やっぱり日本ではAnnex C? ISDN混在でYahoo! BBとAcca 8Mbpsを両方導入してみました今もっとも熱いブロードバンド接続といえば8MbpsクラスのADSL。ただ,気になるのは,日本仕様であるAnnex C/G.dmtが北米仕様のAnnex Aより本当に速いのかという点。ここはひとつ,同一の条件で比べてみよう。
今もっとも熱いブロードバンド接続といえば8MbpsクラスのADSL。火をつけたのはYahoo! BBだが,10月にはアッカ・ネットワークス,11月にはイー・アクセスがISDNとの干渉に強いAnnex C/G.dmt方式での8Mbpsサービスを開始した。 ISDNの普及率が高い国内において,日本仕様であるAnnex C/G.dmtはYahoo! BBの採用した北米仕様のAnnex Aより本当に速いのだろうか。アッカやイー・アクセスのフィールドテストデータも出たが,ここはひとつ,同一の条件で比べてみよう。
Yahoo! BBとAcca 8Mbpsを導入今回,テストに使った筆者宅には,既にYahoo! BBが開通し,通話用としてINS64も引き込まれている(9月17日の記事を参照)。ここに,Annex C/G.dmt方式を採用するAccaの8Mbps ADSL接続(ISPはso-net)をさらに導入したわけだ。 回線で見ると,アナログ2回線,INS64×1回線の計3回線が引き込まれた格好。屋内までの引き込みも3回線まとめて行われている。INS64とのADSLの混在に際し,引き込み個所を変えるといった特別なことは行っていない。 筆者宅は,NTT池上局(東京都大田区)から直線で約1.1キロ。正確な路線長は解らないが,建物が幹線道路に面していることもあり,大きな差はないと予想される。ちなみに今回Acca 8Mbps ADSLサービスを導入した電話回線は以前,「フレッツ・ADSL」(1.5Mbps)を利用しており,このときは実測で下り1.1Mbpsほどの通信速度だった。1.5Mbps ADSLサービスから8Mbps ADSLサービスへの乗換えを考慮している人には,ちょっとした参考になるだろう。
Acca 8Mbps導入までの経緯は以下の通りだ。
モデムに同梱されていた書類では,正式開通日は11月22日となっていたが,モデムが到着したときには既に利用できた。正式申込みから開通までほぼ2カ月かかったわけだが,池上局の開局が10月21日で,そこから開通まで1カ月。so-net/Acca 8Mbpsはかなり申込みが集中していたようなので,比較的順調だったといえるだろう。 Acca 8Mbps ADSL接続では,ADSLモデムはレンタルのルータタイプのみ。筆者宅に届いたADSLモデムはNEC製の「ATUR110RC」で,IPマスカレード+NATによる標準的なブロードバンドルータ機能を持つ。特定のネットワーク対応アプリケーションで必要となる静的ルーティング機能なども備えた。なお,Acca 8Mbps ADSL接続では富士通製のADSLモデムも採用している。
同一環境下でのAnnec AとAnnex C今回,Annex CのAcca 8Mbps ADSL,Annex AのYahoo! BBの接続環境はほぼ同一。利用する電話回線は屋内ではほとんど同じ状態で引き回しているし,壁面のモジュラーコネクタからADSLモデムまでも特別なケーブルなどは利用していない。もちろん電話局からの経路上で2つの電話回線が同一カッド内にあるかどうかまでは解らないが,比較用の環境としては,まずは問題ないだろう。 それぞれのモデムでリンク速度を確認したところ,Annex Cは5472Kbps/896Kbps(下り/上り),Annex Aは5024Kbps/864Kbps(下り/上り)となり,下りではAnnex Cの速度が約9%速かった。
もちろん,モデムの個体差も無視はできないが,もともとAnnex CとAnnex AはISDNの干渉がない限り,同一の環境ならほぼ同一の速度となる(理論値)。9%という明白な速度差は,Annex Cの方がISDNからの干渉に強いという証明だろう。また,ノイズマージンに関してもAnnex Cの方が7dbと高く,対ノイズ性も高いということになる。
思ったよりは差が小さい?逆に,この結果は,意外とAnnex CとAnnex Aの差がないと捉えることもできる。例えば,イー・アクセスの公開している実験データでは,線路長1.5キロでAnnex CとAnnex Aのリンク速度は倍まで開いており,線路長が2.5キロになるとAnnex Aはリンクすらできなくなっている。 しかし,これはISDNからの干渉が非常に強い状況をシミュレーターで再現したものであり,あまり現実には則していない。 NTT東日本が公開している情報(http://www.ntt-east.co.jp/info-st/subs/koho/index.html)では,2001年9月末現在でもアナログ回線とISDN回線の比率は5対1程度だ。オフィス街などではISDN回線の比率がより高くなる可能性はあるが,経路上の同一カッド内で半分以上がISDN回線という状況はそれほどないだろう。したがって,筆者の所で確認できた9%というリンク速度の差は,住宅地などでは現実的な値と見ていいはずだ。 ADSLの急速な普及などもあり,ISDNへの移行にはストップがかかりつつある。したがって,今後,経路上で急速にISDN回線からの干渉が増加するといった可能性は低くなったといえる。Annex Cは,確かにISDNからの干渉に強いが,例えば同一のロケーションでAnnex CとAnnex Aでリンク速度が倍異なるということは滅多にないだろうし,将来的にもそうなる可能性は低いだろう。 なお,Yahoo! BBのモデムは,非公開のメンテナンスモードでないとリンク速度などを確認できないことをお断りしておく。
リンク速度の差がそのままスループットの差にでは,実際のデータ転送速度がどの程度違うのか,代表的な速度計測サイトを利用して計測してみることにした。公平になるよう,Windows 2000をインストールした2台のPCを利用し,それぞれAcca 8Mbps ADSL,Yahoo! BBを占有する状態にして同時に計測を行っている。
全体的にいえるのは,リンク速度の9%という差が,そのまま反映されているということだ。計測サイトごとにデータ転送速度が高め,低めになるという傾向はあるのだが,どの計測サイトでもAcca 8Mbps ADSLの方が10%前後速い。 もちろん,実データ転送速度はADSL以外の部分の影響も大きく受ける。電話局のDSLAMからISPまでのバックボーン,さらにISPからインターネット網への接続速度なども大きな影響を与えるからだ。ただし,今回の結果は明らかにリンク速度がそのまま反映されていることは間違いないだろう。少なくとも,現状ではso-net/Acca 8Mbpsという組み合わせ,Yahoo! BBともに,DSLAMからインターネット網まで十分なバンド幅が確保されているようだ。
もう少し期待していたが……正直なところ,Acca 8Mbpsにはもう少し期待していた。Annex AのYahoo! BBで3.5Mbps程のスループットが確保できていたので,Annex Cならばもしかしたら5Mbps位は出るのではないか? という希望的観測を持っていたからだ。8Mbpsフルとはいわなくても7Mbps程度でリンクできれば実スループットとして5Mbps程度となるはずだからだ。 希望的観測は裏切られたものの,ISDNが混在する環境ではやはりAnnex Cのほうが有利なことは間違いない。筆者の環境では10%の速度向上に留まったが,経路上でISDN回線が混在する可能性の高いオフィス街などではAnnex Cの優位性がさらに強く発揮される可能性がある。 Annex Aを否定するつもりはないが,ISDNとの干渉に不安材料の多い場合は,やはりAnnex CでのADSL接続サービスを選択する方がベターとなるだろう。逆に,1割程度の速度差ならば……と,価格を考えてYahoo! BBを選択する人もいるだろう。個々の条件や環境を考慮して,サービスを選ぶことが重要になる。今回の試みは1つの例でしかないが,参考にしてもらえれば幸いだ。
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