アッカの隠し球? 最大10Mbpsの“拡張版Annex C”詳報

ほとんどのユーザーで約500Kbpsを上乗せし,ISDN並みの伝送距離を実現。そして,条件の良いユーザーなら下り最大速度は10Mbpsに及ぶという。アッカの“拡張版Annex C”とは?

【国内記事】 2002年4月15日更新

 年内にもADSLの長距離化&高速化を実現すると公表したアッカ・ネットワークス(4月9日の記事を参照)。現在のG.dmt Annex Cの伝送速度に約500Kbpsを上乗せし,ISDN以上の伝送距離を実現する。そして,条件の良いユーザーなら下り最大速度は10Mbpsに及ぶという。その“拡張版Annex C”の詳細をアッカに聞いた。

 前回のニュースでは,断片的な情報しか盛り込むことができず,少し混乱を招く部分があった。これは,“拡張版Annex C”に2つの技術的要素が含まれていたためだ。アッカの池田佳和副社長によると,500Kbpsの速度向上と通信距離の延長は「C.x」(しーどっとえっくす,仮称),そして下り最大速度の拡大は「S=1/2」(えすにぶんのいち,仮称)と呼ばれる技術によって実現されるという。

 ただ,それぞれの技術を紹介する前に,ADSLの特性と,Annex Cに盛り込まれたDBM(Dual Bit Map)の仕組みをおさらいしておきたい。

ADSLの特性

 ADSLは,電話用の細い銅線が持つ能力を,最大限にまで引き出した技術だ。現在主流になっているG.dmt(8Mサービス)の仕様では,26KHz〜1.1MHzの周波数帯域の中で,4KHzおきに計255本(理論値)の搬送波,つまりデータを運ぶ波を作り出すことができる。

 下り方向を重視するADSLでは,上り/下りが非対称の形で搬送波を利用する。アッカの場合は,上り方向に25本,下り方向に223本だ。1つの搬送波は,最大15bitの伝送能力をもち,1秒間に約4000回の変調を行っている。

 ここで問題になるのが,電気信号は周波数が高いほど減衰しやすいという特性だ。NTT収容局からの距離が遠くなるほど,「上から順に信号が弱まり,伝送能力が落ちる」(アッカ・ネットワークス,ネットワークエンジニアリング部の湯浅重数課長)。電話線のケーブル長がADSLの速度に影響するのは,この理由による。

 もう1つ,伝送速度を落とす大きな要因がノイズだ。G.dmt(8M ADSL)が使う周波数帯には,4つのAM放送,そしてISDNという「声の大きな」(出力が高い)ノイズ源が存在する。

 日本のISDNが実際に使用する周波数は320KHzまでなのだが,声が大きいために反射が起こり,1MHzあたりまで副次的なノイズが発生するという。つまり,ADSLの利用する周波数帯のほぼ全域に渡って影響してしまうのだ。

DBMの仕組み

 その影響を小さくするため,日本向けの仕様としてITU-Tで勧告されたのがG.dmtのオプションであるAnnex C。そのキモとなる技術が,DBMだ。

 DBMは,その名の通り,FEXT(Far End CrossTalk,遠端漏話)とNEXT(Near End CrossTalk,近端漏話)と呼ばれる2つのBit Map(伝送量の割り当て表)を使う。どちらも名称は「漏話」だが,ISDNの遠端漏話はケーブル伝搬に伴う減衰によって小さくなる性質を持っている(つまり,問題は近端漏話)。このため,FEXTはISDNの干渉が小さいとき,NEXTは干渉の大きいときのためのBit Mapとされている。

 日本のISDNは,TCM(Time Compression Multiplexing(ピンポン伝送方式)と呼ばれる伝送方式を採用しており,1.25ミリ秒ごとに電気信号をやり取りする。DBMは,ISDNとタイミングを合わせる形で,ノイズの大きい瞬間(ISDN通信時)はNEXTで伝送速度を抑え,ノイズが小さい瞬間にFEXTで高速伝送を行って伝送速度をかせぐわけだ。

 アッカは,富士通製ADSLモデムのファームウェアバージョンアップにより,DBMとFBM(FEXT BitMap)をユーザー自身が切り替えられるようにした(3月26日の記事を参照)が,これはISDNとの干渉が大きいユーザーを考慮した措置だ。FBMは,NEXTを使わず,FEXT固定で通信するモード。NEXTが動作するタイミング,つまり干渉の大きいときに通信を行わないことで,回線が安定する効果が期待できる。

 「スループットは約半分になってしまうが,安定性を求めるユーザーにはメリットがある」(湯浅氏)

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[芹澤隆徳,ITmedia]

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