BigBlueが「カレーの東洋」に学んだこと「ロジックが通れば成功する,というのは間違い」。日本IBMは,有料のホットスポットサービスに対してこう指摘する。カレーの東洋に学んだ,IBM流のホットスポット拡大法とは?
ホテルのロビーや飲食店を中心に広がりをみせるホットスポット。NTTコミュニケーションズ(HI-FIBE)やモバイルインターネットサービス(MIS)など,いくつかの事業者は今春にも有料モデルへ移行しようと計画している。しかし,日本アイ・ビー・エム(IBM)は,こうした動きに懐疑的だ。
「Powerd by IBM」印のスポットは,京王プラザホテルやJALのサクララウンジのような公共性の高い場所に加え,個人経営の飲食店が目立つ。ブロードバンドカレーで一躍有名になった秋葉原の「カレーの東洋」や代官山の「CAFE FOGLIO」(カフェフォリオ)などだ。いずれも,担当者と店側の個人的な結びつきから話が動き出したという。
商売にすると失敗する?IBMがホットスポットを推進する目的は,接続サービスではない。「ThinkPad s30」など無線LAN機能搭載ノートPCの「プロモーション」だ。当初からサービスを事業化する意志はなく,製品展開と同期してホットスポットを広げることで,無線LAN市場全体を活性化させる狙いがある。このため,基本的にユーザーは無料&無登録(別記事参照)で利用できる。 ブロードバンドカレーの“仕掛け人”といわれるIBM PC製品事業部の竹村譲氏は,ホットスポットの有料化について「ロジックが通れば成功する,というのは間違いだ」と手厳しい。その根拠は,設備投資だ。 例えば,IEEE 802.11bのアクセスポイントは価格がこなれ,安いものであれば1万円程度で手に入る。これを低価格のADSLと組み合わせると,実に初期投資額は数万円,月額2〜3千円のコストでホットスポットが出来上がる。 しかし,認証サーバや課金システムを加えると,とたんに桁が増え,ビジネス化しても損益分岐点が遠くなってしまう。IBMの試算によると,キャリアグレードのシステムで5000〜1万のAPを設けた場合,損益分岐点に達するには5万人程度の会員が必要だという。 もっと分かりやすい例がある。同社では,旅館などに置かれているTVのように,100円玉を入れると決まった時間だけ無線LANを使用できる端末を制作し,喫茶店のテーブルなどに設置することを検討した。 しかし,実際の設置工事にはテーブルや壁の加工も必要なことが分かり,その工事費などを合わせると,1台あたり30万円程度のコストがかかると判明。1時間100円として見込み利用者数などを試算したところ,「ペイするのは38年後という結果が出た」(IBMパソーナルシステム事業部の中林千晴マネージャー)。 ならば,いっそ複雑なシステムを入れることなく,“客寄せ”として無料で提供する。コストは本業の売上げをアップすることでカバーすればいい。これが,IBMがカレーの東洋に学んだビジネススキームだ。 「無線LANというのは,ビジネスモデルを忘れた瞬間にすごく便利になる。(場所提供側は)自分の趣味でADSLを引くついでに無線LANを導入する,といった心構えでいるべき」(竹村氏)。ホットスポットには,そんな公私混同のマスターがいる,古いタイプの喫茶店が最適なのだという。 もちろん,IBMの方法論は,“プロモーション”が主目的である同社だからこそ成り立つ,という解釈もできる。接続サービスで利益を上げる必要がある企業には,自ずと別の理論がある(別途記事を掲載予定)。有料/無料を問わず,2002年はホットスポットのバリエーション化が進みそうだ。
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