電通に聞く,「ブロードバンド広告の現状と今後」まだ始まったばかりのブロードバンド広告。広告業界の雄,電通は,この市場をどう捉えているのだろうか。
なかなか市場の立ち上がらない,ブロードバンド広告業界。広告代理店最大手である電通は,状況をどうとらえているのか。インタラクティブ・コミュニケーション局のブロードバンド部長,峯川卓氏に同社の展望を聞いた。
電通の峯川卓部長
ブロードバンド広告は好調?同氏はブロードバンド広告について,「取り組むというのが基本方針」と話す。同社は昨年4月ごろからブロードバンドチームを立ち上げて,配信実験などを行っている。峯川氏によれば「昨年10月ごろからADSLの普及をうけ,いろいろ問い合わせが増えてきた」という。 ユーザーの手ごたえについても「まだ実験が少なくて分からないが,ブロードバンド広告は心配したほどユーザーに嫌がられていない」(同)。 通常サイト内に動画広告を入れ込む場合,音声はデフォルトで消しておくケースが多い。これは“音をいれるとサイトが重くなる”と嫌がるユーザーへの配慮だが,昨年のアンケートでは半数が「初めから音があってよい」と答えたという。 「8割ぐらいが拒否するかと思っていたから,意外な結果だった。しかもこの調査はADSLが大幅に普及する前のもの。今ならもっと多くのユーザーがうけいれるかもしれない」。 ただこうした要因がありながらも峯川氏自身,「少し動きが鈍いと思われるかもしれませんね」と笑うように,電通は表立った動きは少ない。これにはいろいろと,ワケがあるようだ。
業界はまだまだペイしない同氏はブロードバンド広告業界について,まだペイできる段階にないと話す。広告といってもストリーム配信する以上,配信側にそれなりのインフラもいるしコストもかかる。だが,それをカバーできるだけの広告費は,広告主から出ないという。 「単に今までより2倍きれいな広告を流せるようになったからといって,広告主さんが2倍の広告費を払ってくれるか? それがいただけるなら苦労しないのだが」(同)。 現状ではコンテンツプロバイダは広告料だけでは「無料ではとても折り合わない」という。せいぜいコンテンツが安く視聴できるぐらいが関の山のようだ。
横たわる著作権問題またブロードバンド広告では,広告の著作権も問題になってくる。テレビ広告などは立派な著作物であり,権利関係をクリアしなければ,ネット上で使い回すことができない。 「ビデオのVHSが急速に普及した80年代ごろに,ちょうど同じような議論があった。その時に問題になったのは,そもそも広告制作物の著作権はどこにあるかというもので,広告主,広告会社,制作会社のいずれに属するかでもめた」(同)。 そもそも広告は,上記の3者のうちどこが企画するかがその都度異なるほか,制作もどこが主導するかはケース・バイ・ケース。このためはっきりとした取り決めはなかったが,全日本シーエム放送連盟(ACC)が「広告主のためにやっているんだから,メディアは問わないように」ということで収めたという。 ただし,その際に「出演者と使用された音楽は,尊重するように」ということになった。これが現在も,広告の著作権問題として残っているわけだ(1月15日の記事参照)。 同氏は「タレントが広告に出ると,すぐにその“色”がつく。彼らはイメージを大事にするから,インターネットのようなあやしい要素のあるメディアには出たがらないケースも多い」とも話した。
水面下で準備を進める電通こうした状況下で電通が現在構築を進めているのは,広告が個別に持つ“許諾情報”を自動チェックするシステム。これは広告を何日まで,どの地域で配信するかといった点について照会し,契約内容に違反した場合にアラートが出るというもの。「今期中にはプロトタイプが出る」(同)という。 研究は,同じく業界大手の博報堂とも共同で進めている。業界ネット動画広告の草創期に,しっかりとシステムを組んでおきたいという考えのようだ。 まだ未成熟な市場をにらみ,慎重にネット動画広告を推進する電通。峯川氏は今後について,年末にはブロードバンドユーザーが1000万に達するという各紙の予想を挙げながら「1000万となると,状況も変わるかもしれない」と話した。
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