「ホットスポットスターターキット」の意図と中身日本アイ・ビー・エムが発売した「ホットスポットスターターキット」。そのコンセプトと効果,そして“欠けている部分”とは?
ちょうど1カ月前の4月1日,日本アイ・ビー・エム(IBM)の直販サイトにユニークな商品が登場した。喫茶店などで手軽にホットスポットを構築できる「ホットスポットスターターキット」だ。フリーのホットスポットを推進し,一方で「ビジネスゴールがあるわけではない」と公言する同社がキットを販売するのは何故か。その目的を聞いた。
3万9800円のキットに含まれているのは,無線LANアクセスポイント,OCN&アッカ・ネットワークスのADSL申込書とパンフレット,導入マニュアル,ADSLモデムとアクセスポイントを結ぶためのクロスケーブルなど。アクセスポイントはメルコ製の「WLAR-L11G-L」が採用されており,IBM製と言えそうなのはマニュアルぐらいだ。
初心者向けの内容そのマニュアル「ホットスポット構築手順書」は,めくってみると明らかに初心者向けに編集されていることが分かる。OSごとのアクセスポイント設定方法から必要なコンセントの数までを丁寧に記したフルカラー33ページだ。 「PCの知識を多少なりとも持っている人なら,自力でホットスポットを作ることはできる。しかし,やり方が分からない人は,意外な方向へ行ってしまうもの」と指摘するのは,IBMのPCサービス&サポート PCサービス推進の中垣勝博氏。ホットスポット構築に必要なものはすべてそろえ,プロバイダを1つに絞り,それでも困ったときのために電話サポートをつける。これがスターターキットのコンセプトだという。 キットが初心者向けに作られていることには理由がある。まず,IBMがターゲットとする喫茶店のオーナーがPCに詳しいとは限らないこと。そして,オーナーにキットを紹介する出入り業者も決して詳しくはないことだ。 IBMは,これらの出入り業者と手を組み,ホットスポットを訴求する戦略。その一環として企画されたのがスターターキットというわけだ。「飲食店など,IBMの顧客リストには入っていない。マーケティングリサーチができない市場に売るのだから,まず分かりやすいものでければならない」(中垣氏)。 IBMとしては,コストをかけずに市場調査ができる。スポット自体はビジネスにならないが,それをインフラとして利用する企業のVPN構築など「大きな効果」があったという。
欠けているモノしかしながら,このキットには1つ欠けている部分がある。スポットの匿名性を利用したアタックやウイルス送信など,セキュリティ面に関する記述だ。 実際,ホットスポットを踏み台にしてウイルスをばら撒かれた事例も報告されている。IBMは,トレンドマイクロのセキュリティボックス「GateLock」の導入を進めているが,それだけで済む問題ではない。 「キットの次バージョンにはセキュリティポリシーを盛り込む計画だ。ホットスポットで起こりうる犯罪と対処方法を示す」(IBMパーソナルシステム事業部マーケティングマネージャーの中林千晴氏)。 問題は,紙に記述するか,Webサイトで公開するかの選択という。紙の場合は,情報のアップデートが難しい。かといってWebで公開すれば,犯罪の手段を示しているだけに,悪用される恐れもあるだろう。「セキュリティの啓蒙は必要だが,その方法もよく検討する必要がある」(同氏)。
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