯線利用:3Mbps
(Fiber to the curb)光ファイバーをユーザー宅近くまで引き、そこからは別の線を利用するなどのネットワーク構成。
・ 九州電力は自社の配電線網と家庭内に配線済みの電灯線に電力線モデムを設置する方法で高速通信を実現する。

潜在能力の高いCATV

 同軸ケーブルを利用しているのはCATVのインターネットサービスである(図4)。一般サービスでは500K〜数Mbpsで提供されており,現在最も普及しているブロードバンドアクセス回線である。また,CATV局から途中まで光ファイバーで配線し,光電気変換装置を経由して家庭には同軸ケーブルで引き込むHFCという形態では,仕様上は下り50Mbpsまでの提供が可能となる。だが,既存の同軸ケーブルをHFCにアップグレードするコストは高く,既存CATV事業者が負担することは今後の競争条件では厳しいものがある。NTTの光ファイバーを利用するか,NTTがCATV事業に参加してくる可能性が高い。

【図4 CATVインターネット接続サービス】





CATV 下り30Mbps(一般サービスでは500K〜数Mbps)
・ 集合住宅地では提供不可の場合がある。
・ 電話回線ではないのでユーザーは一定料金を支払えば常時接続可能。
・ 現時点で最も安くブロードバンド環境を提供。・ 現時点のブロードバンドで加入者が圧倒的に多い。
・ インターネットサービスに加えBSデジタル放送などの再送信が加入者を後押しする。
・ 既存の同軸ケーブルをHFCにアップグレードするコストは比較的高い。
CATV HFC 下り50Mbps
HFC(hybrid fiber coax)はCATVの構成方法の1つ。CATV局から途中まで光ファイバーで配線し、光電気変換装置を経由して家庭には同軸ケーブルで引き込む。

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