アナリスト趙章恩氏に聞いた“韓国ブロードバンド最新事情”

無線サービスの開始を契機に事業者の値引き合戦が復活?「韓国インターネットの技を盗め!」の著者,趙章恩(チョウ・チャンウン)氏に最新の韓国ブロードバンド事情を聞いた。

【国内記事】 2001年10月1日更新

 8月末に出版された1冊の本が市場関係者の間で注目を集めている。韓国のIT業界とそのビジネスモデルを通じ,日本との違いを率直に描き出した「韓国インターネットの技を盗め!」(アスキー出版局刊行)だ。そのプロモーションのために来日した著者の趙章恩(チョウ・チャンウン)氏に,最新の韓国ブロードバンド事情を聞いた。

趙章恩氏は,3歳から高校卒業まで韓国と日本を行き来する生活を続け,両国のインターネットビジネスに深い造詣を持つ。現在は雑誌や日刊紙などでITコラムニストとして活躍中

無線で再燃した値引き競争

 アクセス回線の事業者間競争が再燃している。韓国ではADSLとCATVを中心に価格競争が激化していることは既に書いたが,8月上旬に韓国を訪れた折には,総じて低価格ながらも均衡は保たれているように見えた(8月10日の記事12を参照)。しかし,趙氏によると,ハナロ通信が新たに始めたWLLサービスが発端となり,激しい競争が始まったという。

 今回は,価格競争というよりも“値引き競争”だ。「WLLのサービスを申し込むと当初2カ月間は無料が基本。その上,1万円程度のキャッシュバックもある」(趙氏)という。ただし,このキャッシュバックは公式な価格表に現れるものではない。

 日本では携帯電話を販売する際に「1円」といった価格表示を見ることができるが,仕組みはこれに似ている。キャリアが,新規加入者1人につきいくらの「販売促進費」という形で販売店側にお金を渡す。販売店は,その分端末を安くして加入者を獲得する。キャリアは通信料金で利益を得,販売店側も端末価格と販促費の差額を手に入れる。

 趙氏によると,WLLのキャッシュバックでは,営業マンが本来なら事務所や自分の懐に入るはずの販促費をユーザーに還元するのだという。実入りは減っても営業成績は上がるわけだ。さらに,サービスに加入すると「NICやルータなどの機器は,ごく当たり前に付いてくる」(趙氏)という状況で,事業としての健全さはともかく,一ユーザーとしては羨ましいかぎり。もっとも,ハナロ通信のWLLサービスを早速試してみた趙氏によると,接続性は「いまいち」だったらしい。

新婚さんに人気の「サイバーマンション」

 韓国では,ブロードバンドの引かれていないマンションなど見向きもされない……というよりも,都市部ではほとんどない。とくに最近では,入居者同士のコミュニケーション(掲示板)やキャッシング,ショッピングといった各種の付加サービスを含んだ「サイバーマンション」と呼ばれる物件に人気が集まっているという。入居者がインターネット経由で地元商店に注文や問い合わせを行えるケースもあり,会社からスーパーに発注しておけば,帰宅時にはマンション内の決まった場所に商品が届いているというサービスが人気だ。こうしたサイバーマンションは,新婚の夫婦が入居するケースが増えており,「一種のステータスになっている」(趙氏)。

 サイバーマンションはさらに進化しそうだ。趙氏によると,地元の商店が店内にCCDカメラをおき,入居者に店内の様子を見せながら,店員が1対1で「ご用聞き」するサービスも登場する予定だという。

 なるほど。共働きの夫婦はもちろん,スーパーが営業している時間に帰れない独身者にも便利だ。日本のマンションデベロッパーや商店も頑張ってほしい。

日本のHPが人気

 韓国の人たちは総じてメジャー指向だ。したがって,個人ユーザーの作成するホームページも,小綺麗で,かつ読者としっかりコミュニケーションのとれるものでなければならない風潮があるらしい。「いわゆるゴミサイトはダメ。日本のサイトに多い,自分の趣味に走ったり,特定の読者を対象としたホームページを作る人は少ない」(趙氏)。また,インターネットユーザーの低年齢化に伴い,最近では小学生のホームページが増えてきた。

 しかし一方で,面白い現象も起きている。趙氏によると,最近では「翻訳サイトを使い,日本のコアなサイトを閲覧する人が増えている」という。日本のホームページには,偏っていても豊富な情報を掲載しているものが少なくない。同じ趣味を持つ韓国のユーザーにとって,これが「新鮮に見える」(趙氏)ようだ。

タイムマシン経営の危機?

 最後に,8月に韓国レポートを掲載したとき,読者から寄せられた質問を趙氏にもぶつけてみた。それは,「ブロードバンドのキラーコンテンツは何?」というものだ。頻繁に韓国と日本を行き来する同氏なら,何かしらヒントを持っているかも知れない。

 しかし,予想に反して回答は「ない」。オンラインゲームやビデオチャットを挙げることもできるが,次世代コンテンツは「韓国企業も探しているところ」だという。

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[芹澤隆徳,ITmedia]

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