ウワサの「FTTHトライアル」を体験してきました(後編)「Designing the Future」をスローガンに掲げるKDDIは,「FTTHトライアル」で多くのネット家電を検証する。結果,Tさん宅はダンボールの山に埋もれ……。
前回までのお話:光ファイバー接続完了! メディアコンバータの設置と平行して,リビングの一角ではこちらも重要な作業が進められていた。モニターに提供される機器の設置だ。 前回も少し触れたが,「Designing the Future」をスローガンに掲げるKDDIは,「FTTHトライアル」で多くのネット家電を検証する。リストアップしてみると……
それぞれの機器は提供数が決まっているが,モニターは複数のコースを申し込むことができる。2つのコースに当選したTさん宅には,IT冷蔵庫とITオーブンレンジを除くすべての機器が搬入された。 しかし,ハードウェアが増えると,その分電源コンセントとケーブルも増殖するのが当たり前。シンプルな調度品でまとめていたリビングだったが,途端に機材があふれ,タコ足配線を余儀なくされた。
それでも,なんとかすべての機器を設置し終え,早速使ってみる。まずは,PCで速度計測だ。
結果はご覧の通り。多少の差はあるが,18〜27Mbpsとまずまずの数値を叩き出した。だが,KDDI技術開発本部の嶋谷吉治理事によると,ゲートウェイに利用しているブロードバンドルータがボトルネックになっており,実際はさらに速いという。
4日間使ってみて工事が終了して5日目,導入された機器とそのアプリケーションをTさんがどのように使っているのか尋ねてみた。なにしろ,KDDIの用意したモノは多い。人は自然と取捨選択し,自分に合ったものを使うようになるはずだ。 Tさんがまず気になったのは,機器によって利用できるサービスに違いがあることだという。STBはもちろん,IA端末,PCのすべてで統一されたデザインのポータルに接続するのだが,ここで使えるアプリケーションが異なる点に違和感を感じるようだ。「例えば,6MbpsのストリーミングビデオやカラオケはSTBのメニューにしか現れない。統一性がない印象」(T氏)といった具合。
おそらく,普段からPCを使い慣れているTさんの場合,あらゆる端末に同じサービスを提供するインターネットの世界に慣れているためだろう。このあたりは,逆にPCに馴染みのないユーザーのほうが抵抗なく入り込めるのかも知れない。 もう1つ,気になるのが,「機器が多く,またシステマチックに構成されているので,設定を変える気がしなくなった」という点。通常なら,まずルータの設定を確認し,相応のセキュリティを確保するはずだが,「今回は,何かが動かなくなりそうで怖い」という。家電ライクに使えるデバイスは,ユーザーのセキュリティ意識を希薄にしてしまうのかもしれない。 これは,説明の不足にも起因している。もちろん,KDDIの担当者は,機器設置時に1つ1つの機能について詳細に解説してくれた。しかし,ルータの設定やデフォルトのセキュリティポリシーについては触れられず,資料にも記述はない。PCを使わない人ならそれで良いのかもしれないが,ある程度知識のあるユーザーには,相応の情報提供が必要だろう。 一方,Tさんがすっかり気に入ってしまったのが,東芝のIA端末。TV画面で見るSTBの画面よりもクリアなうえ,タッチパネルの操作性とワイヤレスの手軽さがお気に召したようだ。Webブラウズはもちろん,近所の飲食店を検索するのにもよく利用するという。 KDDIでは,トライアル開始に伴い,地元密着型のコンテンツを自主制作して提供している。神楽坂の場合,近所にあるスーパーと協力して商品の宅配サービスも行う。忙しい仕事の合間にちょっと買い物,という使い方ができるから便利だ。
IP電話はケータイレベル?KDDIの提供するIP電話は,「03」で始まる10桁の電話番号が付与されている。電話番号が変わる点は致し方ないが,その使い勝手は発信時を除いて加入者電話と変わらない。異なるのは,市内に電話する際も市外局番を付加しなければならない点だ。また,110番や119番といった緊急電話番号にも対応していない。 ためしに,赤坂にある編集部からTさん宅に電話してみた。3コール目でつながったが,Tさんによると1コール目ですぐに受話器を上げたという。ルーティングに2コール分の時間が必要だったということだろうか? 気になる音質は,「ケータイレベル」。とくにQoSをかけているわけではないが,余裕のある回線速度において,通話に使う64Kbpsを確保するのは問題ない。実際,加入者電話に比べると「ちょっと声が遠いかな?」という程度。ノイズもないクリアな音質を実現していた。 「何度か利用してみたが,音声が飛んだり,遅延が起こるような場面はなかった」(T氏)。まずは満足できる結果のようだ。
ギブミー・アプリケーション家電を取り込み,未来の生活環境をデザインするというKDDIの姿勢は,今後の接続サービスの方向性を示すものだ。少なくともIP電話やビデオストリームは,近い将来,標準的に付加されることになるだろう。回線とアプリケーションをバンドルして提供することで,ユーザーに利便性をもたらし,事業者側はサービス単価の向上が期待できる。 しかし,高速なインターネット環境は,ユーザーを贅沢にするらしい。Tさん宅の光ファイバーが開通したとき,一通りのスピードテストを行い,DVD画質という6Mbpsのビデオストリームをチェックした後は,正直言って何をすればいいのか分からなくなってしまった。物足りない気持ちがあったのも事実である。 「コンテンツがもっと充実しないと,(スピードの)ありがたみが分からない」というTさんの言葉は,現在のブロードバンド事業が抱える悩みをそのまま表している。事実,KDDIは,これまでにない量のアプリケーションを用意しているが,それらもすべてがユーザーの嗜好に合うとは限らない。さらに幅広いコンテンツが要求される,と結論付けては,ちょっと酷だろうか?
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